iOS6でAppleとGoogleの核戦争が勃発?!

iOS6のリリースが大きな話題となっているAppleですが、Appleファンやサーチ業界を超えたレベルでiOS6はAppleのGoogleへの徹底抗戦宣言ではないか、という話がIT業界全体で盛り上がっているようです。今回はそんな噂の内幕をサーチエンジンランドのダニー・サリバンが詳細解説。 — SEO Japan

アップルが、リリース間近のiOS 6で、ついにグーグルに「核戦争」をしかけると言うが絶えない。今のところグーグル対アップルの核戦争は起きていない。事実、起こり得ない。それには理由がある。ただし、その一方で、アップルは遥かに規模の小さい、賢明な封じ込め戦略を着々と進めている。

グーグルとの核戦争

核戦争の例えは、スティーブ・ジョブズ氏の自伝(ウォルター・アイザックソン著)から引用した。ジョブズ氏はグーグルのアンドロイドOSに怒り心頭であり、アップルのアイデアを盗んだと2010年の初めにアイザックソン氏に語っていたほどだ:

私はアンドロイドを破壊する。なぜなら、アンドロイドはオリジナルではないからだ。この件に関しては、核戦争も辞さない。

ジョブズ氏はアンドロイドに対して核戦争を仕掛けるつもりだったかもしれないが、グーグルの検索製品に核戦争を挑むと言う意味ではなかった。昨年も説明したように、ジョブズ氏は、この発言を行った直後に、デフォルトの検索プロバイダーとして、グーグルとの検索契約を延長していた。マップに関する契約も延長していたのだ。

アップルとグーグルの契約に関しては比較的情報が少ない(消費者にはこの契約の中身を知る権利がある点を指摘した連邦取引委員会への書簡にも目を通しておいてもらいたい)。しかし、怒りが頂点に達していた時であっても、ジョブズ氏はグーグルに噛みつき、契約を反故にする行為を回避していた。

アップルがグーグルを見限ることが出来ない理由

消費者の選択肢を簡単には切り捨てることが出来なかったのだ。これはジョブズ氏がグーグルを捨てることが出来なかった理由の一つだと思える。

アップルユーザーがアップル製品をどれだけ愛していても、グーグルやグーグル検索等のグーグル製品を嫌っているわけではない。消費者による選択において、私達の多くは過激な変化を望んでいるわけではない。アップルとグーグルの“いずれかを選ぶ”のではなく、両社の最高の製品を選ぶことを望む人達が圧倒的に多い。アンドロイドを嫌う人達であってもグーグル検索を利用している。

なぜなら、グーグル検索が優れているためだ。世界中の多くの国々で最も多きなシェアを獲得しているのもグーグルであり、米国も例外ではない(中国、ロシア、韓国、そして、日本は例外)。グーグルは、消費者が調査を行う際に一貫して選択されている。ピューインターネットが先日実施した調査でもこの点は証明されている。

ジョブズ氏自身、グーグル検索を確保していたのだ。それでは、この核戦争の言及は何だったんだろうか?この発言の直後に次のようにジョブズ氏は話していた:

グーグルは罪の意識があるため、怯えているはずだ。検索を除くグーグルの製品 – アンドロイドにしかり、グーグルドキュメントにしかり – は最低だ。

グーグル製品を否定するジョブズ氏がグーグル検索を例外視した部分を強調した。

検索の選択肢をなぜ変えたのか?

アップルがグーグルの検索エンンジンをデフォルトの検索エンジンから外し、米国では唯一代わりを務めることが可能なマイクロソフトのビングを採用したと仮定しよう。すると何が起きるだろうか?まず、事実上、ライバルから別のライバルにすり替えただけである。そして、デバイスのユーザーを怒らせる重大なリスクを抱えることになるだろう。

2009年にベライゾンがマイクロソフトと契約を結び、デフォルトの検索エンジンに据えた件を思い出してもらいたい(その後、アンドロイドが適用を除外されていたことが判明していた)。ベライゾンがブラックベリーに対して変更を加え始めると、ユーザーによる激しい抗議に直面したのだ。

アップルがiOSのサファリのデフォルトの検索エンジンをビングに切り換えた場合、グーグルが消えたと勘違いしたユーザー達がパニックに陥る可能性が高い。デフォルトを変更することは可能である。しかし、競合を理由に挙げ、最高の検索エンジンをデフォルトとして選ばなかった訳を説明しなければならない気まずい状況にアップルは身を置かれることになるだろう。ユーザーのことを第一に考えた素晴らしい製品を世に出す企業として評価されているなら、このような状況に身を置かれるのは避けたいところだ。

だからと言って、グーグルが最高の検索エンジンだと言い切れるわけではない。このような適切度を評価する独自の調査が存在しない。グーグルは、アップルが戦わなければいけないライバル(そしてビングはこのライバルに苦戦している)であると言うイメージが消費者に浸透している。ビングをデフォルトに据えると、アップルが好むとは思えない問題が発生するだろう。さらに、検索の品質が改善されない場合は、アップルに批判の矛先が向けられる可能性もあるのだ。

核戦争ではなく、封じ込めを

冷戦の引用を引きずり出すなら、米国もソ連も核に手を出さなかった事実を強調しておきたい。お互いに脅威を認識していたため、両国は冷静さを維持していたが、アップルとグーグルの戦いで冷戦を引用するなら、“封じ込め”と言う用語の方が適切だと思える。

封じ込めを行うことで、米国は世界中の国々に社会主義が広がる事態を回避しようと試みたのであった。iOSにおけるアップルの戦略は、とりわけ消費者にメリットがある点を明確に示しつつ、妥当だと思えるポイントまでグーグル主義を抑え込むことである。

iPhone 4Sにシリが導入されたとき、私はアップルが“ベータ製品”を消費者に提供したと感じた(今もなおベータのままである)が、私の知る限り、このような行為は数回、もしくはシリで初めてである。しかし、アップル自身のデバイスでグーグルの封じ込めを始めることが出来たため、賢明な判断であったと言える。シリは、検索がどこに向かうのかを決める効果があり、必ずしもグーグルに向かうわけではなくなった(ちなみにグーグルとアップルの契約では、グーグルが音声検索のデフォルトになる点が予測されているわけでも、必要とされているわけでもなく、あくまでもサファリにおいてのみである)。

この封じ込め政策は、恐らく、一般のユーザーが理解する範疇を超えていると思われる。彼らにとっては、シリはiPhoneに頼みごとをすることが可能な優れたツールでしかない。アップルがグーグルを捨てた点を消費者に気づかれることなく、グーグルを捨てるための巧妙な戦略だったのだ。

シリ検索エンジン

アップルはアップル独自の検索エンジンを構築する可能性がある。長年、大勢の人々がこの可能性について指摘してきた。しかし、ある程度の規模で検索を実施する取り組みがいかに難しいかを見てきた経験から、個人的にはアップルが検索エンジンを作るとは考えていない。検索はアップルの中心的な強みではなく、また、グーグルとマイクロソフトの両社と激しい競争に直面することは避けられないためだ。

デバイスまたはOSを持っていれば、検索で優位に立てると考えているなら、その考えを改めるべきである。このアドバンテージを持つマイクロソフトは、1998年にMSN検索を立ち上げて以来、検索業界でトップに立つべく努力してきた。デバイス、ブラウザ、そして、OSと抱き合わせで提供しているにも関わらず、そして、長い年月をかけて取り組みを続けているにも関わらず、いまだにユーザーはグーグルを求めている。さらに、3年前には新しいテクノロジーを基にゼロから始め、ビングブランドを構築したにも関わらず、今でもユーザーはグーグルを選んでいる。

アップルは、今までの取り組みを継続するべきである。シリを成長させ、その他の検索パートナーと手を組み、グーグルを引き続き封じ込めることで、グーグルがいなくても問題視されない検索の分野で勝利を収めることが出来るのだ。

最終的に、アップルはシリのウェブベース版のアップル検索エンジンを立ち上げるかもしれない。シリと名付け、Siri.comで提供することも出来るだろう。選択したプロバイダーから人気の高い検索に対する答えを引き出し、拡大を続けていけば、パートナーがいない際に利用される“予備”の検索エンジンを巡る状況は変わるだろう。グーグルは水面下でビングに置き換えられていくのだ。

これが、アップルがグーグルに勝負を挑む方法である。爆弾を落とすことなく、戦争を起こしていることを消費者に気づかれることもない。

グーグルにどれだけ大きなダメージを与えるのか

グーグルは、モバイルデバイスへの参入を中止し、開戦を回避した方がよかったのだろうか? その可能性はある。ジョン・グリューバー氏等はそう考えている。私は、独自のブラウザ、独自のOS、独自のモバイルデバイスの開発に走るグーグルを見て、検索のみに焦点を絞っていたら、多くの敵を作ることなく、より大きな成功を勝ち得ていたのかどうか考えることがある。

しかし、グーグルは被害妄想を持った企業である。マイクロソフトがサービスをブロックするのではないかと恐れブラウザを作り、モバイルデバイスにおいても取り残されることを恐れて参入していた。グーグルが攻撃的な目的を持っていた点を否定しているわけではない。しかし、モバイルはさらに検索との関係を強化しており、アップルを敵に回すリスクを負ってでも独自のモバイルプラットフォームを作る戦略は、妥当だと思える。

するべきだった、することができた、するところだったと言う議論、そして、誰が最初にモバイルを始めたのかと言う議論を永遠に繰り返すことも出来る。しかし、アップルとグーグルがどのような経緯で現在の状況を迎えていたとしても、現実に激しい競争が行われているのだ。それでは、グーグルにとって封じ込めは何を意味するのだろうか?簡単に言うと、グーグルにとっては、あまり多くの被害を受けないと考えられる。

何が封じ込められるかに左右される

クエリを音声で入力する機能は素晴らしく、重要な意味を持つと思え、また、拡大を続けている。アンドロイドでは、音声検索はiPhoneよりも以前から提供されており、グーグルのエリック・シュミット会長は、2010年の年末に、クエリの25%は音声で入力されていると明かしていた。しかし、こういったクエリからグーグルは利益を得ているのではないだろうか?

収益に関して言えば、例えばズーイー・デスチャネルがグーグルではなくシリに雨が降っているかを尋ねたとしても、グーグルはほとんど影響を受けない。ズーイー・デスチャネルはグーグルの広告をクリックしていたわけではないのだ。

ユーザー達は、容易に失敗しないものの、ハッキリしていない対象の検索をシリで行っている。ウルフラムアルファはシリのクエリの約25%を担当していることが明らかになっているが、シリの検索が占める確率は不明である。たとえ大きな数字であったとしても、グーグルが収益源としているわけではない、参照情報が大半を占めるはずである。

グーグルに関するこのデータ判明しており、音声検索の13%から33%がローカルに関連している。シリにも同じ状況が当てはまるとすると、グーグルはこの価値の高い検索を失いつつあると言えるだろう。しかし、シリが現在ローカル検索を送る手法においては、イェルプも、アップルも、そして、グーグルも大した利益を上げているとは思えない。この手の検索は、電話番号や住所を見せるだけで終わるためだ。

マップ: グーグルは幾ら失うのか

この点は新しいマップアプリにつながる。グーグルには大きな痛手となるはずだ。勘違いしないでもらいたい。グーグルはこの件を十分に検討しており、先週、先手を取ってマップに関するイベントを開催していた。iOS 6がリリースされれば、現時点では存在しないグーグルマップアプリが姿を現すはずだ。

そもそも、マップから排除されることでグーグルは幾ら失うのだろうか?グーグルがマップからどのようなメリットを得ているのか思い出してもらいたい。私がレストランをマップで検索したところ、以下のように電話番号と住所を伝えるピンが表示された:

マップから追い出されたことで、グーグルが幾ら失うのかを把握するのは難しい。アンドロイドでグーグルマップアプリを使って、同じ検索をした場合の状況と比較すると混乱は増すばかりである:

グーグルが収益化を容易に行うことが可能なグーグルローカルのページに導かれる(グーグル+のローカルページ)。

今後はこの仕組みは変わっていく。新しいマップは、1億社のインフォカードを用意している。この点に関しては、キーノートイベントで垣間見ることが出来た。ベンチャービートの記事に掲載されていたイメージを以下に掲載する:

イメージ: ベンチャービート

最も興味深いのは、「レビュー」タブであり、これはアップルと良好な関係を築いていたら、恐らく、情報を追加し、収益化する上で役に立った分野と言えるだろう。米国では、イェルプがこの提携を結んでいる。

しかし、しばらくの間は、インフォカードを擁する新しいマップアプリが、グーグルの収益に影響を与えるとは考えにくい。グーグルがグーグルマップアプリにユーザーを導くことに成功すれば、グーグルはiOSとの提携よりもさらに多くのメリットを得られる可能性すらある。

グーグルは、マップを通じてユーザーが何を検索しているのかに関するデータを失うことになる。グーグルにとっては様々な用途においてこのデータが役に立っていると思われる。しかし、グーグルはいまでもアンドロイドから大量のローカルデータを獲得している。また、グーグルマップの利用をユーザーが望めば、iOSのデバイスからもこのデータを得られるのだ。

複雑な状況

先程から「しばらくの間」と言う表現を使っているが、それは現実を把握する必要があるためだ。キノコ雲を発生させて、いきなりグーグルを消すことは出来ない。しばらくの間は、アップルの封じ込め戦略は、グーグルに多大なダメージを与えるとは思えない。

その他の要因を考慮すると、さらに複雑度は増す。例えば、サファリを使ってグーグルで検索を行い、ショッピングの結果が表示されたとしたら、グーグルに利益はもたらされないことになる(そのため、アップルが広告収益を得ているなら、アップルに収益が転がりこむ可能性がある)。しかし、今年中にグーグルのショッピングの結果は事実上すべて広告になる

つまり、iOSデバイスからのクエリが減ったとしても、グーグルはこのタイプのクエリからさらに多くの利益を得ることが出来るのだ。ここでもう一つ厄介なポイントがある。リスティングの一部 – ユーザーが「スポンサー」ショッピングボックス内のリンクではなく、グーグルショッピングで直接検索を行う際に表示される結果 – は広告とは考慮されない可能性があるのだ。この収益をアップルと分け合うのではなく(現在、契約でこのような取り決めが行われているなら)、グーグルは収益を独り占めすることが出来る。

混乱させてしまったなら謝る。ペイドインクルージョンの世界は一筋縄ではいかない。グーグルが検索に対してアップルに料金を支払う条件が分からない状態では、さらに混乱は増す。さらに、シリの登場後、ユーザーがiPhoneでどのように検索しているのかがまだ分からないため、さらにややこしくなっている。

サーチエンジランドの寄稿者、グレッグ・スターリング氏が先日行った調査をここで取り上げたい:

同氏はグーグルのコンシューマーサーベイサービスを利用してこの調査を実施していた。この調査では、先程申し上げたとおり、グーグルを直接利用する強い忠誠心、もしくは少なくとも習慣が存在することが見て取れる。

最新の情報が入り次第、随時伝えていく。私達はiPhoneとiPadの消費者の検索の習慣に関する情報をさらに求めていく。これは、アップル vs グーグルの戦いの展開を読む上で非常に重要なピースと言えるだろう。

別れは困難

しばらくの間は、グーグルはiPhoneとiPadが販売されている国々の大半でサファリのデフォルトに留まることを望んでおり、iOSに深く組み込まれることになる。シリは音声クエリの一部を取り込むかもしれないが、グーグルは、多くの“ヘッド”のトラフィックと共に価値の高いロングテールのトラフィックを維持するものと思われる。

ツイッターが現在手に入れ、次にフェイスブックが手中に収めようとしているOSの深い統合をグーグルが求めていることは明らかである。私はユーザーとして、この統合を望んでおり、ギャラクシーネクサスとギャラクシー S II アンドロイドフォンでこの統合を実感している。共有を望むソーシャルシステムを容易に加えることが出来るオプションがユーザーに提供されるなら、iOSの株は上がると私は思う。しかし、グーグルがこの統合に招待されていないからと言って、一部の人達が推測しているような損害を被るようになるとは限らない。

長期的な影響は全く別の問題である。封じ込めが継続されれば、グーグルが痛手を負う可能性はある。しかし、私にはこのシナリオが実現するとは思えないのだ。シリ検索エンジンが台頭しても、消費者が意図的にグーグルを求める理由は他にもある。/p>

また、アップルが検索エンジン化のマイナス面を理解しつつある点も忘れてもらいたくない。シリの中絶の結果が問題視された件やiPhoneよりも優れたスマートフォンが存在するとシリが発言した件を覚えている方もいるのではないだろうか。これはパートナーから得る結果に左右されるが、非難の的になるのはアップルである。シリが直接クエリに答えるようになると、非難はさらに増えていくのだ。

グーグルに訊いてみるべきだ。結果問題視されると、検索エンジンいること悲しく 思えて いても たっても いられない 気持ちになる。提携を拒否する一部の企業が、モバイル分野での独占疑惑に対して、独占禁止の申し立てを行い、逆手に取るような状況に身を置かれれば、やってられなくなる。実際にこのシナリオが起きる可能性はある。

全てを考慮した上で、アップルは様々な分野でグーグルとの提携を維持する方が賢明だと判断する可能性がある。結局、グーグルは数億ドルから、恐らく数十億ドルの利益を上げていると思われる。また、グーグルはほぼ間違いなくその他の検索パートナーよりもアップルに多くの利益をもたらしているはずである(この点は重要である。ヤフー!にビングとの提携の現状を尋ねてみるとよい)。従って、グーグルがアップルにとって最大の利益をもたらすパートナーの1社に数えられる可能性はある。

他にも多額の利益をアップルにもたらしているパートナーは存在するかもしれない。しかし、グーグルはアップルの大きな取引相手である。そのため、とりわけ、多くの利益をもたらし、その他の方法で優位を保つことが出来るなら、取引相手に核戦争を仕掛ける必要はない。


この記事は、Search Engine Landに掲載された「Why Apple Is Going “Containment” Not “Thermonuclear” Against Google In iOS 6」を翻訳した内容です。

充実の内容でしたが読み疲れしてコメント書く気力がありませんが 汗 定期的に登場するこの話題(これこれ)、時間と共にその内容もより現実的になっていくことは間違いなさそうですが、サリバンもいうように良い形で共存し、ユーザーデメリットがある状況になっていかないことを望みます。 — SEO Japan [G+]
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