ソーシャルマーケティングの現状 2011-2012年

公開日:2012/01/04

最終更新日:2024/02/17

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2012年を迎えるにあたり、ブライアン・ソリスからソーシャルマーケティングの現在を昨年後半に行われた有名ソーシャルイベントで行われた様々なアンケート調査を元に語り尽くした記事を。ソーシャルカスタマーからゲーミフィケーション、ソーシャルマーケティングの予算まで内容は幅広く文量も長いですが、調査結果ごとに話を進めておりソリスにしては読みやすい内容です。企業マーケッターであれば確実に読んで米国最先端の企業マーケッターのソーシャルマーケティングの活用状況を理解しておきたい。 — SEO Japan

これから紹介するレポートは、ピボットカンファレンスのまとめである(2012年のピボットカンファレンスは10月15-16日にニューヨークで開催されることが決定している)。このレポートの全文をダウンロードしたいなら、ここをクリックしよう。

2011年も終わりに近づきつつあるが、そんな中、ソーシャルマーケティングは大事な岐路に立っている。一部の企業がようやくソーシャルネットワークの重要性を受け入れ、その結果、創造的な交流、マーケティング、そして、サービスプログラムへの投資を増やしている。しかし、今後に対する価値は認めているものの、実行の面で後れを取っている企業もある。ソーシャルビジネスは最前線で発見の好循環をもたらしている。このような企業のソーシャルマーケティングにおける成功によって、新しいデータが導き出され、見解が生まれ、そして、新しく、より効果の見込めるプログラム、さらには内部および外部のコラボレーションを改善するために必要なビジネスのシステムとプロセスがもたらされる。

2012年、イノベーションによって動くソーシャルメディアマーケティングは、さらに成熟化していく。ソーシャルで本当に成功する取り組みとして、ボトムアップの学習が、ソーシャルメディアマーケティングの拡大において重要になるだろう。2011年にIBMが実施した調査では、例えば、ソーシャルメディアで応援しているビジネスへの消費者の期待と、当該のビジネスの経営陣が考える消費者の望みとの間にはギャップが存在することが明らかになっている。このIBMの調査によって定義されている“認識の差”は、通常のモノローグのマーケティング経路に縛られた従来型のトップダウンの戦略ではなく、ボトムアップの情報に基づくソーシャルマーケティングプログラムの重要性を立証している。

顧客はそれぞれ異なる。そのため、台頭するソーシャルチャンネルを通して、顧客に接触し、そして、交流するアプローチが複数存在する点を今企業は学んでいる。

今年の第2回ピボットカンファレンスでは、ソーシャルコンシューマーの出現を反映する、進化する消費者主義の状況を探った。ブランド、エージェンシー、学識者、そして、専門家達が、ソーシャルコンシューマーが情報を探し、共有する仕組み、交流に影響を与える仕組み、交流から影響を受ける仕組み、そして、決定を下す仕組みを精査した。その結果、ソーシャルコンシューマーは基本的に従来型のコンシューマーとは異なるため、ソーシャルネットワーク、放送ネットワーク、そして、モバイルネットワークにまたがる販売戦略、サービス戦略、そして、マーケティング戦略をブランドは見直さなければならないことが明らかになった。ソーシャルコンストラクト(ソーシャルな構造)への企業の重要性は争点となっており、これは消費者とのつながり、そして、成功への新たな糸口と見込まれている。現在、ブランドがこのつながりを確立することが出来ない場合、ソーシャルコンシューマー達は、ブランドの関与がない状態で、自ら結びつき、コラボレーションを始めてしまう。

2012年以降、ブランドが顧客の交流および経験を改善するための計画を効率的に立案することが出来るように、ピボットはザ・ハドソングループの協力を得て、ブランドマネージャー、エージェンシーの有識者、そして、エキスパートで構成される合計181人の専門家に対して調査を行った。参加者の答えを見ると、ビジネスがソーシャルコンシューマーに接触しようとする意図が浮かび上がってくる。また、この結果は、ソーシャルビジネスのリーダーとして、来年の戦略を立案する上でベンチマークとして利用することも出来る。

ソーシャルコンシューマーの台頭

それでは、ソーシャルコンシューマーとは一体誰を指し、通常のコンシューマー(消費者)と何が異なるのだろうか?まずは定義付けしていこう。ソーシャルコンシューマーは、関連するソーシャルネットワークにまずアクセスし、製品やサービスについて学ぶ消費者を指す。ソーシャルグラフ全体からやや影響を受けるものの、ソーシャルコンシューマーは、インタレストグラフ – つまり、何かしらのトピックにおいて同じような考えを持ち、共通する関心事や経験を共有する個人の情報を重視する。このようにして、ソーシャルコンシューマーは、信頼する人達が共有した経験を評価し、企業がソーシャル化された疑問に答えてくれると期待する。その結果、ソーシャルコンシューマーは、決定を下すプロセスにおいて、従来型の‘意図に興味を合わせる’経路を介した直線的なアプローチには従わなくなる。それよりも、次のステップが他の人達の見解によって影響を受ける曖昧なパターンを採用し、今度はその経験を、他の人達が決定を下す際の情報として、サイクルにフィードバックされる。

エンド・オブ・ビジネス・アズ・ユージュアル(従来型のビジネスの終焉)の14章から転載

ピボットの調査で、私達は参加者に対して、それぞれのソーシャルコンシューマーが誰なのかハッキリ分かっているのか尋ねた。すると、驚くことに77%がイエスと答えていた。

この結果を、上述した定義と比べ、今同じ質問をしたら、どのような数字が出ていたのか気になるところだ。この定義、そして、IBMの認識の差の概念は参加者には提示されていなかった。これから紹介する結果を考慮すると、回答者達はたとえ実際には込み入った会話は交していないものの、ソーシャルコンシューマーが誰なのか心得ていたように思える。

ビボットが、参加者が所属する企業は、ソーシャルコンシューマーに交流から何を期待しているのか尋ねているかどうかについて具体的に問うと、大半は「ノー」と答えていた。ソーシャルコンシューマーが何を求めているのか把握していると答えた参加者は77%であったものの、実際には尋ねていない企業が55%を占めていたため、とても興味深い結果である。彼らは、ソーシャルネットワークおよびモバイルネットワークで価値を与える方法を把握していない – 把握することが出来ない – ため、IBMが指摘した認識の差が生まれるのだ。一方、35%はソーシャルコンシューマーに何を期待しているのか実際に尋ねたと答えている。彼らが所属する企業は、尋ねなかった企業よりも優れたパフォーマンスを見せている可能性が高いと私達は考えている。

この調査への回答の中で、ソーシャルな交流のメリットと顧客の期待に関する見解が提示されていた。広範な販売、サービス、そして、マーケティングのメリットがリストアップされ、トップ3には、カスタマーサービス、決定を下すための情報、そして、新しい製品について学ぶ力が挙げられていた。取引と見返りはそれぞれ5位、6位につけていた。しかし、順位に関わらず全てのメリットが重要である。他では手に入らない限定のコンテンツの提供、改善するためのフィードバックをもらう力、そして、ソーシャルコマースが、ソーシャルコンシューマーの様々なニーズに接触し、交流を深める複雑な取り組みに加わる。マーケッターには個別の構造だけではなく、全体像を見てもらいたい。

ソーシャルコンシューマーの性別について尋ねる質問では、参加者は男女比は同じだと答えている。この結果には様々な理由で好奇心を掻き立てられた。特に、フェイスブックやツイッター等の大半のソーシャルネットワーク、そして、ソーシャルコマースサイトでは女性の割合が高いことが以前の調査で判明しているためだ。ソーシャルネットワークを利用する男性が増えているのだろうか?その可能性はある。

ソーシャルコンシューマーの層をさらに詳しく調べていくと、30代または40代が多い点が示唆されていた。しかし、26-30歳、46-50歳、そして、51-55歳の年齢層の多さも色濃く見られる。ソーシャルは若者だけの領域ではなくなったことは間違ない。

ソーシャルコンシューマーの世帯収入はバラバラである。しかし、ソーシャルコンシューマーは理想的な収入を得ているグループに属している傾向が全体的に見られる。調査結果で明らかになった収入の平均は$6万ドル強であった

ソーシャルコンジューマが頻繁にアクセスしているネットワークを問うと、フェイスブック、ツイッター、そして、リンクトインの名前が順に挙げられた。フェイスブックとツイッターは、事実上ユビキタスと見られている。この調査が行われた時点では、グーグル+はブランドページを導入していなかったが、2011年11月の時点で、企業は公式のブランドページを開設することが可能である。しかし、調査期間中にはビジネスページを作ることが出来なかったにも関わらず、企業はグーグル+がソーシャルコンシューマーの生活において持つ重要な役割を理解していた。

ソーシャルコンシューマーの間で徐々に一般化しつつあるモバイルのアクティビティに関して、フェイスブックとツイッターが1位と2位の座を守っている。しかし、フォースクエアがリンクトインを抜いて3位に浮上しており、ジオロケーションネットワークの人気が引き続き上がっていることを示唆している。

台頭するゲーム

ゲーミフィケーション、そして、ロイヤルティプログラムが、ソーシャルコンシューマーに支持され、ソーシャルネットワーキングの一部となりつつある。

現在、ゲームに関して言えば、ソーシャルコンシューマーの時間と注目をジンガがほぼ独占している。恐らく、フェイスブックの現在の独占状態が反映されているのだろう。ここで興味深いのは、「other」(その他)がジンガに続いて多い点であり、この分野の多様性を示している。

ソーシャルメディアの専門家達は、人気の高いスマートフォンのプラットフォームで提供されている多くのポータブルな写真のネットワークの中で飛び抜けた存在は見られないと指摘している。25%を獲得したサービスは一つもなかった。ヒップスタマティックはリストのトップを確保しており、2番目につけるデイリーブースのほぼ倍の票を獲得していた。競争は激化する模様だ。

ソーシャルおよびグループベースの取引を行うサービスに関しては、グルーポンがソーシャルコンシューマーの間で最も人気が高いが、リビングソーシャルも2位につけて、確固たる地盤を築いている。3位にはフェイスブックディールズがランクインしているが、このサービスは既にフェイスブックによって閉鎖されている。

「4ヵ月間に渡ってディールズを試した結果、数週間以内にこの製品を終了する」とフェイスブックは、2011年8月に投稿されたロイターの記事で声明を発表していた。この時期、調査は既に開始されていた。

交流は会話で決まるわけではない。交流とは、消費者、そして、消費者の関連するネットワーク内で、会話、コンテンツ、または関連する情報を組み合わせてやり取りを行う企業やブランドの行為である。 交流は、持ち帰ることが出来る価値、感情、そして、対話に続く行動によって計測される。この点はとても重要である。

基本的にブランドは、ソーシャルネットワーク内の会話だけが、意義深い成果を生むと言う考えには異を唱える。しかし、本当に大事なのは、成果が明確に示されているかどうか、そして、理想的なクリックの通り道に導入されているかがどうかである。その一方、ブランドにコンバージョンおよび関連性をもたらす上で、会話が役に立つとブランドは完全に、もしくは大筋認めており、それぞれ51%、45.5%が賛意を示している。

しかし、ブランドが、ソーシャルコンシューマーがソーシャルなつながりの代わりに実体のある価値を求めていると思うかどうかに関しては、大きな違いがみられた。21.6%が完全に同意する、そして、45%は大筋は合意すると答えていたが、26%は大筋合意しない、6%は全く同意しないを選んでいた。分からないなら尋ねてみることを私達は薦める。

ソーシャルメディアに関する派手な宣伝を考慮すると、新しいマーケティングの枠組みに所属する人達は、ソーシャルメディアは2012年に向けて既に、または今後企業の世界でメジャー化すると考えていると推測したくなる。しかし、調査参加者達の見解は分かれていた。50%強は、ソーシャルマーケティングは既に企業の中でメジャーな存在と化しており、残りの回答者達は、ソーシャルマーケティングは今後1年間も引き続き実験的な枠組みで行われると考えている。私達がソーシャルエボリューション(進化)の真っただ中にいることがこの結果に現れている。変化していると言う現実は幅広く受け入れられているが、基本的な課題に関する基準に関しては、いまだに理解されていない。新しい場所に向かっていることは把握しているが、その場所がどこなのか、そして、どれぐらいの速さで向かっているのか分かっていないのだ。

ソーシャルマーケティングで実験段階から前進するのを何が阻んでいるのか尋ねると、様々な要因が挙げられた。予算、そして、明白な成果を明示することが出来ない、もしくは計測することが出来ない点が問題として見られているようだ。どのような見方をしていようとも、これらのポイントは組織内で調査を行い、明確にする価値はあると私達は考えている。ソーシャルコンシューマーのニーズを確実に満たすには、避けられない道である。成功を収めている戦略と理解可能なメリットは、組織全体、特に経営陣から支援を得る上で、欠かせない。思慮に富む戦略に明確なメトリクスを結びつけることで、前進を証明することが出来る。データは常に – マーケティングを越え – ソーシャルコンシューマーの様々なニーズにスポットライトを当てており、情報収集とリサーチを実行することで、職務上の枠を越えたアプローチが明らかになるだろう。

現在、混乱が生じているが、確信に変わろうとしている。2013年は、参加者の大部分が、ソーシャルマーケティングが実験的な段階を脱したと考えるような年になるだろう。それでも、ソーシャルの展開における現在の不安な気持ちを垣間見ることが出来る。企業のソーシャルマーケティングの飛躍的進歩が起きる年を15%は2014年、そして、15%は2015年以降と、さらには、なんと35%が何を考えればいいのか分からないと答えているのだ。

ソーシャルマーケティングは比較的早い段階で組織内でメジャー化すると考えている一方で、参加者の大多数に当たる89%がソーシャルマーケティングを永久的な一連の実験と見なしていることが判明した。しばらくの間は、マーケティングのエキスパート達は、ソーシャルコンシューマー、そして、効率よく交流を行い、前向きな経験と成果をソーシャルマーケッターにもたらす方法に関して、まだまだ学ぶことがたくさんあると感じているようだ。ソーシャルが一つの分野でメジャー化すると、別の分野で実験を行う取り組みが行われるようになるだろう。

ソーシャルメディアへの予算に関しては前向きなトレンドが見られる。ソーシャルメディアへの投資が予算の5%を下回ると答えた回答者は2011年から2013年の間に約半分ほど減り、50%を超えると答えた参加者は倍に増加している。予算の約25%が最適と見られており、若干今後の2年間で増えていくようだ。ソーシャルの組織内での展開は始まったばかりのようだ。

2012年を見据え、ブランドは来年のソーシャルマーケティングプログラムを立案する中で、目標について熟慮している。ほぼ100%を記録し、1番多かったのは、売り上げを増やす必要があると言う答えであった。これは、マーケッター達が目に見えるROIを立証しなければいけない状況を反映している。消費者との交流、リードの生成、そして、コンバージョンもまた上位にリストアップされていた。参加者の反応の中で、60%を少し超えた「消費者の行動に影響を与える」、60%を若干下回る「影響のポイントを確立する」、そして、40%の「関連性のポイントを発見する」は、新しい接点が求める成果と経験をもたらす上で役割を担っている点を浮き彫りにしており、目立っていた。全体的な反応は、“ソフト”なメリットから、収益を改善する現実的なメリットに傾いているようだ。

意外にも、カスタマーサービスおよびサポートの改善は下位に甘んじていた。しかし、企業がカスタマーサービスの改善を2012年の計画の前半に含めていることが調査結果には出ている。私達は、カスタマーサービスをソーシャルネットワークにおいて今後躍進する分野として考えている。

方向転換する

最も重要なパートにこれから突入する。ソーシャルコンシューマーに接触し、ソーシャルメディアが組織全体に行き渡るようにするため、以下のリストを格付けされた評価としてではなく、一連の手順として見てもらいたい。それぞれのアイテムについて真剣に考えることで、ソーシャルコンシューマーに接触し、ポジティブな経験および成果を導き出すことが可能な思慮深いアプローチが生まれてくるだろう。予算とサポートは、以下の項目の行動をとることで、純粋にメリットを得ることが出来るだろう。

1. 組織内のソーシャルコンストラクト(ソーシャル構造)の理解度を高める。
2. ソーシャルに対して明確な戦略を策定する。
3. 成果を明確に示す。
4. 事業の目的に対して、戦略と戦略を支えるメトリクスを結びつける。
5. データを使い、ソーシャルコンシューマーの必要性を立証し、そして、現在、他社が優れた交流を行っている仕組みを説明し、経営陣の賛同を得る。
6. ソーシャルコンシューマーの様々なニーズが、組織の鍵を握る役割によって満たされていない点を説明し、部門全体から支持を得る。

紹介したデータを見直し、2012年の計画と比較しているなら、または計画を策定している段階なら、同僚同士で基準に従って評価する取り組みは、プロセスの一部に過ぎない点を肝に銘じてもらいたい。ソーシャルコンシューマーのニーズを特定し、そのニーズを自分の企業のソリューションと比較して評価することで、ソーシャルコンシューマーが提示する本当の機会、つまり、企業にとっての機会を得られるのだ。、

イメージ: Shutterstock


この記事は、Brian Solisに掲載された「The State of Social Marketing 2011-2012」を翻訳した内容です。

企業マーケッターに対して行われた調査が元になっており、日本の企業マーケッターの方には特に興味深く読める内容だとは思うのですが、やはり最初に出てきた「企業がソーシャルで行いたいこと」と「ユーザーがソーシャルで企業に求めていること」のギャップは気になりますよね。

取り上げられているIBMの報告は私も知らなかったのですが、リンク先に詳細資料がありますが、とりあえず数枚のサマリー(実質ペラ1の比較表)には目を通しておくべきかと。記事でもソーシャル戦略のプランニング手法について書かれていましたが、このユーザーが何を求めているのか?という視点を念頭に置いて考えたい所です。 — SEO Japan

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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