スタートアップが大企業との契約を勝ち取る方法、またはコンシューマライゼーションの現実

最終更新日:2024/02/18

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「コンシューマライゼーション」という言葉をご存じでしょうか?偉そうな出だしですが、私も実は知りませんでした 汗 色々解釈はあるようですが、IT分野に限ると、新しいITサービスや製品が、最初に一般消費者に受け入れられ、その結果、企業や政府に採用されていく現象を指すようです。SNSやブログはその代表例ともいえ、まさにネット時代を象徴するムーブメントの一つですが、その勢いに乗ってスタートアップが大手企業にネットで流行っている製品サービスをばしばし売り込んでいけるかと思いきや、、、米国トップレベルのIT投資家が法人営業の最先端?を語ります。 — SEO Japan

Meet the new boss
same as the old boss
– The Who, Won’t Get Fooled Again

Cause hustlers hit the block when police change shifts
New York, California different toilet, same s#@t
– The Game, Let Us Live

私は毎日、起業家、エンジェル投資家、ベンチャーキャピタリストから“企業のコンシューマライゼーション”と呼ばれるエキサイティングな新しい動きについて耳にしている。ロレックスを身に付けている昔のリッチな営業マンがいかに過去の産物であり、今後は、Twitterを手に取る消費者のように会社が積極的に企業向け製品を“消費する”と言うのだ。しかし、WorkDay、Apptio、Jive、Zuora、Clouderaのような最も成功を収めた新しい会社と話をすると、どの会社も、まさにロレックスの時計を身に付けている贅沢な人間を含む本格的で大規模な販売活動を採用している。実際、新世代モデルで始まったYammerのような企業は、より伝統的な企業の販売アプローチのない市場を経験した後、それに移行している。つまり、どういうことなのか?これらの賢い人々は正気でないのか?IBMの時代から何も変わっていないのか?いくつかのことは変化したが、その他のことは過去と全く同じなのだ。

導入の順番が変わった

20年前、テクノロジー導入のカーブは一般的に以下のような順に従っていた:

  1. 政府―特に防衛機関と諜報機関
  2. 企業―まずは大企業、その後で小企業が導入
  3. 消費者

今日、物事は完全に逆転した。最新テクノロジーはまずは消費者のところへと渡り、その後に消費者のように行動する小企業が続き、その後に大企業、その後に軍隊と続く。この素晴らしい逆転は、広範なインターネット導入による数多くの強い副作用の1つだ。

昔は(インターネット以前)、無料のテクノロジー製品はなかった。なぜなら、流通コストが、エンドユーザーから何の貢献もなしに何かを提供することを不可能にしていたからだ。その結果、新しいテクノロジー導入は、最も資金のあるポケット(軍隊)から始まり、最も資金のないポケット(消費者)へと一般化していったのだ。インターネットの導入によって、多くのテクノロジー製品が無料で流通することが可能になり、それによって一部無料もしくは完全無料のトライアル版が誕生した。面白いことに、今、導入の順番は、資金の豊富さよりも意思決定のスピードによって決まる。つまり、とても早く決断することができる消費者が最初で、複雑な意思決定プロセスを持つ軍隊が最後に導入するのだ。

最初、この逆転は企業に衝撃を与えた。私は、大企業のCIOの多くが、自分たちの会社で物事見つけるよりもGoogleを介してインターネットで物事を見つける方が簡単であることにショックを受けていたことを覚えている。私たちは、自分の同僚のスキルとバックグランドを知ることよりもLinkedInを介して全く見知らぬ人のバックグラウンド情報を得る方がずっと簡単であるというように最新の事柄でこの現象が何度も繰り返されるのを目にしてきた

新しいトレンドに後押しされて、革新的な起業家たちは、消費者が自分達自身を助ける素晴らしい製品を探すのと同じ方法で自分たちの雇用主を助けるための優れたソリューションを探す世界を想像する。想像上の企業では、これらの個人は、そのソリューションを購入するように同僚を説得するためにイニシアチブと取るようになる。この方法では、もし製品が本当に優れているなら、それを実際に売り込む必要性はほとんどないに等しくなるだろう。

実際の企業は少し異なって機能する。最近の法人顧客を見てみよう。昔の法人顧客によく似ているのだ。

最近の法人顧客

D8テクノロジーカンファレンスで、スティーブ・ジョブズが、法人顧客への売込みに関して陳述した。多くの人が見逃しているが、それは非常に洞察力があり啓発的だった:

“私たちは彼らよりも優れた製品を作りたいのだ。この市場に関して私が気に入っていることは、私たちが自分たちの製品を作り、それについて人々に伝え、もし彼らが気に入れば、私たちは明日出社するということだ。企業では、そうはならない…それらの決断をする人々は、時々混乱している”

企業の人間はなぜ混乱しているのか?なぜ彼らは、これらの複雑な販売プロセスを必要とせずに最高の製品をすぐに導入しないのか?

大企業はクレジットカードを持たない

大きな組織で何かを購入するには、最終的に注文(PO)するに至る厳密な正当化プロセスを要する。彼らは従業員が自分のクレジットカードを使ってインターネットからテクノロジーを購入することを許さない。実際、多くの企業では、そうすることやそれを後から必要経費で落とそうとすることは、解雇に値する違反なのだ。

もしあなたがスタートアップで働いているのなら、大きな組織が自分たちの従業員が賢い購入決定をすると信用しないのか不思議に思うかもしれない。もし従業員が新しいテクノロジーを必要とするなら、なぜ会社は彼に正しいことをさせないのだろうか?それにはたくさんの理由がある。

  1. 従業員は大企業という背景において相応しいことが何なのか知らないかもしれない。組織に人が多ければ多いほど、ニーズは多様化する。例えば、もし組織がソーシャルネットワーキングソフトウェア購入をする場合、これらのニーズを考慮に入れなければならない。
  2. 会社がすでにそのテクノロジーもしくは似たようなテクノロジーを所有しているかもしれない。もしあなたが100,000人と一緒に働いているのなら、他の99,999人が何をすでに購入したのかどうやって知るのだろう?EDSが私たちの顧客だった時、彼らは、数百もの製品を販売し継続して新製品を開発している(その多くはこの会社との特別なミーティングを介してのみ知ることができる)コンピュータ・アソシエイツに年間10億ドルの信用枠を持っていた。EDSの従業員は正式なプロセスなしにどうやってコンフリクトの可能性を知るというのか?
  3. 従業員が副次的な刺激に毒されるかもしれない―もし大組織の一従業員がレビューや適切なプロセスなしに大きな購入をすることができると、彼が販売会社の社員に毒される可能性は非常に高い。例えば、法人販売担当者が、1000万ドルの注文の代わりにネットワークエンジニアにポルシェを買い与えるかもしれないのだ。
  4. 公的企業は、サーベンス・オクスリー法の経費管理に従わなければならない。一般的に、会社がその経費管理を計画する時には、大きな支出をする前にそれを承認する手法を持っていなければならない。もし会社が従業員に大きな買い物をさせたり、従業員のクレジットカードに大きな購入をもたらす小さな買い物をさせれば、その購入は事前に承認されていなかったため、それは企業の財政管理に違反することになる。

これらの要因とその他の要因の結果として、大企業は、大きな購入が理にかなっていることを確実にするために複雑なプロセスを導入するのだ。これらのプロセスは一般的に、多くの異なる組織と利害関係者に及ぶ。購入決定に多くの異なるIT部門(例えば、開発、セキュリティ、オペレーション)とビジネス機能(例えば、ファイナンス、IT、リーガル)の人々を含むことは珍しくない。この決定には、多くの場合、技術的な意思決定者とリスク管理の意思決定者が関与する。

これらのプロセスはとても複雑で、それらがどう機能するかを知っている人は社内にほとんどいないことが多い。優秀な法人販売担当者は、自分たちの購入プロセスを介して会社を導くだろう。法人販売担当がいなければ、多くの会社は文字通り、新しいテクノロジー製品を購入する方法が分からないのだ。一流の法人担当の販売員は、自分の顧客のプロセスを顧客よりも知っているだけでなく、自分の製品の価値をそれぞれの意思決定者ごとに特徴化する技術を持っている。これは、製品のデモンストレーション、コンセプトの証明、投資に対する利得の完璧な分析、競争に勝てるポジショニングに関与する。販売担当者は、マネージメントチームが価値命題を描くのを手助けするために様々な構成要素と連携する。

大企業は自分たちの古い製品が好き

全ての大企業が共通して持っている1つのことは、彼らが長い間にわたって大量のテクノロジーを購入してきたということだ。実際、これらのテクノロジーの多くは、そもそも会社が大きくなることを可能にした。当然、このテクノロジーは、時代によって大きく変化する企業に導入された。このシステムの一部は、時代遅れで、複雑で、紛れもなく不可解だ。それにもかかわらず、一度導入されると、企業は、自分たちの会社を運営するそのテクノロジーに対する大きな愛を育てる。彼らはそれに関して文句を言うかもしれないが、夫について話す年老いた女性のように、根底にある愛は批判よりもずっと強いのだ。そして、大企業は、あなたもその古い製品を統合することによってそれを愛することを期待する。

しかし、どの古いシステムは統合する必要があり、どのシステムは無視してもいいのかをどうやってあなたは知ればいいのだろうか?企業の中の大部分のことのように、それは複雑だ。優れた法人販売担当は、無数の既存のシステムを選り分けて、会社が必要不可欠ないくつかのものを見つけるまで案内する手助けをする。

大企業の人々は生きるために働く

もしあなたがテクノロジー業界で働いていて、特にシリコンバレーにいる場合、会社を成長させるために休むことなく働く従業員に慣れている。これらの従業員の1人が個別に新しいテクノロジーを見つけて、自分の会社を良くしたいという理由から会社内でそれを擁護するのは想像し難くない。テクノロジーを除いて、特に超大企業では、人々は一般的にそのようなことはしない。大部分の大企業の従業員は、自分の定められた仕事の範囲内に留まることを好む。もしも自分の雇用主の効率性を潜在的に進歩させるか、8歳の息子のバスケットボールの試合を見るために家に帰るかを選ばなければならない場合、決断をするのは難しくない。その結果、彼らに何の助けもなくあなたの製品を導入することを期待するのは、おそらく良い考えではない。

最後に

もしあなたが消費者や消費者のように行動する企業に売り込んでいるのなら、古いチャンネルモデルを避けることは全く理にかなっているかもしれない。しかしながら、もしあなたが大企業に売り込む計画をしているのなら、新しいボスも古いボスと同じであるということを頭に入れておこう。


この記事は、Ben’s Blogに掲載された「Meet the New Enterprise Customer, He’s a Lot Like the Old Enterprise Customer
」を翻訳した内容です。

日本に比べてはるかに大企業がスタートアップやベンチャーのサービスを積極的に活用する米国でさえ、こういう話がまだまだリアルな現場の話なんですよね。実際、PinterestやInstagram、それこそFacebookやブログまでウェブサービスを活用している大企業も一部を除いて限られているのも事実なわけで。

とはいえ、導入を実践している大企業もまたあるわけで、スタートアップやベンチャーが大口の法人契約を取りたければ営業手法もまた彼らの行動や考え方を理解した上で、適切なアプローチすればそれも可能かもしれません。シリコンバレー界隈やスタートアップ企業の「仕事が人生」「効率性追求」「即断即決」とはまた違う思想なわけですが、この記事はある種そういったベンチャーの支援者である筆者が、大手法人営業の際に意識すべきことを優しくまとめてくれた応援記事のような内容でした。 — SEO Japan [G+]

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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