2011年のデジタルメディアで振り返るべき5つの進化

最終更新日:2024/02/17

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2012年1月も既に半分が過ぎましたが、2012年を本格始動する前に2011年にIT業界で起こった様々なことを再度振り返って確認しておこうというシリーズ記事をThe Next Webから。まずはデジタルメディア全般についての話題からですが、大枠の流れを理解するのに役立つ幅広い情報がまとまった内容。米国の事情やサービスを中心に語られていますが2012年の日本を占う上では参考になる話が多そうです。 — SEO Japan

自分が2010年にはしなかったが2011年にしたこと全てについて考えるのだ:たぶん、自分が聴いている音楽を手当たり次第に友達と共有することだとか、テレビ番組をチェックすることだとか、電子ブックもしくは通常の書籍を購入すること…今年は、メディアの分野でとても忙しかった。ここに、ラスト数カ月の間でニュースとエンターテイメントを変形してきた主流トレンドを挙げよう。

ニュースから音楽、動画、メディアまでソーシャルになる

2011年、私達は、ソーシャルネットワーク、特にFacebookが新しいウェブサイトにとって重要なトラフィック推進力になり得るということを学んだ。しかし、さらに興味深いのは、Facebookが自らのニュースの目的地、つまり人々が友達が共有した記事を発見する場所になっていることだ。これは、Mark Zuckerbergが積極的に奨励していることでもあり、彼の会社は世界で最も有名な報道機関と数多く提携してきた。GuardianのFacebookアプリは、その結果の1つであり、たった2カ月の間に400万人のユーザーによってインストールされた

もっと一般的に言うと、去年1年で音楽から映画やテレビまで1つ1つのメディアが、徐々にソーシャル体験になってきている―Facebookが率いて上手に描いているトレンドだ。

音楽ストリーミングサービスSpotifyとのパートナーシップのおかげで、ユーザーは今自分が聴いている音楽を簡単に共有することができる。Spotifyに関して言うと、統合から100万人の新規ユーザーを素早く獲得した。その国際的な拡大の効果も相まって、これが先月250万人の有料登録者を達成するのに役立った。

ニュースと音楽に加え、動画もますますソーシャルになっていて、Facebookなど、人々は映画を見たり、テレビ番組と情報をやり取りしたりできる場所がある。この集中性の一番良い例の1つが、The X Factorだ:Facebookユーザーはソーシャルネットワークを介して自分の好きな出場者に直接投票できるだけでなく、Facebook Creditsを使ってそれをすることができるのだ。

Facebookだけの話ではない:多くの熱心なフィルムおよびテレビ関連のアプリが出現し、例えば、テレビ番組に“チェックイン”することによって私達がしていることを共有させてくれる。これは、チェックインの範囲を超えている。最近レポートしたように、MisoZeeboxといったプレイヤーが第二のスクリーンへの注目を競ってソーシャルビデオのバトルが巻き起こっているのだ。

長文で質の高いコンテンツが訪問者数を獲得する

あまりに多くの気を散らすものとあまりたくさんのマルチタスクがあるために、要求の多いコンテンツのスペースはないと思うかもしれないが、2011年はそれが間違っていることを証明した。多くのアプリが登場して、私達が記事を保存して“それを後で読む”ことを可能にしている―モバイルデバイスでニュースを閲覧することと長い読み物のための時間を見つけることには、結局のところ矛盾がないことを示しているのだ。もしあなたが、短文と長文式のコンテンツ間の敵対 が過大評価されているサインがもう1つ必要なら、Twitterユーザーも、ハッシュタグ‘#longreads’のおかげで140字以上の長い長い文章を発信しているのだ。

長い記事に加え、このトレンドも電子ブックにまで及んだ。comScoreのAndrew Lipsmanが最近言ったように、“人々は以前とは違った方法で電子ブックをダウンロードしている。”数字もこの急増を反映していて、Amazonは5月に、ペーパーバックおよびハードカバーを合わせた数よりも電子ブックの方が売れていると発表した

これは販売だけの話ではない:電子ブックの貸出がますます一般的になってきている。私達は、例えばLendlinkや、新しくFacebook上に作られたKindle Lending Clubを介して、友達と電子ブックを交換することができるのだ。図書館に行って通常の本を借りることができるのと同じように、アメリカに住むKindle所有者は、Amazonとアメリカ中の11,000もの図書館とのパートナーシップのおかげで、電子ブックへのアクセスも手にすることができるのだ。

長い読み物への興味を反映することは、さらにもっと面白い事実だ:読者は質の高いコンテンツを探し求めている。見つけるのが簡単である限り。コンテンツファームに向かうトラフィックの減少がその証拠だ:Googleの新しいアルゴリズムのおかげで質の低い投稿が検索結果において上位表示されなくなると、すぐにその読者数は急に減少する。

ここでは簡素さが重要な要素だ。Google Readerをカスタマイズするために数百のフィードを自分で選ぶ覚悟ができているユーザーもいる中、ほとんどの人は受動的なパーソナライズ化を好むと、あるレポートが明らかにした。言い換えれば、多くの読者は自分達のコンテンツを自分達のためにキュレートされたいのであり、それがFlipboardおよび同類のものの個人誌の大きな成功を説明している。

メディアはいかに私達のリビングルームに進出してくるか

電子ブックと長文形式のコンテンツの成功は、タブレット―高価でとても魅力的なiPadだけでなく、もっと安価な競合他社、特にBarnes & Noble のNookタブレットやKindle Fire (私達のレビュー参照)も―のブームから切っても切れないものだ。eリーダーも?$79から始まって安い値札によって上昇している。全て合わせて、Amazonは12月の第1週の間に?100万台のKindleを販売した。そして、2012年のデジタル製品の売り上げはさらに増加へと向かうだろう。

その絶大な人気の結果として、メディア各社がタブレットを採用しようと試みてきた。最も明らかな例が、News Corpが作った有料のiPad用新聞、The Dailyだ。しかしながら、ひどくがっかりしたのは私達だけではないようで、これまでのところRupert Murdochのための目玉商品になっているようである。

他のプレイヤー達は、iPadのために全く新しいコンテンツを開発する代わりに、既存のサイトをタブレットに採用することに取り組んでいる。Google Currentsなど、多くはアプリのアプローチを選んだが、一方でOnSwipeなどはブラウザベースの構想を好んだ。彼らに共通していることは、私達がリビングルームで雑誌を読むのと同じような方法で、コンテンツを簡単に閲覧させることへの熱意なのだ。

私達のリビングルームへ向かうこの動きの推進力はモバイルデバイスだけではない。テレビもまた、ゲーム機やセットトップボックスやスマートテレビを介して、メディアコンテンツの入り口にますますなっている。例えば、MicrosoftのXbox所有者は、テレビ上でBBCとHBOとYouTubeへのアクセスを持っている。ゲームは、提供される数多くのエンターテイメントの選択肢の1つでしかないのだ。

全体として、ゲーム機でのビデオストリーミングは毎年7%上昇していると、Nielsenが最近報告した。コネクトテレビに関しては、Google TVはまだ主流になっていないが、Google TVとYouTubeが採用したLeanbackというインターフェースが、市場が進んでいる方向の有用な手掛かりを与えている。

メディアのドアを開けること

デジタルコンテンツの最も興味深い影響の1つは、出版の壁がかなり低くなっていることだ。これは小さな組織やブログにとって言えることで、彼らはKindle Singlesを出版したり、自分達のコンテンツを収益化する新しい手段を見つけることができる。

これは個人にも言えることで、電子ブックを自費出版して、パイのより大きな分け前にあずかることができるのだ。自費出版は、Amazonが奨励していることでもあり、この企業は独立した作家や出版者のために600万ドルのファンドを創出した。

それでも、通常、本をローンチするにはプロモーションが必要となる―あなたがJ.K.Rowlingでもない限り―。そして、新しいプレイヤーが、作家が自分のデジタル作品を宣伝するのを助けるために現れた。それが、‘estributor(エストリビューター)’である。

この仲介機能の排除は、ニュースのことになるももっと明白である。ジャーナリストがブランドになっていて、時には彼らが勤めている報道機関よりもTwitter上で人気がある。彼らの使命も変化していて、リアルタイムのレポートやニュース速報やキュレーションにより重要性を置いているのだ。

ジャーナリストは1年中主要なイベントをライブストリーミングしてきただけでなく、Storifyなどのおかげで外部コンテンツを自分達のレポートに頻繁に統合してきた。この外部コンテンツは、多くの場合、自分の目撃している出来事をレポートしている普通の市民の活動家など素人のソースから来ていた。

多くの人がアラブ世界周辺、例えばチュニジアエジプトで起きた暴動に関するニュースを報道するために使ったTwitterに始まり、多くのツールが誰もがレポーターになることを簡単にしている。テキストとボイスメッセージ以外に、これらの投稿の多くは、Bambuserのようなプラットフォームが大いに促進するもの、つまりビデオだったのだ。

これらのツールは抑圧の的になった。地元の権力者がTwitterのようなサービスをブロックしようとして、スタートアップが‘The Tweets Must Flow’という題名のBiz Stoneによる共同著書のブログ記事の中で表現の自由を要求するに至ったのだ。

しかしながら、Twitterに圧力をかけようとしたのは権力主義体制だけではない。アメリカ司法省も、WikiLeaksの運動家に関する情報を得ようと企てて、そうしたのだ。それが発行停止される前の暴露以上に、WikiLeaksの一部始終がメディアの視点からフォローする魅力があったのだ。従来のメディアがJulian Assangeのような人物と一緒に仕事をするのを見るのはかなり面白かった。驚くに足らないが、Assangeが今年始めにGuardianとの繋がりを全て切ったため、それは上手くはいかなかった。

WikiLeaksとGurdianの亀裂のほとんどは、Assangeが人々の安全に注意を払っていないというGurdianの非難と共に、倫理に関連することだったが、いくつかの従来の報道機関はその件について何の教訓も持っていないのだ。電話盗聴のスキャンダルはNews of The Worldに大きなダメージを与え、それは大西洋をも越え、私達は未だにそれがMurdoch王国に与える影響力を見極めていない。

デジタルの変遷は終わっていない

確かなことが1つある:それは、従来のメディアの信頼性にダメージを与えた。それは最も必要とされていなかったことだった。1年でアメリカ国内の印刷物メディアは、明らかに減少した(このインフォグラフィックを見よう)。これが、The New York Timesなどの一流新聞紙をはじめとするニュース編集室の人材削減を導いたのだ。

デジタルの世界でも事態は全くのバラ色ではない。Huffington Postは未だに海外に拡大して、AOLによる買収の後10億ページビューを叩きだしているが、このグループの他の買い物はうまくいかなかった。それは、“AOL流”への批判の真っただ中、重要人物の一連の辞職を招いた。

しかしながら、もっと成功を収めたプレイヤーもいる。これは、今年初めて印刷物収入を越えてデジタル広告収入のあったThe Atlanticのケースだ。自身のコンテンツをオンラインで収益化する方法を見つけたのは従来の週刊誌だけではない。今年、有料コンテンツの壁を導入した報道機関はたくさんある。多くのアナリストが驚いたことに、これらの有料コンテンツの壁は予想よりも読者数に大きな影響を与えていないことが分かったのだ。

それでも、オンラインニュースの収益化は未だに進行中の取り組みである。例えば、Googleはその前途有望なOne Passプロジェクト周辺で、ユーザーにアンケートへの回答で支払いをさせるといったような実験を実施している。つまり、ニュースの将来は、革新的なメディア形態に資金を出す一連の戦略と共に、今も考案されているのだ。

それぞれのタイプのプレイヤーがどのように収益を共有するかは現時点ではまだ分からない。例えば、Appleは、iOSデバイスから利用料金の一部を得ようと一生懸命になっている。パブリッシャーが疑問に思う必要性だ。The Financial Timesは異なるモデルへの道を開いた。Appleの壁に囲まれた庭をWebアプリを使って巧妙に逃れることを決め、大きな成功を収めることとなったのだ。

ビデオオンデマンドもまだまだ先の長いセグメントだ。イギリスのSeeSaw のような小さなプレイヤーは利用を中止し、有名なNetflixでさえその国内市場において大きな問題を持っていた。これらは戦略の過ちによるところが大きいが、いくつかの問題はオンラインメディアの性質に伴うものだ。

ライセンス・コンテンツは高いのだ。つまり、例えば、Netflixの海外進出は株主が願うほど素早くはないことを意味する。

スタジオと取引をすることも時間がかかるし、長く待ち望んでいたUltraViolet デジタルロッカーは最近ローンチしたアメリカとイギリスを越えてまだ広がらなければならない。クラウドでの音楽提供もまたまだ始まったばかりだ:今、AppleのiTunes Matchが数カ国で利用可能になっているが、Google Musicが利用できるのはアメリカだけだ。

スタートアップのアプローチをメディアに持ってくる?

ハリウッドのスタジオと取り組むのはいつだって簡単なことではないが、エンターテイメント部門はスタートアップ文化から大きな恩恵を受けるだろう。物事を違ったふうに行うことは割に合うことなのだ。Louis C.K.の大きな成功を収めたスタンドアップ・コメディの特別番組がその証拠だ。2012年、テックのアプローチとイノベーションはハリウッドを民主化することに貢献できるだろうか?私達は確かにこれを見たいと思っている。


この記事は、The Next Webに掲載された「2011 Tech Rewind: This Year in Media」を翻訳した内容です。

メディア全般のさらなるソーシャル化から普及するタブレット、”レンタル”電子書籍に、つぶやきブームとは真逆の質の高いコンテンツの復権まで、どれもインターネットというかメディアと共に進化する未来の我々の生活を考える上でも気になる内容ばかりでした。ネット業界で働く人であれば、ここに書かれているデジタルメディアの進化が自身の仕事にどう影響を与えていくのかということについても、一度じっくり考えてみたいですね。 — SEO Japan

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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