メディア企業がテクノロジー企業に喰われる理由

最終更新日:2024/02/27

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Google、Facebook、Amazon、Apple、、、ネット業界を飛び越えて現実世界や株式市場でも最も注目を浴びているテクノロジー企業群。今やテクノロジーを武器に、従来のメディア企業群のフィールドに殴り込みをかけている彼らですが、当然そのフィールドに君臨していたメディア企業にしてみれば面白くはない話。テクノロジーの進化でコンテンツがネットを介してメディアチャンネルを超えて流通されるようになりつつある現在、果たしてテクノロジー企業とメディア企業の決戦は今後どうなっていくのでしょうか? — SEO Japan

メディア業界のメンバーが綴る「データ・ドリブン・シンキング」は、メディアにおけるデジタル革命に関して新鮮なアイデアを提供するコラムである。

本日のコラムを担当したのは、Rare Crowds(レアクラウズ)のCEOを務めるエリック・ピカード氏だ。

友人であり、同僚でもあれるトッド・ヘルマン氏は(リンクトイン)かつてマイクロソフトで共に働いていた頃、動画コンテンツに関する戦略文書を作成した。「食われる側にはなるな」と言うタイトルがつけられたこの論文は素晴らしく、コンテンツがあらゆる場所であらゆる人々によって配信される世界で効果的に競争するための戦略を論じていた。私は「食われる側にはなるな」 と言うコンセプトを大いに気に入った。このコンセプトは様々な既存のビジネスモデルに当てはまるが、ヘルマン氏が最初に取り上げた – メディア – には特にがっちりとマッチする。

メディアビジネスは、コンテンツ配信が大幅に姿を変えたため、進化せざるを得ない状況になっている。今までは、メディアモデルを主に動かしてきたのは、配信に対する管理であった。印刷媒体、ラジオ、そして、テレビのコンテンツは、複雑な配信モデルを必要としていた。印刷機、そして、流通には多額のコストが求められる。また、ラジオとテレビの領域は限られており、ケーブルのインフラにも莫大な費用が必要である。しかし、大半のメディアの論理と実践は、このような長期的な配信の問題の影響を受け、メディア業界は柔軟な考えが欠け、簡単には前に進めない構造が出来あがってしまった。

ここで、私が好きなビジネスのケーススタディの一つを紹介する。それは鉄道である。 鉄道会社は、自動車や飛行機が受け入れられるようになると、機会を失っていった。鉄道会社は、自分達を「鉄道事業」と考え、「運送事業」とは見なさなかった。そのため、大きな機会を失った。事実、鉄道の全盛期に創業され、今でも営業を続けている会社はごく僅かである。

メディアにおいては、新しいテクノロジーによって、10年以上前から大規模な改革が行われている。そんな中、テクノロジー企業が参入し、メディア企業を破壊しているとして論争が起きている。 グーグルが良い例だ。また、先日グーグルがフロマーズ(註:欧米で有名な老舗旅行ガイド)を買収した件は、テクノロジー企業がコンテンツ企業を食い、純粋なテクノロジーからメディアへと拡大する傾向を示している。そもそも、グーグルは、メディア企業が従う既存の規則に沿ってメディアに参入しているわけではなく – テクノロジーの視点でメディアにアプローチしているのだ。

しかし、この問題は非難を浴びがちなグーグルだけに当てはまるのではない。アマゾンもテクノロジーの利用を介して流通モデルを変えることで、書籍業界を破壊しており、そして、明らかに雑誌、ラジオ、そして、動画のコンテンツにも狙いを定めている。 マイクロソフトは、電波到達範囲が拡大を続けるXboxを介して、エンゲージメントモデル、そして、コンテンツの配信をリビングルームにもたらし、さらに、ウィンドウズ 8、最新のタブレットデバイスのサーフェス、そして、スマートフォン – ここでもテクノロジー -を用いてメディア化を続けている。アップルは、様々な配信媒体を管理することで(デバイスに搭載されたアプリ)、配信モデルを一新するだけでなく、配信者には – テクノロジーを用いて – 通行料を請求している。フェイスブック、ツイッター、そして、その他のソーシャルメディアは、発見および配信を独自の方法で – よく分からないが、テクノロジーをベースにした方法で – 破壊しつつある。

既存のメディアモデルの機能は崩壊しており – 今後も崩壊は続いてくだろう。メディア業界において、配信は常に鍵を握っており、今後もこの傾向は変わらないと見られる。しかし、配信チャンネルの破壊が続き、さらに開かれていくと、配信が担っていた役割は大きく変わっていく。配信は、もはやメディアにとって鍵ではない – 本質的に重要ではあるが、鍵ではない。

今後のメディアにおいて鍵となるのはテクノロジーである。テクノロジーは、コンテンツが配信される仕組みを大きく変えることが可能であり、実際に変えてきた。そして、今後も変えていくはずだ。これこそが、メディアの未来はテクノロジーが握っている理由、また、メディア企業のランチ – 企業全体ではないなら – がテクノロジー企業に食べられている理由を示すポイントである。

メディア企業は、テクノロジーの専門家によって運営されているわけではないため、テクノロジーを理解していない。また、メディアの重役陣とテクノジーを理解するニーズの間には大きな隔たりが存在する。メディア企業はすべてテクノロジーの分野で競うために必要なコンセプトを伝えるべく、大規模な教育を行うべきであるが、それだけでは、彼らが直面する問題が解決されるとは私には思えない。

マイクロソフトに務めていた頃、ある重役が、同社で事業を運営している重役の多くがソフトウェア業界の出身者である理由を教えてくれた。この人物は「プラットフォームやテクノロジーの課題を解決することが出来る非常に優秀なエンジニアは、恐らく非常に優れたビジネスパーソンがテクノロジーを学ぶよりも早くビジネスのコンセプトや課題を学ぶことが出来る」と説明していた。この意見は正しかった – それだけのことなのだ。

今後、ビジネススクールは、ソフトウェアを作成する方法を習得する学科 – 特に重要なのは最新のプラットフォームの理解 – の学士または修士課程の取得を入学の条件に加えるべきである。このようなプラットフォームモデルは、配信の未来を支えることなり、また、テクノロジーのエキスパート達の間でも理解している人は少ない。 インターネットで幅広く利用され、また、コンテンツ配信を動かすソフトウェアをデバイスで作成するモダンなプラットフォームモデルは比較的新しく、また、テクノロジーのバックグラウンドを持つものの、このタイプのモデルに集中して取り組んだ経験がない人達はあまり理解しているとは言えない。

重役および中間管理層の双方でテクノロジーを導入するリーダーシップが欠けているため、メディア企業は誤った事業の決断を繰り返してしまう。テクノロジーが進化する一方で、長年に渡って、ビジネスを専門とする人達が「なぜ、そして、何を」構築するかを、そして、「どこに」配信するべきかを算定し、エンジニア達が「どのようにして、そして、いつ」提供することが出来るのかを解き明かすモデルが定着していった。優れたテクノロジー企業は、「なぜ」、「何を」、「どのようにして」、「いつ」、そして、「どこ」の間の壁を壊している。このタイプの企業では、ビジネスのエキスパートと同じようにテクノロジーのエキスパートにも発言する権利が認められているのだ。素晴らしいテクノロジー企業は、エンジニアと技術者を「裏方のオタク」扱いせず、エンジニアリングの才能が、直面するビジネスの課題にも適用可能であり、また、テクノロジーのイノベーションによって、今後の成功に向けて自らを破壊させることを理解している。

一方、メディア企業は、配信の管理を基に歴史的な強みに頼るのではなく、鍵としてテクノロジーを受け入れなければならない。 そのためには、優秀なエンジニアが必要である。問題は、優秀なエンジニアは二流のエンジニアの下では働かない点である。彼らは尊敬しない人達 – 特にビジネスの専門家による誤った命令には従わない。そして、多くのメディア企業は、既存のエンジニアリング組織を従来のITモデルの延長線として扱い、二流のエンジニアが – 組織全体に配置されていることがよく見受けられる。

繰り返すが、優秀なエンジニア達は、二流のエンジニアの下では働かない。要するに、既存のCTOおよびメディア企業のエンジアリングのインフラ全体ではこの問題を解決することは出来ないのだ。前に進む以前に、既存のテクノロジー組織が今後も外部で生まれた取り組みと戦い、妨げ、そして、破壊する可能性が高いことを経営陣は理解する必要がある。しかし、大きな変化がなければ、明るい未来は期待できない。

従来型のメディア企業は、グーグル、アマゾン、アップル、マイクロソフト、フェイスブック、そして、その他の無数のスタートアップと競うためには、ワールドクラスのエンジニアリング部門を構築しなければならない。 これはどうでもよいレベルの要件ではない。生き残るために欠かせない基礎である。従来型のメディア企業は前に進まなければならない。そのために、内部崩壊をうながす手段を見つける必要がある。

メディア企業は、内部に既存のIT部門から独立したスタートアップ組織を構築し、その他のチームのビジネスを破壊することを許す大胆な権限を認めるべきである。そして、大きなメディア企業の内部既存のグループとは距離を置く新たなテクノロジーベースのカルチャーを構築し、 企業の未来の担い手として内部のスタートアップを受け入れなければならない。 簡単なことではない。むしろ不可能に近いだろう。そして、初めて試した際は高い確率で失敗するだろう。しかし、この類の変化に力を入れなければ、メディア企業は食われてしまうだろう。

エリック・ピカード氏(@ericpicard)とアドエクスチェンジャー(@adexchanger)をツイッターでフォローしよう。

この記事は、AdExchangerに掲載された「Why Media Companies Are Being Eaten by Tech Companies」を翻訳した内容です。

メディア業界、メディア企業の未来を考える上で興味深い記事でした。10年後、20年後のコンテンツ流通とメディア業界を誰が牛耳っているのかはわかりませんが、記事にもあるように従来のメディア企業が勝ち残るにはそのテクノロジー部門を相当強化していく必要は確実にあるのでしょうね。そしてそこでチャレンジなのが優秀なエンジニアを確保することであり、会社の運命を左右しかねない重要要素であることもまた事実なのでしょう。優秀なエンジニアであればある程、メディアブランドに惹かれて入社するなんてことはないのでしょうし、メディア企業のトップがエンジニアリングをどこまで評価してくれるか、ということもあるでしょうし。。。かつて世界を制した日本のメーカーが上層部がハードウェアを重視すぎてソフトウェア志向のAppleやGoogle、Amazonにマーケットを思い切り取られてしまった限りなく最近の過去をも思いだしてしまいました。

さて、あなたはメディア業界(そもそもそんな業界が個別に存在するのかも?ですが)の未来はメディア企業とテクノロジー企業、どちらが支配していると思いますか?そして先を見越した上で、あなたは今、どの会社で働きたいでしょうか? — SEO Japan [G+]

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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