ECサイトのSEOにおいて、情報提供型コンテンツが持つ真の価値とは?

公開日:2020/03/11

最終更新日:2024/02/17

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全てのWebサイトには目的があり、ECサイトの場合は「商品を売ること」が目的となるでしょう。

そのため、ユーザーに情報を提供するようなコンテンツページは、ECサイトの最大の目的とは直接関係していないと考えることもできます。

もちろん、ユーザー体験等を考えるとそうした情報提供のページは必要だと思われますが、「購買を目的としたキーワードでの上位表示にどれだけ寄与しているか」を証明するのは困難です。

以前、Web担当者フォーラムでも紹介されましたが(※)、実際に起こったケースを解説してくれている、Search Engine Landの記事を紹介いたします。
【悲劇】CV貢献してない記事ページを整理 → ECサイト全体の売上が減少【ありがち】【SEO情報まとめ】

データによると、情報提供型のコンテンツは、商業的な検索意図のある検索キーワードの順位にも良い影響を与える。

ECサイトのSEOにおける、情報提供型のコンテンツの真の価値を計ることは難しい。情報提供型のコンテンツは他のWebサイトからの自然リンクの獲得に寄与すると考えるコンテンツマーケターやSEO担当者がいる。そうしたリンクはオンラインショップ全体のSEOパフォーマンスの改善の助けとなると思われる。

しかし、全体のSEOパフォーマンスに貢献したのは、情報提供型のコンテンツなのか、他の施策や開発によるものなのか、どのように区別すればよいだろうか。

そこで、この記事では、情報提供型のコンテンツが商業目的のページの順位上昇に寄与し、売上増に貢献するという考えを紹介したいと思う。

背景:SEOの戦略とパフォーマンス

今回のケーススタディで用いたECサイトは2011年にローンチされたが、SEOの戦略が最後に実施されたのは2017年のみであった。状況をまとめると、下記となる。

テクニカルSEO

  • Webサイトのコンテンツ(60,000の商品ページ、80のカテゴリページ)は検索エンジンによってクロールされ、インデックスされている
  • ユーザーと検索エンジンの両方に対し、ページスピードを上昇させることに非常に注力している

コンテンツ

  • 既存の情報提供型のコンテンツを整理し、新規のコンテンツを追加している
  • 情報提供型のコンテンツから、関連性のある内部リンクを、カテゴリページに貼っている

積極的なリンク構築の施策は行われていない。現在の被リンクの全ては、他のマーケティング施策やパートナーシップの副産物、ユーザーによって自然に貼られたリンクである。

これらのアプローチは、直近2年半に渡り、ビジネス上の大きな結果をもたらしている。SEOの戦略を実施して以降、Sistrixで計測されたGoogleの検索結果におけるビジビリティは大きく増加している。2018年の夏に起こったメディック・アップデートにより減少したが、2019年3月のコアアップデートで回復している。

ビジビリティの増加は、売上の増加を導いている。自然検索経由での売上は、SEO戦略が実施される1年前の2016年は359,000ユーロ(約4,260万円)であったが、2019年には914,000ユーロ(約1億800万円)へと増加している。

自然検索のトラフィックからの収益はGoogle Analyticsで計測している。また、カスタム属性を用い、売上が発生した直前のインタラクションだけでなく、それ以前のインタラクションの要素も算出されている。

同様の属性を使用し、ランディングページの内、どのタイプのページが、自然検索経由で発生している売上に貢献しているかも算出している。2019年、情報提供型のコンテンツは、SEO収益のたった2.36%に値するトラフィックしか生んでいない。

情報提供型のコンテンツが素晴らしいパフォーマンスを見せた領域は、被リンクの獲得である。他のドメインからのリンクを最も獲得した10ページのうち、5ページが情報提供型のコンテンツ、4ページがカテゴリページ、1ページがトップページであった。

こうしたデータを確認しても、情報提供型のコンテンツがSEO全体のパフォーマンスにおいて、どのような役割を果たしていたかを理解することは難しい。また、売上に対する直接の貢献は低い。

しかし、十分な量の被リンクを獲得している。こうした被リンクは、商業目的のページの順位上昇と、自然検索経由での売上増加に寄与しているのだろうか。

全ての情報提供型のコンテンツのページを削除する

2019年後半、重大な経営判断がこの会社を大きく変化させた。

近年の素晴らしいパフォーマンスにもかかわらず、このショップは大きな組織内では相対的に小さなプレイヤーに過ぎなかった。

この会社は、このショップの競合相手となるサイトを保持している、より大きな企業に属している。経費削減を目的とし、このショップはより大きな競合サイトによって運営されることになった。

新しいオーナーはショップ全体を自身のシステムにリプレイスすることを計画し、ドメイン名とロゴのみを現状のままにしようとした。過去数年で作成した情報提供型のコンテンツを使用する予定が無いことは明らかだった。

そのため、このショップを運営している現在の会社は、こうしたコンテンツを削除し、将来の別のプロジェクトのために保管することを決意した。

約25の情報提供型のコンテンツが削除され、トップページへとリダイレクトされた。このリダイレクトは、トップページの順位上昇を目的とした措置ではなかった。404や410の設定ではなく、リダイレクトを選択したことは、悲観的な状況の中で下された選択であり、特別な理由はなかった。

情報提供型のコンテンツを削除したこと以外の変化はなく、数週間が経過した。

Webサイトのランキングへの影響

情報提供型のコンテンツが削除された後の最初の数日間は、Googleの評価は特に変わりはなかった。

そのショップのトップページへとリダイレクトされているのにもかかわらず、削除されたページのいくつかは、順位を維持していた。これは、Googleがすぐにクロールをしなかったからかもしれない。

Googleがサイトの変更を検知し、ランキングへと反映させる処理を行うのには多少の時間がかかる。

コンテンツが削除された10日後、かつて情報提供型のコンテンツを含んでいたディレクトリページの全ての順位が完全に失われた。

上記のスクリーンショットにあるデイリーのビジビリティの推移は、この下落を完全に反映していない可能性を考慮してほしい。

Sistrixはデイリーのビジビリティを計測しているが、彼らのデータベース内にある何百万ものキーワードの検索結果を毎日スクレイプしているわけではない。そのため、ランキングの変化は、それが発生した数日後にビジビリティのグラフに反映されることもある。

興味深いことに、このドメインのビジビリティ全体が大きく減少し、それは、削除されたディレクトリが失ったビジビリティよりも大きいものだった。

情報提供型のコンテンツの削除から3週間以内に、そのショップはビジビリティの約1/3を失った。削除されたコンテンツは、かつて、ドメイン全体のビジビリティの約1%しか占めていなかったのにもかかわらずだ。

トップページといくつかのカテゴリページは、検索ボリュームの大きい商業検索意図のあるキーワードで、1ページ目表示の多くを失った。下記のスクリーンショットは、情報提供型のコンテンツが削除された後に失われた、最も重要なランキングの変化を表している。

このショップはサングラスを販売しておらず、英語のサイトでもない。上記のスクリーンショットのキーワードとURLは実際のものとは異なっており、これは、そのショップの特定を避けるための措置である。しかし、検索意図には差異がなく、スクリーンショットに記載されている他の数字(検索ボリューム、CPC、順位など)は実際の数字である。

トップページとカテゴリページの順位下落とビジビリティの減少は、情報提供型のコンテンツの削除に起因しているのだろうか。もしそうだとしたら、どのように関連しているのだろうか。

順位下落の可能性となる理由

情報提供型のコンテンツの削除の後、トップページとカテゴリページの順位が下落した理由として、最も説得力のある理由がリンクである。前述のとおり、削除された情報提供型のコンテンツは、十分な量のリンクを獲得していた。

それらのコンテンツには、関連性のある内部リンクがトップページとカテゴリページに向けて貼られており、情報提供型のコンテンツに向けて貼られた他サイトからのリンクの関連性を渡し、商業的な検索意図のある検索での優位性を与えていたかもしれない。

情報提供型のコンテンツの削除後、そのコンテンツへ貼られていた他サイトからのリンクは、その関連性をすべて失った。加えて、情報提供型のコンテンツから他のページへと貼られていた内部リンクの関連性も、完全に失われている。

しかし、順位下落に影響を与える要素は複数あり、まだ考慮できていない要素もあるかもしれない。

情報提供型のコンテンツのURLはトップページへとリダイレクトされている。その結果、情報提供型のコンテンツに向けて貼られていたリンクの関連性をリダイレクト先のページへ渡せなくなっているかもしれない。

なぜなら、削除されたページは、リダイレクト先のページとコンテンツの内容がまるで異なるからだ。関連性の低いページへリダイレクトされている場合、「ソフト404」としてみなされる可能性があることを、Googleも認めている。
(参考:Proof That 301 Redirects To Less-Relevant Pages Are Seen As Soft 404s To Google [Case Study]

では、トップページへのリダイレクトではなく、情報提供型のコンテンツが404や410を返していた場合、状況は変わっていたのだろうか。

関連性の低いページへのリダイレクトによって生じた「ソフト404」と比べ、404や410を返すページへのバックリンクは、関連性の喪失という意味では少ないのだろうか。

今回の場合、トップページへのリダイレクトと404や410を返す処置の間に差異はないはずだ。関連性を残す唯一の方法は、削除されたページから同様のコンテンツのページへのリダイレクトを設置することであるが、今回の場合、その選択肢はなかった。

今回のケースを、ドメイン全体のトピックの関連性、最近流行りの言葉で言えば「E-A-T」の考えと結びつけたいという誘惑に駆られる。

被リンクや、商業目的のページに関連性を渡す内部リンクということ以上に、情報提供型のコンテンツ自体に価値があると主張する者もいるだろう。こうした考えを捨て去るべきではないが、漠然とした内容であり、証明が困難である。

他の要素としては、Webサイトのランキングに影響を与える可能性がある外的な要因だろう。情報提供型のコンテンツの削除後にランキングが変動したことは偶然であり、直接的な要因でないかもしれない。ランキングが変化した場合、Googleのアルゴリズムの変更を要因から完全に除外することは、いつだって難しい。

次のセクションでは、今回のランキングの変化が偶然の一致ではなく、情報提供型のコンテンツの削除と関連しているという考えを支持する要素について論じたいと思う。

コンテンツを復活させたことによる回復

情報提供型のコンテンツを削除した3週間後、このWebサイトはまだ該当の会社のコントロール下にあったため、全てのコンテンツを一時的に復活させることにした。

この判断は、SEOの研究を目的として下されており、順位の変化が情報提供型のコンテンツの削除に関連しているのかを確かめるためであった。

また、新しいオーナーが情報提供型のコンテンツに対する考えを変えなかったとしても、可能な限り最高の状態で譲渡したいという思いがあった。

下記のスクリーンショットは、Sistrixのデイリーのビジビリティのグラフである。情報提供型のコンテンツを復活させた後、Google検索でのビジビリティがどのように推移したかを表している。

情報提供型のコンテンツを復活させてから3週間後、Webサイト全体のビジビリティは完全に回復し、削除前と同程度の水準となった。トップページやカテゴリページは、商業検索意図のあるキーワードでの上位表示を、情報提供型のコンテンツの削除以前の水準で、再び獲得した。

多少の差異はあったが、6週間という周期を考えると妥当な範囲であり、通常の変動や季節要因によるものと思われる。

今回のケースから我々が学べること

今回のケースから得られる主要な知見は、「トップページやカテゴリページが商業検索意図のあるクエリでの順位を改善するために、情報提供型のコンテンツが助けとなっていることをデータが強力に示している」ということである。

正確な要素を適切に判断することは不明なままであるが、商業ページのSEOのパフォーマンス改善にとって、他のドメインから情報提供型のコンテンツへ貼られている外部リンクと、情報提供型のコンテンツから商業目的のページへ貼られている内部リンクが、非常に大きな役割を果たしていると言えそうだ。

まとめ

・該当のECサイトは、60,000の商品ページ、80のカテゴリページ、25の情報提供型のコンテンツがある。全ての情報提供型のコンテンツは削除され、トップページへとリダイレクトされている。

・削除される前は、情報提供型のコンテンツの自然検索からのトラフィックは2.36%であったが、ドメイン全体の被リンクの内、大きな割合を占めていた。

・情報提供型のコンテンツを削除した後、トップページとカテゴリページの商業検索意図のあるキーワードでの順位が下落したため、このサイト全体のビジビリティの1/3が失われた。

・順位の下落がコンテンツの削除と関連があるかどうかを調べるため、削除から3週間後に、該当のコンテンツを復活させた。

・3週間後、ドメイン全体のビジビリティは完全に回復し、トップページとカテゴリページの商業検索意図のあるキーワードでの順位も回復した。

・情報提供型のコンテンツが、トップページとカテゴリページの商業検索意図のあるキーワードでの順位改善の助けとなっていることを、データは指し示している。

・他のドメインから情報提供型のコンテンツへのリンク、また、情報提供型のコンテンツから商業目的のページへの内部リンクの存在が、今回の状況の説明として最も適切であると考えられる。

この記事は、Search Engine Landに掲載された「Case study: The true value of informational content for e-commerce SEO」を翻訳した内容です。

感想としては、「やはりそうだろうな」と思いました。

しかし、実際にやってみてどうなるか、なぜそのような事が起こるのか、という説明は非常に難しいとも思いました。自分のサイトではなかなか実証することが難しいため、こうしたケースの紹介は非常に助かりますね。

もちろん、Googleからの公式な情報ではないため、完全に正しいという証明も難しいです。とはいえ、ユーザー検索意図を満たすために、広いアプローチでコンテンツを作ることは今後も取り組むべきだと改めて感じさせられる記事でした。

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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