検索エンジンの最適化から、検索体験の最適化へ。

最終更新日:2024/02/16

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2012年にマット・カッツ氏が、先日のSMXではミト・ガンジー氏が、また、その他の方からもちらほら聞かれるSearch Experience Optimization。明確な定義はありませんが、検索エンジンに特化した施策ではなく、ユーザー(検索)体験の最適化を目的としたアプローチです。記事中のクリック率とランキング要素の関係については賛成しかねるところはありますが、目的としている部分は正しいのではないでしょうか?– SEO Japan

*記事内のリンク先は全て英語となっています。

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2015年以降のSEOを成功に導くために、我々は何をすれば良いのだろうか?今まで何度となく耳にしてきた以下の指摘は、今まで以上に真実味を帯びてきている。

“優れたコンテンツを作る”

“コンテンツは何よりも重要だ”

“品質の高いサイトを構築する”

しかし、そもそも何をもって”優れた”と言うのだろうか?どのように”品質”を計測すれば良いのだろうか?

ユーザーの期待を考慮せずに、コンテンツの品質を評価することはできない。ユーザーの期待を満たさないのであれば、どれだけ巧みに文章を綴っても意味はない。検索の観点において、質の高いコンテンツを提供するためには、Search Engine Optimazation(SEO:検索エンジン最適化)を超え、Search Experience Optimization(SXO:検索体験の最適化)に発展させることが必要となる。

検索体験はGoogleに始まり、Googleで終わる

通常、ユーザー体験(UX)の最適化は、成功を判断する基準が設定されている。ユーザーをバイヤーにコンバートする、Eメールアドレスを集める、ページビューを増やす、あるいは、ユーザーに広告をクリックしてもらうことなどが、そうした基準に該当する。

また、それらはGoogleの基準ではなく、あくまでも、あなた自身の基準であるはずだ。さらに言えば、基準となる対象はあなたの顧客であり、Googleの顧客ではない。一方、SXOにおいては、Googleの顧客に焦点をあてることとなる。この体験は、Googleに始まり、Googleで終わる体験なのだ。

自分自身の基準に従えば、全ての基準にアクセスすることができる。その中には、明確な基準(購入決断など)もあれば、曖昧な基準(直帰率など)もある。しかし、Googleの基準(彼らが検索結果に対しでどのように計測を行っているか)に関しては、非常に情報が少なくなってしまう。それは、底の見えないブラックホールのようなものだろう。検索体験を最適化するためには、この明らかにされていない箇所にいくばくかの光を当てる必要がある。

あなたが望むものを、あなたはいつでも得られるわけではない

買う意欲のある、予約する意欲のある、購読する意欲のあるなど、自身のビジネスにとって有益な行動を起こす意欲のあるユーザーを私達は求めている。次のチャートは、仮説に基づいたものも含まれるが、検索エンジン経由のビジターによるサイトの利用の内訳を表している。

UserActions

【上記画像和訳】
・シングルページ(直帰)
・エンゲージメント(コンバージョンには至らず)
・Eメールアドレスを残す
・購入

上記のチャートによると、ユーザーの60%はなにも行動を起こしていないことになる。そうしたユーザーは、欲しいものを手に入れることができたのだろうか?また、どのような人達なのだろうか?そして、なぜあなたのサイトにやってきたのだろうか?

(自身のサイトにとって)成功と見なすことができる行動(登録や購入)を取ったのは、10%に過ぎなかった。残りの90%のユーザーはどうだったのだろうか?直帰しなかったユーザーは何をしていたのだろうか?フラストレーションを抱えてサイトを去ったのだろうか?それとも、満足してサイトを後にしたのだろうか?

我々は、自身が望むビジターを常に得られるわけではない。SXOは、我々が望むようなユーザーはもちろん、我々が実際に獲得したユーザーの体験を最適化する取り組みである。それは、Googleの望みと一致しているだけでなく、全てのユーザーをより良く理解することで、我々のビジネスの目標達成にも有効に働くものなのだ。

Googleが望むことは答えを提供すること

ナビゲーショナル検索(特定のサイトに訪れたいという意思が既にある場合の検索)を除き、たとえその形式を成していなくとも、基本的に全ての検索は質問である。非常にシンプルなことではあるが、Googleはそうした質問に対する答えの提供を望んでいるのだ。検索結果で提供されるダイレクトアンサーの数が増加していることが何よりの証拠と言えるだろう。

下記に記載する検索について考えてみよう。

search-intent-examples

【上記画像和訳】

ハイアット リージェンシー ユーザーは価格、アクセス方法、レストラン情報などを求めている可能性がある。
ダイソン ホームズ 家の価格は?学校のシステムは?自分の家の価値は?
ニューバランス 433XB 購入するサイトを探している?レビューを読みたい?製品の詳細な性能を知りたい?
アメリカン エアーラインズ 航空券の予約、出発時間、ポリシーの確認、など。

Googleは、答えを提供する点に関しては成功を収めている。しかし、Googleはどのようにして、成功しているかどうかを判断しているのだろうか?とりわけ、クエリが質問形式ではない場合は。

Googleによる評価方法

Googleが独自の基準を用いて、検索結果の品質を計測していることは明らかだろう。我々にとっての自身のサイトと同様、Googleはユーザーがクリックした結果を元にしたメトリックスをもっているはずである。事実、Googleは先日この点を認めている

Googleがクリックの結果を分析する方針は理にかなっている。Googleが確認している可能性が高く、また、頻繁に話題になっていることも考慮に入れると、下記の要素を見ているはずだ。

  • ショートクリック(Short click)
    ショートクリックは、ウェブサイトからすぐにGoogleに引き返す行為を指す。当然だが、すぐに引き返されてしまう場合、良いシグナルとは言えない。
  • ロングクリック(Long Click)
    ロングクリックには、ユーザーがGoogleに引き返すまでに長時間を要するクリックが該当する。その時間は長ければ長いほど良い。
  • ポゴスティッキング(Pogosticking)
    検索エンジンのユーザーが、複数の検索結果を行ったり来たりする行為を意味する。
  • クリックスルー率(Click-through rate)
    検索結果に表示された頻度とユーザーがクリックした頻度の比率(%)で表現される。
  • ネクストクリック(Next Click)
    ポゴスティック後、ユーザーが次にするクリック。(既存の検索結果、もしくは、新しい検索を実行した後のクリックも含む。)
  • ネクストサーチ(Next search)
    ユーザーが新しい検索に移行したケース。
  • 2回目の検索のクリック率(Click rate on second search)
    パーソナライズ検索や過去にクリックされたことにより、前回のページの順位が上がる。

ネクストクリック

Googleにおいて最も重要なシグナルは、”ネクストクリック”だろう。Googleがクエリに対する答えを提供したいのであれば、ユーザーが次にクリックする結果は、ユーザーが何を知りたいかをGoogleに伝える上で重要な指標となる。例えば、ユーザーは、New Balanceのランニングシューズを買う場所を見つけたのだろうか?ナパのB&Bのレビューを探しているのだろうか?

もしユーザーが同じクエリで異なる検索結果に対し、クリックと”戻る”を繰り返しているのなら、また、Googleに継続して訪問し同じクエリを繰り返しているのなら、ユーザーは既存の検索結果に満足していないことを意味している。反対に、ユーザーが検索結果ページに戻り、まったく異なる検索を新たに実施した場合、ユーザーは検索結果に満足したと考えられる。

Googleは、ユーザーがクリックする行動がランキングに直接影響を与えることを認めてはいない。しかし、影響を与えるとしか私には思えない。仮にランキングに影響を与えないとしても、アルゴリズムの評価と変更に影響を与えている可能性は高いと思う。いずれにせよ、Googleの検索結果にあなたのサイトが表示され、Googleの基準数値が改善されるのであれば、あなたにとって良いことづくめだと言えるだろう。

検索を完了させる

従って、検索ユーザー体験を最適化するためには、ユーザーによる(それ以上の)探索を止めさせ、検索という行為を完了させる必要があるのだ。

ユーザーがGoogleの検索結果に戻り、さらに答えを探す理由がない状況を作り出さなければならない。我々が具体的なネクストクリック後の訪問先を知る手段はない。しかし、ユーザーを理解することで、ネクストクリックに影響を及ぼすことは可能だ。

“検索を完了させる”ためには、ユーザーがなぜ自分のページにたどり着いたかを理解する必要がある。どんな疑問を抱えていたのか?そもそも、どんなニーズがあってGoogleを訪問したのだろうか?

ユーザーが特定のホテルを検索するケースを想定してもらいたい。

  • 最も安い価格を探しているのか?
  • レビューを探しているのか?
  • ドライブのルート情報を必要としているのか?
  • アメニティグッズを調べているのか?

もっともらしい推論を導くことは可能ではあるが、さらなる上を目指してみよう。

キーワードデータ

まずはキーワードのデータをチェックしよう。キーワードのデータをWebmaster Tools(現在はSearch Consoleに名称を変更している)で精査し、検索意図を明らかにするために修飾語句を探そう。まずは、特定のページのタイプ、および、トラフィックが多いページに対するキーワードを確認する。

曖昧で、意図が明らかでないキーワードが多いだろう。例えば、旅行のサイトを運営している場合、修飾語句がない”Hyatt Regency”で100回の検索、”レビュー”、”ルート”、”場所”などの修飾語句がある検索が20回、といった具合になるはずだ。こうした修飾語句とその出現回数は、ユーザーがあなたのサイトを訪れた際に抱く疑問を明らかにする材料になる。

これはあくまでも初めの一歩に過ぎない。 おそらく、あなたが知り得ないクエリも多くあるはずだ。なぜなら、そうしたクエリでは、あなたのサイトはランクインしていないからである。そこで、SEMrushやGoogle キーワードプランナーなどのキーワードツールの登場となる。また、UberSuggestを使ってユーザーのマインドセットを把握する方法もお薦めだ(クエリの量は多くなくても、その他のツールでは盛り込まれていない多くのバリエーションを知ることができる)。

UberSuggest

キーワードデータは、ユーザーの考えていることを把握する上で良い出発点となる。しかし、あくまでも出発点である点を忘れないでもらいたい。それでは次のステップに進んでいこう。

SEO調査

ユーザーがあなたのサイトにアクセスした理由を明らかにするための調査を行おう。私自身、SurveyMonkeyやQualaroo等のツールを使って、長年SEO調査を実施してきた。 当然だが、調査自体はユーザー体験にマイナスの影響を与える。そのため、統計的に有意な値を得られるまでの期間に限定している。通常、100名からレスポンスを得られれば十分だと私は考えている。以下に、調査をする際の注意点を挙げていく。

  1. 検索を基にユーザーを分類する。これはSEOの調査であり、検索エンジンを経由したビジターのみが対象となる(その他のセグメントのユーザーに拡大する価値も、もちろん、ある)。
  2. この調査の目的は、ユーザーがサイトを訪れた理由を知ることだ。 ユーザーを検索に駆り立てた疑問や問題は何だったのだろうか?
  3. 間髪入れずに調査を行う。 待ち過ぎてしまうと、すぐに検索結果に戻ってしまうビジターを対象にする機会を逃してしまう(このタイプのビジターこそ最も調査に含めたい)。
  4. ページのタイプごとに調査を分類する。 例えば、ホテルの施設に関するページにアクセスしたユーザーは、街やホテルを紹介するページにアクセスしたユーザーとは大きく異なる動機を持っている。トラフィックの多いコンテンツに対しては、個々のページで調査を実施したいところだ。
  5. 調査の領域は、SEOトラフィックの大部分である必要がある。

ユーザーに”本日、このサイトを訪問した理由をお聞かせください”と尋ね、理由の選択肢を幾つか用意しよう。その際、”その他”を用意し、あなたが思い浮かばなかった理由を逃さないようにしてもらいたい。例えば、住宅を販売する不動産業者のサイトの場合、以下のような質問が効果的だ。

  • 購入目的
  • 賃貸
  • 家の価格
  • 近郊の学校の情報
  • 見積もり
  • オープンハウス
  • 地図

調査で得たデータに基づいて、ユーザーのニーズに優先順位をつけることが可能となる。予想外の結果が出ることが多いが、それがそのままチャンスに結びつくこともある。例えば、不動産サイトの販売ページにアクセスしたユーザーに対して調査を行い、そのうちの20%が、実は、賃貸も検討している点が判明した、といった具合だ。これはクロスマーケティングを行う絶好の機会となる。

統計的に有意な値

あなたはユーザーを満足させたいはずだ。しかし、全てのユーザーに喜んでもらうことは不可能である。そのため、改善すべきアイテムに優先順位をつけ、できるだけ多くのビジターのニーズを満たすようにしよう。

例えば、レストランのページにアクセスしたビジターの25%が、予約したいと望んでいるものの、予約ができない状態であれば(予約機能が提供されていない、もしくは、ユーザビリティの問題が存在するなどの理由で)、それは大きな課題となるはずだ。仮に、アクセス方法を知りたいと思っているビジターが全体の1%程度であれば、アクセス方法の提供の重要度は遥かに低いことになる。

猶予は10秒間のみ

UXのエキスパートとして名高いヤコブ・ニールセン氏は、数年前にMicrosoft Researchの調査の分析を行っていた。こちらの分析によると、サイトにアクセスしてから10秒以内に最も多くのビジターがサイトを去ることが判明している。そのため、10秒を過ぎると、当該のユーザーがサイトに留まる確率は高くなる。下記に挙げる要素をユーザーに提供する必要があるが、その猶予は10秒間しかないということだ。

  • ビジターが持つ疑問の答えがサイトに存在すること
  • 信頼に値する答えを持っていること
  • その答えを簡単に得られること

これは非常に難易度が高い。あなたは、多くの競合する優先度にバランスを与えるページデザインを作成しなければならない。効果的なランディングページをデザインするためには、ビジターがどんな疑問を持っているのかを知る必要がある。

SEOユーザビリティテスト

ユーザビリティテストは、ユーザーがどの程度、彼らの目的を達成したかを判断する、非常に優れたツールである。現在、ユーザビリティテストはSEOの取り組みの一環として捉えるべきだと思う。UXチームやプロダクトチームがこのタスクに失敗しているのであれば、彼らとともに取り組み、あなたの視点(SEO観点)がユーザービリティテストに含まれているか確認しよう。もしも含まれていないのであれば、彼らにテストから得られた結果を含めてもらうよう、依頼すべきだ。

ユーザビリティに馴染みのないSEOの担当者には、Rocket Surgery Made Easyに一度目を通すことを薦める。 また、非常に有益で迅速にテスト結果を提供してくれるオンラインサービスも存在する。個人的にはUserTesting.com(より本格的なテストに向いている)とFiveSecondtest.comを実際に使ったことがあるので、お薦めしたい。下記に、SEOユーザビリティテスト特有のアドバイスを挙げておこう。

  • SEOのユーザー・シナリオを作成する。背景と目的を設定しよう。検索結果でテストをスタートさせ、検索結果からランディングページへの移動を観察しよう。
  • 最も多くのトラフィックを獲得するページのテンプレートを用いて、ランディングページに焦点を絞る。
  • キーワード分析と調査で明らかになった使用事例や問題に焦点を当てる。

一貫性のあるタイトルとメタディスクリプション

すべての検索が質問であるならば、検索結果ページでは答えが提供されているべきだ。サイトのタイトルは、そのサイトが提供する情報を正しく表現できているか、確認すべきだろう。

あなたの製品の内、半分しかレビューがないのであれば、レビューがある製品の場合のみ、その内容をタイトルとディスクリプションに記載しよう。さもなければ、ユーザーは好ましくないクリックを行うことになり、結果として不満を抱えてしまうだろう。また、”無料”という言葉を使うのであれば、”無料!”としたほうが良いだろう。

ウェブ製品の改善

SEOの役割は広がり、ビジターの問題を理解し、解決することまで求められるようになった。スキルを増やし、今までとは違った領域に踏み込む必要があるため、SEOの担当者にとっては大きなチャレンジとなるだろう。しかし、リンク構築と比べ、遥かに面白く、また、遥かに大きなやりがいを得られるはずである。

もっと言えば、SEOの役割は、あなたの組織内でより厳しい目で見られる可能性もある。なぜなら、学習し、改善することでウェブサイトに大きな利益を与えるようになり、従来のSEOの範疇を超えた影響を与えることになるからだ。”Search Engine Optimization”から”Search Experience Optimization”への移行の素晴らしいところは、サイトへのトラフィックを増やすだけでなく、ウェブ製品自体を改善する効果が見込める点である。

この記事は、Search Engine Landに掲載された「From SEO To SXO: Search Experience Optimization」を翻訳した内容です。

SEOの対象範囲は広がる一方であり、従来の範囲を元にすると”SEO終了説”もささやかれたりします。(個人的には、人々が検索という行為をやめない限り、SEOの必要性はあり続けると考えていますが。)それでも、目線やアプローチや施策内容は刻々と変化していきますので、有益なサービスを提供できるよう、頑張っていきたいものです。

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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