負け犬のつく嘘

最終更新日:2024/02/18

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絶対的な自信を持って始めたスタートアップや新規事業が軌道に乗らなかった時、多くの人が陥りがちなのがその理由を事業や運営組織以外に求めること。人間の防御心理として自然にそうなってしまうことはわからなくはないですが、企業にとっては最終的な崩壊につながりかねない悪者の行為ともいえます。第三者の話として聞いている分には否定できても自らにそれが起こると意外と回避できない「自身への嘘」。そんな悲しくも避けて乗り越えるべき課題をアンドリーセン・ホロウィッツの創業者が考えます。 — SEO Japan

’Cause right now you’re just a liar
a straight mentirosa
today u tell me something
y manana es otra cosa
—Mellow Man Ace, Mentirosa

会社が大きな戦いに敗れ始める時、真実が最初の負傷者になることが多い。CEOと従業員は、明らかな事実に対処することを避けるのに役立つクリエイティブな物語を生み出すことに尽力する。彼らの熱心なクリエイティビティにもかかわらず、多くの会社は全く同じ虚偽の説明に陥る。

聞き覚えのある嘘

“彼女は会社を去ったが、私たちは元々彼女をクビにするつもりだった。もしくは、悪い評価査定になる予定だった”―ハイテク企業は従業員の削減を3つのカテゴリに入れる傾向がある:

  1. 辞めた人
  2. クビになった人
  3. 辞めたけど、どっちにしても会社として必要としていなかったので問題ない人

見事なことに、会社が苦戦し始めると、常に3つ目のカテゴリが1つ目よりもずっと早く成長するようである。加えて、通常、“優秀な才能に溢れた人材が揃った”はずの会社で、“準・業績に基づく人員削減”の突然の波が発生する。これらのスーパースター従業員たちがどうやって突然、重要な人物からゴミになるというのか?あなたが“望まない人員削減”と言う前に最高評価の従業員を失う時に、マネージャーが彼女の業績が落ちたと注意深く説明することがどうしてできるのだろうか?

私たちは勝っていたはずなのに、競合がタダ同然で契約を盗んだ”―“顧客は技術的には私たちを選択し、私たちの方が良い会社だと考えているが、競合他社が単に製品を無償提供したのだ。私たちは、そんなに安っぽく売らない。だってそれは評判を傷つけることになるから。”企業の販売チームを運営したことがある人なら誰でも、この嘘を以前に聞いたことがある。あなたは取引に入って行き、激しく戦い、負けるのだ。自分に光を当ててほしくない営業担当者は、他の会社の“中古車ディーラー”担当者のせいにする。自分が製品競争力を失っていると思いたくないCEOは、営業担当者を信じる。もしあなたがこの嘘を耳にしたなら、この主張を実際の顧客で実証してみることだ。

中間マイルストーンを逃したからといって、製品スケジュールに間に合わないということではない“―予定通りに出荷しなければならないというプレッシャー(顧客との約束、それに基づく四半期、競争に勝つことが必須)のあるエンジニアリング会議では、誰もが良いニュースを期待する。事実が良いニュースと合致しない時、賢いマネージャーは次の会議までみんなを良い気分にさせるための物語を見つける。

解約率は高いが、フォローのメールマーケティングを実施すれば、すぐにクライアントは戻ってくるだろう”―うん、もちろん。人々が私たちのサービスから離れて戻って来ない理由は、私たちが十分なスパムメールを送っていなかったからだ。それは私にとっても完全に理にかなっている。

嘘はどこからやってくるのか?

その質問に答えるために、私は比類なき才能の持ち主であるアンディ・グローブと数年前に交わした会話について思い返してみた。

2001年の大きなインターネットバブルの終わり頃に、全ての大きなテクノロジー企業が四半期に大きな数字に届かなくなり始めた時、私はどうしてそれがやってくることを誰も予測しなかったのか不思議に思っていた。2000年4月のドットコム・クラッシュの後、CiscoやSiebelやHPのような大企業は、自分たちの顧客の多くが壁にぶつかったことですぐに自分たちが減速に直面すると気が付くと思ったが、これまでに最も巨大で公式な早期の警告システムにもかかわらず、それぞれのCEOは、四半期を劇的に空振り三振するところに来るギリギリまで、強気のメッセージを繰り返し語っていた。

私は、アンディにこれらの優れたCEOがなぜ自分たちの差し迫った運命について嘘をつくのか聞いた。

彼は、彼らは投資家に嘘をついているというよりは、自分たち自身に嘘をついているのだと言った。

人間、特に物を作る人たちは、良いニュースの先行指標だけにしか耳を傾けないのだとアンディは説明した。例えば、もしCEOが、アプリケーションへの関与が1か月の通常の成長率を超えて25%増加したと聞けば、CEOは、差し迫る需要の大きな動きに対応するためにもっと多くのエンジニアを雇用することに素早く取りかかるだろう。一方で、関与が25%減少した場合、CEOは次のように説明して、同じように熱心になり緊迫するだろう:“サイトは今月減退した。4日間の休日があったし、私たちが行ったUIの変更が全ての問題を引き起こした。お願いだから、パニックにならないようにしよう!”

どちらの先行指標も間違っているかもしれないし、どちらの先行指標も正しいかもしれないが、私たちの仮説上のCEO―ほぼ全てのCEO―は、ポジティブな指標においてのみ行動を起こし、ネガティブな先行指標においては代替となる説明を探すだけだった。

だから、もしあなたがこれを読んで聞き覚えがあり、自分の正直な従業員がなぜ自分に嘘をつくのか不思議に思っているのなら、答えは、彼らはあなたに嘘をついているのではないのだ。彼らは自分自身に嘘をついているのだ。

そして、もしあなたが彼らを信じるのなら、あなたは自分自身に嘘をついているのだ。


この記事は、ben’s blogに掲載された「Lies that Losers Tell」を翻訳した内容です。

経営者はもちろん、栄枯盛衰の激しいネット業界にいれば一度や二度は経験したことがあるようなエピソードと教訓が盛り込まれた頭が痛くも学べる記事でした。。。事業を勢いで拡大しすぎて後で人員削減しざるえないケースは時にあると思いますが(自ら猛省)、優秀な人材がこぞって辞めていくケースは確かに危機信号ではありますよね。もちろん、記事のように言い訳するのではなく、その状況を認めいかに会社や組織を改善していけるかということが大事なわけですが。競合に値下げや無料契約で負けた話もネット業界じゃなくともよくある話と思いますが、会社が中長期的に成功できるかは「価格競争に負けない製品サービス」を持てるか、作れるかにかかっている気もします。

事業に限らず物事が思ったようにうまくいかない時、失敗を外部や他者に求めることは、とても簡単なことですし、そうしたくなる気持ちはわかりますが、低迷の理由を外部要因に求め続けている限りは、最近の日本の大企業の失速ぶりを見ても決して状況が改善されることはない気もします。特にスタートアップやベンチャー企業になれば、それが成長できるかは、問題を早期に特定し、必要あればピボットしてでも事業を軌道に乗せていく反省力と改善力しかなのではないでしょうか。自らの過去を振り返りつつ、そんなことを思ってしまった金曜朝でした。 — SEO Japan [G+]

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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