ヨーロッパのスタートアップがシリコンバレーで資金を調達するべきではない理由

米国はもちろん日本でもヨーロッパでもスタートアップ起業と投資が盛んになってきていますが、日々話題になる新たな投資ディールを見ていると、10億は当たり前、100億以上の投資も定期的に行われるシリコンバレーは規模が一桁違うな、と思ってしまうことも多いですよね。だからといって米国外のスタートアップがシリコンバレーで投資を募ろうと考えることは正しいのでしょうか?ヨーロッパでVCを運営する筆者が語るヨーロッパのスタートアップがシリコンバレーで資金を調達するべきではない理由。ヨーロッパを日本として読んでみても納得できる部分があるかもしれません。 — SEO Japan

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アンドレイ・キスカは、 プラハのCredo Venturesの共同経営者である。


ヨーロッパのスタートアップは、米国のスタートアップと比べて、調達可能な資金は少ない。それでも、投資家から、多くのメリットを得ることが出来る。それでは、シリコンバレー外部で、資金調達を行う方が良いと私が思う理由を説明していこう。

最近投稿した、ヨーロッパの投資の規模と評価を分析した記事には、予想通り、多くの反応があった。スタッツを見る限り、ヨーロッパのスタートアップが、シリコンバレーで資金調達を行う決断は、…一見すると、とても論理的に見える。

しかし、私はこの決断には同意できない。シード、もしくは、シリーズ Aの段階にある大半のヨーロッパのスタートアップにとっては、米国での資金調達は、理に叶っているとは言えない。最悪の場合、スタートアップを滅ぼしてしまう可能性もある。

セルフプロモーション

米国のスタートアップの現状を表すスタッツを幾つか紹介する — Clinkleは、2500万ドルのシード資金を獲得した(このアプリは、まだリリースされていない)。GitHubは、Andreesen Horowitzから1億ドルのシリーズ A資金を調達した。

このスタッツをヨーロッパのシードおよびシリーズ Aの金額と比べてみよう — Trustevは、ヨーロッパで最大規模のシードのラウンドで、300万ドルを獲得した。GitHubの投資は、シリーズ Aのヨーロッパ全体の投資額を上回る規模である。このようなデータを見ると、ヨーロッパのスタートアップが、シリコンバレーでの資金調達を望みたくなるのは、致し方ないのかもしれない。

シリコンバレーが得意とする取り組みの一つに、セルフプロモーションが挙げられる。ヨーロッパの人達は、毎日、米国のテックブログを閲覧し、1000万ドル越えのシリーズ Aが、シリコンバレーであたかも毎日行われているかのような錯覚を覚える。

米国内のシリーズ Aを分析したニキル・バス氏の記事は面白い。この分析データを見れば、現実とイメージがいかにかけ離れているかが分かるはずだ。シリーズ Aの投資の平均は、600万ドルであり、中央値は300万ドルである。これは、私が分析の中で取り上げた「貧しい」中央および東ヨーロッパのラウンドの投資額とほぼ同じである。

また、トム・トゥンガス氏が提供しているスタッツにも注目してもらいたい: 米国のシリーズ Aで資金を調達することが出来るのは、シード段階のスタートアップの20%に過ぎない。実に幻滅させられるデータである。

シリコンバレーに移れば、800万ドル以上のシリーズ Aの資金を調達することが出来るのではないかと望んでいるヨーロッパの起業家に対して、このデータが伝えようとするメッセージは、明白である — 夢のまた夢と言えるだろう。

投資額の規模が大きい理由

100 – 200万ドルの違いであっても、資金調達を求めて米国に向かう価値はあると主張する人達がいる。確かに、米国の投資の平均、そして、中央値は、ヨーロッパよりも多い可能性が高い。しかし、米国のスタートアップが、ヨーロッパのスタートアップよりも高額の資金を得る合理的な理由がある — それはコストが高いためだ。

シリコンバレーで、技術者のヘッドハンティング会社として名高いJobspring Partners社のスコット・パーセル氏は、2013年にシリーズ A以上のスタートアップのシニアエンジニアの年収が16万5000ドルだと明かしていた

月に4000ドル貰っていれば高給取りの部類に入るチェコのスタートアップと比べると、笑わずにはいられなくなる。

多くのヨーロッパのスタートアップが、米国に移住することを望み、シリコンバレーに対して、ヨーロッパが持つ大きな強みを諦めてしまうことは残念で仕方ない — それは、シリコンバレーの技術者の給与のほんの一部の額で、世界レベルの製品を作り上げる技術者を雇うことが可能な点である。

平均的な投資の規模(米国の300-600万ドル vs 東部よぶ中央ヨーロッパの100-300万ドル)と技術者の人件費の平均(米国の16万ドル vs チェコの3万 – 5万ドル)の違いを比較すると、ヨーロッパの投資家は、米国の投資家よりも実は気前が良いと言うことも出来る。

なぜなら、平均の投資の規模は、米国の方が2倍ほど大きいものの(中央値はさらに低い)、技術者の人件費の平均は(初期段階のスタートアップのバーンレートの大半を占める傾向がある)、ヨーロッパと比べて、3-5倍高いためだ。

米国の優良大手機関からシード/シリーズ Aを調達するな

データが自分達に圧倒的に不利であることを理解しながら、それでもシリコンバレーで資金調達を行うことを決めた起業家を、私は大勢知っている。なぜ、そこまでしてシリコンバレーでの資金調達を望むのだろうか?シリコンバレーの有名なベンチャーキャピタルは、ヨーロッパの投資機関では太刀打ちできない経験とコネクションを持っていると、シリコンバレー進出を望む起業家は口を揃えたように言う。

ある程度までは、この指摘を否定するつもりはない。しかし、米国の資金調達の旅から帰って来た起業家達をこの目で見た経験から言わせてもらうと、大半のヨーロッパのスタートアップにとって、シード資金、さらには、大半の場合、シリーズ A資金と言えども、アメリカの大手投資機関から受ける方針は、理に叶っているとは思えない。根拠は3つある:

まず、資金調達のプロセスは、スタートアップのファウンダー達が望むよりも長く、高額の資金が必要になり、しかも、このプロセスが実際に投資につながるケースは少ない。多くのヨーロッパの起業家は、シリコンバレーに足を運び、1ヶ月後、または、2ヶ月後には、SequoiaやAndreesen Horowitzから小切手を貰って帰国することが出来ると考えている。ネットワーキングイベントで出会った幹部候補と10分間会話を交わして、ポジティブなフィードバックをもらうと、起業家達は、すぐに資金を調達することが出来ると考えてしまうのだ。

3-6ヶ月後になっても、契約を締結することは出来ない。なぜなら、ベンチャーキャピタルは、米国内でコンセプトが受けることを証明するよう何度も求めるためだ(これは、投資する心構えが出来ていないことを、丁寧に伝えている)。

そもそも、シード/シリーズ Aの段階のスタートアップが、CEO/共同設立者が3-6ヶ月間も地球の裏側にいる状態で、生き残ることは出来るのだろうか?このような資金調達のプロセスが、スタートアップを完全に崩壊させなくても、一番重要なポイントを大きくぼやかすはずだ — それは最高の製品と会社を作る取り組みである。

次に、優良な大手ベンチャーキャピタルは、大抵、チーム(または、少なくとも一部)を米国に移すことを求める。役員会議、または、チームの会議に参加するために、何度もヨーロッパに足を運ぶ時間がないためだ。

その結果、チームを分断しなければいけないため(チームの一部はヨーロッパに残り、一部は米国に移る)、スタートアップに大きなストレスがもたらされる。さらに、移住のプロセス(査証、オフィス、管理等)は、数ヶ月間におよび、さらなる悩みをスタートアップに引き起こす。

3つ目の根拠は、最も悲しい。分の悪さをどうかにして克服し、米国の有数のベンチャーキャピタルから資金を調達することに成功し、さらに、チームの移動を完了したとしよう。そして、有名な投資機関に大勢の顧客を紹介してもらい、製品に対する定期的なフィードバックを受け、会社作りに関するアドバイスを受ける準備が整ったと仮定する。

しかし、その後、何の音沙汰もなくなった。そこで、ベンチャーキャピタルに電話をかけると、あまりにも忙しくて、次に会えるのは、1週間後、もしくは、2週間後になると言われる — 実際に電話を繋いでもらえたらの話だが。すると、再び悪夢の計算が忍び寄ってくる — 当該の投資機関は、10億ドル以上を動かし、100社以上の会社に対応している。投資機関を運営する10名そこそこのパートナーは、この100社以上の会社に時間を割り当て、さらに、1日に幾つか投資の機会を確認しなければならない。

それでは、300万ドル(会社が投資した資金の0.3%)を投資した会社に対して、どれほどの時間を割くことが出来るのだろうか?GitHubやClinkle等のポートフォーリオのセクションに含まれている場合は、なかなか時間を割いてもらえないはずである。

シリコンバレーに進出するべき時

誤解しないでもらいたい — ヨーロッパにも、シードの段階、そして、シリーズ Aのレベルでアメリカの投資機関から資金を調達し、満足している会社は存在する。しかし、巧みなかじ取りを求められることは多い。

私は何を隠そうシリコンバレーの投資機関を人一倍愛しており、ヨーロッパの会社に莫大な価値をもたらすことが出来ると確信している。米国で資金調達を行う上で重要なポイントは、タイミングである。

個人的には、ヨーロッパのスタートアップには、まずはヨーロッパで製品を改善し、ビジネスモデルを証明してから、米国に進出してもらいたいと思っている。シリーズ Aの資金の一部を米国でのオフィスの設立に使い、現地で顧客と契約を結び、そして、徐々に米国の投資機関との交渉に乗り出すと良いだろう。

その後、潮時が来たら、シリコンバレーの優れたベンチャーキャピタルからシリーズ B、そして、Cの資金を獲得し、世界制覇に貢献してもらうのだ。

ここまで来れば、スタートアップを支援する機運が米国の投資機関の間でも高まり(役員会議のためにヨーロッパに足を運ぶほど)、ヨーロッパのシードおよびシリーズ Aの投資家は、投資への見返りに満足するはずだ。そして、起業家は、西洋諸国を、一歩づつ、征服することに胸を躍らせるだろう。


この記事は、The Next Webに掲載された「Why European startups shouldn’t fundraise in the Silicon Valley」を翻訳した内容です。

中途半端にシリコンバレー進出するリスクは確かにありますよね。記事にもあるようにある程度自国で経験と実績を積んでからの進出であれば可能性もあると思いますし、日本のスタートアップ、ベンチャー企業でも同種のやり方で頑張っている所もあると思いますが、「大成功」といえるケースはまだまだなないのですかね。世界各地でインターネット&起業ブームが巻き起こっていますが、まだまだシリコンバレー&米国市場はインターネットの世界において強力な位置にありますし、今後5年10年でシリコンバレーで大成功する日本企業がでてくることを期待したいです。 — SEO Japan [G+]
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