ロケーションターゲティングの現在

最終更新日:2024/03/11

ブログ

【メールマガジンのご案内】

SEOに役立つ記事の更新やセミナーのご案内をメールマガジンで行っております。
ぜひご登録ください。

メールマガジンに登録する>>

FourSquareのブームと共に日本でも一時大きな話題となったロケーションターゲティング。次世代広告ビジネスへの大きな可能性も含めて、関連サービスも日米共に多数リリースされましたが、FourSquareも含めて思った程のムーブメントまでには至ってない模様。今回はそんなロケーションターゲティングの現状について振り返った記事をAdExchangerから。 — SEO Japan

メディア業界のメンバーが綴る「データ・ドリブン・シンキング」は、メディアにおけるデジタル革命に関して新鮮なアイデアを提供するコラムである。

本日のコラムを担当したのは、Placed(プレイスト)のCEO デビッド・シム氏である。

ロケーションベースのターゲティングのポテンシャルを理解しつつある企業は多いが、業界全体としては、見解と現実の間にはギャップが存在すると言わざるを得ない。それでは、架空の人物ジェーンを例にとって考えてみよう:

ジェーンがスターバックスを通り過ぎようとすると、— プッシュ通知を受け、ドリンク一点につき10%オフのキャンペーンが行われていることに気づいた。その後、ジェーンはスターバックスに入店し、グランデサイズのラテを注文した。今後のモバイル広告はこのようになると見られている。現実の世界でユーザーに狙いを定め、行動を促すのだ。しかし、モバイル広告の現実は、今のところ若干異なる。

見解: ジェーンはスターバックスを通り過ぎる。
現実: ジェーンはスターバックスから100メートル以内を歩いており(フットボールのピッチと同じ長さ)、飲み物が10%オフになるクーポンの通知を受ける。現在のロケーションベースのターゲティングでは、ジェーンがスターバックスを通り過ぎようとしているところまで特定することは出来ず、通常はスターバックスから数ブロックの範囲にいることを突き止めるのが限界である。

見解: ジェーンは飲み物が10%オフになるクーポンの通知を受ける。
現実: ジェーンは(a)お店を通り過ぎる前にスターバックスやスターバックスと提携する企業からのプッシュ通知を受ける設定を行っていたか、(b)リアルタイムでロケーションを基に広告のターゲティングを行う機能を持つモバイルコンテンツを受け入れる設定を行っていることが条件である。

(a)に関して、ジェーンにこのようなケースで接触することが出来る企業は少ない。(b)においては、モバイルのリアルタイムビッディングは、携帯ネットワークのスピードが不安定なため、限界がある。モバイルデバイスで広告がローディングされる時間の平均時間が12秒である点を指摘した調査を先日アカマイ社が発表していた。これは、リアルタイムビッディングの意図とはかけ離れた現状である(本来ならば、ミリ秒単位で決定を下し、広告を提供しなければならない)。

見解: ジェーンはスターバックスに入店し、グランデのラテを購入する。
現実: 当該のスターバックスの前を通る前に、ジェーンは別の3つのスターバックスの前を通り過ぎている。その他の3つの店舗がコンバージョンの機会を逃している状況で、ジェーンをコンバートする試みに価値があるとは言い難い。

見解: ジェーンはプッシュ通知によってスターバックスへ向かう。
現実: ジェーンはスターバックスに行く予定であり、既にスターバックスの常連であるジェーンにプッシュ通知でディスカウントを伝える行為は不要である。

このジェーンとスターバックスの事例は、ロケーションベースの広告のターゲティングに関して、見解と現実の違いを明らかにしている。見解が現実になる可能性はゼロではないが、現在のロケーションテクノロジーを活用するには、技術的に何が可能なのか、そして、それに付随する価値を評価する必要がある。この事例には例外もあるが、限られている。

モバイルアプリとコンテンツ

オンライン広告ネットワークは、当初、今後のポテンシャルではなく、当時の限界を優先していた。要するに、パブリッシャーレベルで細かい情報を明かすのではなく サイトをカテゴリーにまとめ、CTRでキャンペーンを最適化していたのだ。全てのパブッリシャーを介して拡大可能な広告の利用が不可能であったため、サードパーティーアドサービング(ウェブサイトに広告をプッシュし、スポンサーが広告のパフォーマンスを計測することが可能な技術)がより広い範囲で利用することが出来るようになるのを待ち、バナー内のリッチメディアを売ることは出来なかった。こういった広告ネットワークは、現時点で費やす必要のある資金を持っていた。そのため、今後の見込みにかけることは広告資金の流通を遅らせるだけであり、現実的ではない期待をさせてクライアントをがっかりさせてしまうことを理解していた。

オンライン広告ネットワークの当初の教訓を活かし、モバイルはCPMのギャップを埋めることが可能であり、モバイルのインベントリはデスクトップのインベントリの20%に設定されている。モバイルの違い – つまりロケーション – を現実的に活用する上での第一歩が、このモバイルならではの特徴を数値化する取り組みである。国ごと、州ごと、そして、市ごとでジオターゲティングを実施する取り組みは、モバイルでもデスクトップでも可能である。しかし、モバイルでは、ロケーションのラストワンマイルを特定することが出来る。そのため、モバイルは、ロケーションを近所に当てはめることも、ビジネスのカテゴリーに当てはめることも、そして、個別の店頭に当てはめることも可能である。今でもロケーションベースのターゲティングは難点を抱えているかもしれないが、このポテンシャルを開放するためには、まずはユーザーが現在モバイルコンテンツを見ている状況を理解しなければならない。

ユーザーがコンテンツを吸収する際のレストラン、映画館、そして、スーパーへの距離を理解することで、場所の共通点に対する基準が見えてくる。この場所の基準を参考にすることで、パブリッシャーは近くの店、または、店のカテゴリーにおいて利用可能なインベントリを特定することが出来る。この在庫の基準を利用すれば、共通点を基にインベントリをパッケージ化(コンテンツカテゴリを売る広告ネットワークと同様に)することも、もしくは、より高度なターゲティングに対する機会を試すことも出来るようになる。オンライン広告ネットワークの以前の戦略を教訓とし、モバイルパブリッシャー達は、1:1のターゲティング(スターバックスの周囲10メートル以内でのプッシュ通知)を始める行為には慎重になるべきである。なぜなら、先程挙げたように様々な特有のリスクが付きまとうからだ。その代わりに、ロケーションベースのターゲティングにおいては、段階的なアプローチを取るべきである。

ロケーションのリターゲティングの現状の限界を理解し、利用可能なテクノロジーの範囲内で決定を下していれば、パブリッシャーもネットワークも場所の共通点を基にアプリとモバイルコンテンツをパッケージ化することで、ロケーションを収益化することが出来るだろう。このアプローチにより、大規模なマーケッター達は、ユーザーレベルでの販売ではなく、アグリゲートアプリのレベルでロケーションを売ることで、資金をモバイルに転換することが可能である。

モバイルマーケッター

インターネットにおいては、ほとんどのマーケティングの取り組みは数値化することが出来る。バナー広告は、サードパーティーアドサービングを用いて、インプレッション、クリック、そして、コンバージョンを計測することが出来る。有料検索は、最大の入札額、CPS、マッチタイプ、インベトリのソース、コンバージョン、そして、ROAS(広告費用対効果)を計測するプラットフォームを使って最適化されている。その上、ソーシャルメディア、eメール等は、広告の取り組みを数値化する能力を持っているため、多額の資金が投じられている。

モバイルにおいては、このレベルの数値化はまだ達成されていない。最近になるまで、ロケーションの計測は、国、州、そして、市ごとのユーザーの人数に限定されていたほどだ。となると、モバイル広告に資金を投じるべきではないのだろうか?と考えたくなるかもしれない。そういうことではない。確かに、バナーや有料検索ほどのミクロレベルの数値化は実現していないものの、マクロレベルの機会は存在するのだ。

マクロレベルの計測を行うには、現在、そして、今後の顧客が現実の世界で行うアクティビティを理解する必要がある。この計測は、ロケーションベースの広告を見て貰う前に、ロケーションに対する現実の世界の好みの基準を確立する上で欠かせない。ロケーションベースの広告キャンペーンが展開されるにつれ、マーケッター達は基準からの変更を分析して、変わりつつある行動においてキャンペーンが成功を収めているのかどうかを特定することが出来るようになる。つまり、全ての準備が整うのを端で待つのではなく、テクノロジーの範囲内で行動を起こし、前に進むべきである。

ロケーションベースの広告はまだ未熟な段階ではあるものの、パブリッシャーおよびマーケッターが実施することが可能な、そして、実施するべきステップが存在するので見逃さないでもらいたい。こういったステップを実施することで、利用可能なテクノロジーの範囲内でロケーションベースのターゲティングを数値化および収益化することが可能になる。このカテゴリーを拡大させるためには、パブリッシャーおよびマーケッターは現時点で使えるテクノロジーを介して、アーリアダプターが成功を収めるジンクスを活かし、ロケーションに継続的に投資していく必要がある。その結果、エコシステム全体は大きくなっていくはずだ。

ツイッターでデビッド・シム氏(@davidshim)とアドエクスチェンジャー(@adexchanger.com)をフォローしよう。

この記事は、AdExchangerに掲載された「Location Targeting: Perception And Reality」を翻訳した内容です。

ロケーションターゲティングの現状をわかりやすく説明してくれた良記事でした。最初のシナリオベースの説明は特にわかりやすかったですね。「本来ロケーションベースマーケティングでやりたいこと」とは技術的にもまだまだ限界があるのでしょうし、ユーザー心理や行動をマーケティング側が完全に理解して適切にアプローチできているかというと、それもまだまだ乖離があるのでしょう。

とはいえ、空前のスマホブームでロケーションターゲティングの可能性は今後ますます伸びていくでしょうし、技術的な問題もいずれは解決されていくとは思います(何年先かはわかりませんが)。今あるサービスが今後デフォルトとして生き残れる保証は全くありませんが、ロケーションターゲティングの世界、技術レベルでもサービスレベルでも、これからまだまだ数多くのイノベーションが起こりそうですね。 — SEO Japan [G+]

記事キーワード

  • Facebook
  • X
  • はてなブックマーク
  • pocket
  • LINE
  • URLをコピー
    URLをコピーしました!

編集者情報

  • X
  • Facebook

アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

メディアTOPに戻る

RECRUIT

一緒に働く人が大事な今の時代だからこそ、実力のある会社で力をつけてほしい。
自分を成長させたい人、新しいチャレンジが好きな人は、いつでも歓迎します。