未来のEvernoteは記憶装置からタイムマシンへ進化する?

最終更新日:2024/02/17

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日本でも大人気のエバーノート。今回はエバーノートの歴史と現状を振り返りつつ未来の可能性についてまで言及したエバーノートファンのあなたにはたまらない記事をThe Next Webから。 — SEO Japan

どんな人にエバーノートは役に立つのだろうか?コンピュータ、スマートフォン、またはタブレットを使うものの、記憶力に自信がない人にとって、エバーノートはうってつけのサービスである。また、厚紙で裏打ちされたノートを愛するテクノロジーが嫌いな人でもライブスクライブを使ってエバーノートを利用することが出来る。

神父がエバーノートを使って毎週行われる説教を作成している一方では、誰かが一週間に行った過ちを記録するためにエバーノートを使う。外傷性脳損傷を負った元軍人が全てを記憶にとどめるために毎日エバーノートを使い、同じような障害を持った別の退役軍人にその方法を披露する。ミュージシャンはエバーノートを使って作曲を行い、オーディオレコーディング機能を使ってメロディーの一部分を記録し、歌詞を書き、スケッチを行う。美容師はエバーノートを使って、クライアントのヘアスタイルのビフォア & アフターのカタログを作成する。髪の毛を切っている間、美容師はiPadで様々なヘアスタイルを客に見てもらう。日本の天麩羅専門店の板前はエバーノートを使ってレシピ、そして、最高の出来栄えの作品の写真を全て保存している。ある夫人はエバーノートを使って、仕事から旦那が帰宅する前に、伝えたいことを全てまとめている。ピアノの先生はオーディオノートを使って、生徒のピアノの演奏をレコーディングし、その後、生徒の親に演奏を共有ノートで聞かせている。

学生は授業をノートに取り、先生は授業の計画を立てている。買い物客は買い物リストを作り、旅行者は旅程やアルバムを作成している。記者は記事を作成している。可能性は無限大であり、エバーノートのプラットフォームが成長を続ける中、その利用方法も進化している。外部のブレインとして1350万人に利用されているこの製品は、近い将来、時間を遡るポータルになるかもしれない。このパラレルリアリティに関しては、後ほど取り上げる。

先日行われたライフハッカーの投票調査で、エバーノートは最も人気の高いメモ取りアプリとして1位を獲得しており、鉛筆/ペンと紙、マイクロソフト社のワンノートスプリングパッド、そして、シンプルノートをリードしていた。エバーノートは現在毎月120万人のユーザーを新たに獲得するペースで成長しており、平均で1日に4万人が登録しいる。実にマディソンスクエアガーデンのキャパの2倍である。

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今後も無料でエバーノートを利用することが可能だが、1350万人のユーザーのうち60万人は有料サービスを利用している。これは無料サービスの利用者の4.5%に相当する。5ドル/月または45ドル/年を支払う価値のある様々な有料機能が提供されているが(高度なコラボ機能、用途が広がる機能、月に1GBまでアップロード可能な権利)、エバーノートのファウンダーであり、CEOを務めるフィル・リービン氏は、有料版に切り換える最も大きなきっかけは、このシステムを利用する期間だと考えている。無料でフル機能版を利用することも可能ではあるが、リービン氏は、生活や思い出を保存していくうちに、より貴重な存在になっていくため、お金を払いたいと言う気持ちになると推測しているようだ。

「コンバージョン率はあまり気にしていない。」とリービン氏は述べている。「1%でも損はしない仕組みになっている。100万人に有料機能を利用してもらうことが目標なら、1億人に無料の機能を使って欲しい。コンバージョン率は5%以下に留めておきたい。なぜなら、最高の無料の製品を提示しているとは言えなくなるからだ。」

現在、エバーノートは、100%近い長期的なユーザーの保持率を誇っている。3月に行われたSXSWのプレゼンで、リービン氏は、希少経済後においては、愛が主な推進力となり、企業の価値を決めるのは、人々がどれだけ製品を愛しているかによると語っていた。自分だけのノートであっても、思い出、そして、作品をエバーノートに保存していくにつれ、特に大きな自分だけの価値を与えていくにつれ、思い入れは深まる一方である。これ以上の完璧なビジネスモデルは存在しない。

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リービン氏(上の写真)はブロンクスで生まれ育ち、計算機付きの腕時計を持つおたく丸出しの少年であった。ボストン大学に入学後、政府のセキュリティソフトウェアを作る会社を始めた。「しかし、大勢の人達が目を覚まし、興奮するような何かを作りたかった。」と同氏は回想している。「人間の記憶は世界共通である。自分の脳に満足している人はいない。そのため、この点を意識した製品を作ることに決めた。」 2007年の夏、リービン氏は2つのチームのソフトウェアエンジニアを組み合わせて、エバーノートを作った。2008年にベータ版を開放した。ロゴについて不思議に思っている人もいるだろう。これは「象は決して忘れない」と言う有名な言い伝えに起因している。

当初、事業を撤退せざるを得ない状況が続いていた。しかし、スウェーデンのユーザーから、この製品をとても気に入り、会社が資金を必要としているなら喜んで支援すると言う内容のメモが届いたある晩から、状況が一変した。50万ドルの小切手によって、エバーノートは再び息を吹き返した。そして、2011年の7月、同社は、セコイアキャピタル社やその他のベンチャーキャピタル機関によって行われたシリーズ D投資により5000万ドルの資金を獲得し、合計で資金は8700万ドルに達した。リービン氏は、ロイターに、IPOは不可避だが、市場を焦ってテストするつもりはないと語っている。同氏によると、市場の状況が現在と変わらない場合は、2013年にIPOに踏み切るようだ。

エバーノートのコストで一番大きいのは給与であり、その次に大きいのは運営費である。この運営費には、カリフォルニア州にある数千台のサーバー、そして、社内のチームが常駐する巨大なデータセンターのコストが含まれている。データのセキュリティを強化するため、エバーノートは異なる場所にバックアップのサーバーを用意し、そして、クラウドに加えて、全てのエバーノートのデータはコンピュータや携帯電話にローカルで保存される。

現在、チームを増やすことが課題になっている。今週、エバーノートは101人目の従業員を雇用した。マウンテンビューの本社には70名のスタッフが働いており、年末には、オースティンのスタジオは12名のスタッフを抱える予定である。エバーノートは東京とモスクワでもリクルートを行っており、シンガポール、スイス、そして、南米にもオフィスを開くつもりである。興味深いことに、エバーノートは非常に日本で人気が高く、同社に関する書籍が22冊出版されているほどだ。リービン氏は、今後、世界中の街に営業オフィスではなく、“エバーノート愛を広げる”ためのオフィスを開くつもりだと述べている。

「エバーノートの目標および焦点は、素晴らしい製品を作り上げることであり、だからこそ成功を収めているのだと私は思う。また、現在、この取り組みを認める動きが世界中で起きている。以前は、素晴らしい製品を作るだけでは成功することは出来なかった。配信そして広告が必要だったのだ。現在、アプリストア、フリーミアムモデル、そして、ソーシャルメディアが存在する。」とリービン氏は述べている。

プロダクトマーケッターのヴィマル・トリパシ氏はエバーノートについて、「ギークの時代がやって来た」と綴っている。「アプリストア + クラウドコンピューティング + オープンソース + フリーミアム = ギークの実力主義社会」となる。

Geek Meritocracy.jpg.scaled1000 520x204 The Future of Evernote: From memory machine to time machine

当然のように、グーグルやその他のお馴染みの企業がエバーノートの買収を試みてきた。しかし、リービン氏は「エバーノートは100年間に渡って続く会社」であると主張している。「撤退戦略を考案していないし、売るつもりもない。」8月にはエバーノートは買収戦略に乗り出し、オーストラリアベースのイメージ編集と注釈ツールを提供するスキッチを買収した。

「スキッチの重要度は非常に高い。私はスキッチをとても気に入っている。私達は何年も前から利用しており、また、スキッチは初めて買収した会社でもある。」とリービン氏は話している。「約1年前、エバーノートのオフィスでスキッチの関係者と話し合いの場を持った。当時、私達は買収のオファーを断ったばかりであった。この会議で私は「誰がエバーノートを買収するかについては話したくない。誰も私達を買収しないからだ。180度話を転換しよう。“私達はどの企業を買収するべきだろうか?”エバーノートにはスキッチが必要である。」

リービン氏によると、スキッチのエバーノートとの現在の統合は氷山の一角に過ぎないらしい。同氏はスキッチを原始人が棒を介して行うコミュニケーショの現代版であると位置づけている。「スキッチは注釈の作成、協力、そして、あらゆる類の作品に注目を集めることが出来るため、タッチデバイスにおける究極のコミュニケーションツール、そして、イテレーションツールと言える。」と同氏は主張している。今年、新しい、自立したオースティンのスタジオがスキッチの統合の主な拠点となるようだ。

様々意味で、まだエバートンにとって氷山の一角して見えていない。今後、エバートンのようなアプリは、意外な目的に役立つ可能性がある。例えば、電子書籍リーダーのキンドルは、緑色のボタンをタップして、エバーノートに文章の一部を容易に保存することが出来るかもしれない。もしくは、アルツハイマー病の患者が、エバーノートの使い方を学び、考えや感情を記録することも不可能ではないだろう。「エバーノートは、様々な用途で利用することが可能であり、自然に異なる分野に進出していくだろう。通常のシリコンバレーのテクノロジースタートアップの考え方とは異なるはずだ。」とリービン氏は述べている。

エバーノートはタイムトラベルやパラレルリアリティと関係があるのか考えているのではないだろうか? つまり、全ての有意義な思い出や重要な思い出を保存する場所 – それがエバーノートの基本的なアイデアである。このような思い出は、映画を見ている際、本を読んでいる際、そして、通常は何らかのメディアを視聴している際に最も印象が強く生じる傾向がある。思い出や経験を保管する上で貢献する以外にも、エバーノートは背景を思い出す取り組みにおいても貢献する。エバーノートを数年間利用しており、ある時点で、エバーノートで音楽を聴きながら日記をつけていた時期があったとしよう。数年後にこのノートを再び読み返していると、同じ曲の一部分が突然流れ、思い出の背景が走馬灯のように蘇ってくるのだ。

現在、デジタル版の自分の一部を記録するエバーノート、ランキーパー、フォースクエア、ツイッター、フォースクエア、そして、グーグル等のアプリを使うことで、“検査された生活”を私達は送っていると言える。しかし、プログラムがユーザーを追いかけ、電話機や腕に巻かれた青いボタンを押すだけで、外部の記憶 – フレーズ、曲の一部、天気、バイタルサイン、そして、特定の瞬間のムードを保存することが出来たらどうだろうか?データの収集、および、ソーシャルテクノロジーが反復を繰り返していったら(間違いなくそうなる)、この断片は総合的な方法でまとめられ、デジタルなアバターになるだろう。

保存した背景を基にした記憶を介して、過去を蘇らせることで(たとえデジタルであったとしても)、時間を遡り、デジタルなアバターを介して再び経験することが出来るのだ。確かに吸収することは多いかもしれない。しかし、1940年代に祖母にフェイスブックを説明する状況を想像してもらいたい。多くのことを吸収してもらわなければならないだろう。

次に100年後に時計を合わせてもらいたい。私は26歳でエバーノートを初めて利用した。今、126歳である。106歳の頃にプロバンスでバイク事故を起こし、20年間は寝たきりの状態が続いている。しかし、私の死後も、そして、永遠に、私の子供や孫は、マルチメディアの形式の記憶を追い、現在日記をつけている人達が想像することしか出来ない方法で私の人生を振り返ることが出来るかもしれない。

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いつか記憶を通じてタイムトラベルを行うことが出来るようになるのだろうか?そして、エバーノートは過去を遡るタイムマシンになるのだろうか?

リービン氏は、エバーノートが科学的な実験ではないことを強調している。あくまでも一般のオーディエンスに提供するテクノロジーである。そのため、しばらくはエバーノートは、豊かなマルチメディアの記憶の保管経験を提供する取り組みに励むだろう。また、リービン氏が「準SCIFI」と呼ぶ取り組みについてはエバーノートはあまり多くの情報を公開していないが、私はこのタイプのリサーチに携わっている専門家が誰か知っているのか尋ねてみた。すると同氏は「もちろん知っている。何しろ雇っているくらいだ。」と答えていた。

イメージ: Shutterstock/Bruce Rolff/Donovan van Staden

ライター紹介

コートニー・ボイド・マイアーズは、ザ・ネクスト・ウェブの特集記事編集者であり、ニューヨークとロンドンを拠点に活動している。ロボットに関する記事がキャリアの原点である。マグネット、そして、キンドルでの読書をこよなく愛している。フェイスブックグーグル+、そして、ツイッター @CBMで動向を追うことが出来る。


この記事は、The Next Webに掲載された「The Future of Evernote: From memory machine to time machine」を翻訳した内容です。

後半は少々妄想気味のようでもありましたが、面白く読めた記事でした。ちなみに昨年末の記事ですので若干統計情報が古いのはご容赦ください。しかしこの記事で一番驚いたのは、一度はつぶれそうになってスウェーデンの会社に助けてもらった事実です。それも2010年の12月なので1年少し前の話なんですよね。今では最近のウェブサービスで最も成功した企業にも数えられるエバーノート、スタートアップ&ネットの世界はまさに激動です。

ちなみに以前エバーノートのインフォグラフィックも作成しましたので興味ある方はどうぞ。 — SEO Japan

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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