Microsoftの幹部が語る検索行動の変化

最終更新日:2024/02/17

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Yahoo!がGoogleを採用し、Microsoftも普及させようという真剣度が感じられないBing、日本での注目度はかつてない程落ちていますが、米国では地道な努力を続けており一定のシェアは確保しています。今回はそんなMicrosoftのプロダクトマネージャーがサーチエンジンランドとのインタビューで検索行動について語った記事を紹介します。とても示唆に富んだ記事なのでサーチのみならずウェブマーケティング担当者は時間があれば是非一度読んでほしい内容です。 — SEO Japan

ジャクリーン・クローンズ氏(写真: アニー・ローリー・マラーキー)

私が初めてマイクロソフトのシニアプロダクトマネージャーを務めるジャクリーン・クローンズ氏に出会ったのは、検索業界のカンファレンスであった。ビングの共通の友人であり、プロダクトマネージャーに就任しているステファン・ウェイツ氏から紹介され、「ジャクリーンに会うべきだ。きっと意気投合する。」と言われたのであった。

ウェイツ氏の直感は正しかった。クローンズ氏はかつて積極的に関わっていたリサーチプロジェクトについて話し始めた。クローンズ氏は、広範な背景で検索の行動を理解するため、マイクロソフトが採用していた民族学的なアプローチについて説明してくれた。それ以降、検索カンファレンスのスケジュールの合間を縫って、様々な機会で会話を続けることが出来た。毎回、中身の濃い会話に発展した。

今回のコラムでは、この会話の一部を読者の皆さんと分かち合いたいと思う。先日行われた調査で判明した傾向についてクローンズ氏と話す機会を得た。しかし、その点に触れる前に、同氏が利用した方法について少し説明しておこう。

曖昧でハッキリしない分野を調査する質的なリサーチは、量的な方法では見出すことが出来ない見解を明らかにすることが可能だ。質的なリサーチは、量的なリサーチでは実証することも、そして、反証することも出来ないような結果を発見すると言えるだろう。

ボールステート大学のインサイト & リサーチ・アット・ザ・センター・フォー・メディアで所長を務めるマイケル・ホームズ氏も質的リサーチの支持者であり、かつて、「量的リサーチは、現在実施しているのリサーチの調整および最適化に対しては重要だが、再発見は期待出来ない。」と語った。

私を魅了したリサーチでクローンズ氏が採用したのは質的な切り口であった。また、マイクロソフトがこのリサーチを継続的なプロジェクトとして実施している点も注目に値する。初回は2004年、2回目は2007年、そして、要約が終わったばかりの3回目は2010年に行われ、既に3回の質的な調査が実行されている。

コアな検索経験だけでなく、急成長を遂げるモバイル等の分野における変化の度合いを考慮すると、私は最新の調査の結果を聞くのが少し恐かった。その前にまずはマイクロソフトが採用したアプローチについてクローンズ氏本人に説明してもらう:

クローンズ氏は次のように説明してくれた:

「私達は新しい視点で検索の分野を見る必要があった。それは、個人的には、質的、特に民族学的なリサーチの採用を意味していた。調査の参加者と家や参加者にとって重要な背景で一緒に時間を過ごすため、とても深く、そして、とても豊かな内容が期待できる。このアプローチは私が優先して採用する手法の一つである。

家にいる時間に加え、私達は彼らにとって重要な場所で共に時間を過ごした。彼らにとって重要なこと、そして、実際に何をしているのかをより重要視するのだ。量的な調査では、またはフォーカスグループとラボにいる場合では見えてこない見解が見えてくる。

私達はZMETと呼ばれる、心理学に重点を置いた手法から始めた。ZMETは、話しているトピックを表す写真を持ってきてもらうことで機能する。そして、とても奥深く、しっかり計画されたインタビューのプロセスが行われ、その写真がトピックを表す理由を解明する。最後に参加者はコラージュを作成し、インタビューおよび持ち込んだ写真を基に、話をする。そうすることで、民族学の分野に入る前に、基本的な見解を導き出すことが出来るのだ。」

それでは、マイクロソフトの質的リサーチへの投資は報われたたのだろうか?求めていた大きな見解を得ることが出来たのだろうか?クローンズ氏によると、その答えはYESのようだ。

クローンズ氏は次のように答えている:

「とても重要な見解を得ることに成功した。一つ目は、ユーザーが検索にアクセスする際に関与するアクティビティに関して私達がどのように考えをまとめるのかである。朝起きて、「検索エンジンを使いたい」と言うような人は実際にはいないことを伝えたかった。ユーザーが検索エンジンにアクセスした際にユーザーにとって重要なことを理解したいなら、ユーザーの実際の行動を知るだけでは不十分である。

オンラインで過ごした時間の内訳を見ると、約5%の時間が検索エンジンの利用に用いられており、残りの95%何をしているのか知りたくなる。ユーザーは検索エンジンを使って、オンラインの世界だけでなく、現実の世界の行動に関する選択を行っている。また、検索の定義が拡大している点も判明している – ユーザーがアプリを利用して行っている取り組みの大半が検索と考えられる可能性がある。ソーシャルネットワークで行っている取り組みさえも検索と考慮される可能性がある。」

検索の行動は、ユーザーがもたらす現実の世界で要求されることの背景に左右されると言う考えは、とても理に適っているが、検索マーケティングの戦略を練り上げる際には、私達はこの点にあまり時間を割いていない。クローンズ氏は、さらにこの調査が発見した異なる検索の“様式”について詳しく説明してくれた。

クローンズ氏は次のように述べている:

「検索にユーザーをもたらす3つのタイプのアクティビティが存在する点も大きな発見の一つだ。

1つ目のタイプはミッションであり、ユーザーが特定の、明確に定義されたゴールを持ち、タスクを効率的に完了したいタイプの検索である。

2つ目のタイプは情報発見であり、1つの正しい答えがあるわけではなく、より時間をかけて検索を行う傾向がある。最善の結果を求めているためだ。最高の選択肢、最善の価格、もしくは最も正確な理解を求めている。

そして、3つ目のタイプが調査である。調査には、気になることに時間を費やし – 当該のトピックを継続して調査する種類、そして、公共の乗り物を列に並んで待っている際、または、誰かを待っている際の時間つぶしを行う種類の2つに分類される。どちらの種類においても、新しい発見が求められている – ユーザーは見たことがないもの求めており、このようにして熱中することを望んでいる。」

3つ目のタイプは特に興味深い。なぜなら、3回の調査期間を経て現れた検索ユーザーの行動の変化を示しているからだ。2004年から2007年、そして、2010年まで、検索、そして、疑問に応える検索の小さな能力、そして、大きな能力に対する見方は変化してきた。

クローンズ氏はこの点について次のように述べている:

「知識の創造に関する発見もまた重要な発見の一つである。情報科学の領域では「センスメイキング」(意味を与える行為)と呼ばれている。民族学的な調査を実行してきた過去数年間で、この行為に大きな変化が生じている。

2004年、知識は専門家が持っており、専門家が決定を下す上で手を貸してくれると調査の参加者は述べていた。

2007年、検索エンジンは世界に存在する全ての知識を持ち、アクセスして、引き出すことが出来るとユーザー達は述べていた。そして、2010年、調査の参加者は、自ら知識を作り上げており、検索エンジンは実際には世界中の全ての知識を用意しているわけではないが、情報につながっていると語っていた。

現在、この点の考え方について、人々は以前よりも遥かに高度なレベルに達している。「検索エンジンは、情報にアクセスするツールとして優れているが、自分で情報を確認し、対比し、比較し、そして、自分にとって正しい答えに関する結論を導き出す必要がある。それが知識になる。この取り組みを行う前は知識ではない。」と参加者達は考えているのだ。人々は、知識は自分達で積極的に作り上げ、そして、個人に特化していると感じている。」

検索の行動が、着手している検索のミッションのタイプによってここまで大きく変わるなら、結果のタイプもまた意図とマッチするように変わると考えるのは当然である。クローンズ氏は、この考え方が検索全体にとって新たな見解である点を認めている:

クローンズ氏は以下のように述べた:

「私達は、SERPの1位に適切なレスポンスを与える取り組みに常に没頭してきた。この取り組みが今でも重要であることに変わりはないが、1位は情報の手掛かり(リンクの向こう側に存在する情報への手掛かり)であり、それが実際には答えであることもある。

ミッション検索を行っているなら、ユニバーサル検索または1位、2位、もしくは3位のスニペット内で答えを提供することが出来る可能性もある。しかし、情報発見モードにおいては、SERPで答えを見つけるわけではなく、SERPに答えが用意されていたとユーザーが言えるような状況を作り出すことは出来ない。なぜなら、ユーザー達はこのプロセスを完了する必要があると感じているためだ。

2007年の調査で最大の発見は、あるユーザーが – 確かな答えを得て、次に進む – 「ドアを閉める行為」と呼んだ行為に加え、人々は – 心を開いて、あるトピックについて学ぶ、もしくは調べる – 「ドアを開く行為」を行うために検索を利用していると言う事実である。そして、2010年、「それなら、調べて、答えを得る以外に何をしているのか?」と単純に問うのではなく、さらに徹底的に調査を行った。

すると、先程説明した3つのアクティビティが存在する点、そして、調査タイプの検索が特別である点が分かったのだ。目標指向の行為に注目すると、特定の答えを求め、完了する検索と、正しい答えを求め、多くの時間を投じる検索との間には実は大きな違いがあることが分かる。効率を求める最適化と詳細を求める最適化の間には大きな違いがあるのだ。」

私は以前“グーグルの習性”をこのコラムの中で取り上げたことがあり、この行動における変化によってこの習性を破壊する可能性が生じたかどうかどうしても尋ねたくなった。習慣的な検索の行動が期待した結果を生むことが出来ないなら、この行動を私達は変えるのだろうか?

クローンズ氏は次のように答えた:

実際に人々が行動を変化させていると気づいているとは私には思えない。環境が変化し、利用可能な情報が増え、必要としている情報の多くがより多くの状況で利用することが可能になったとユーザーは言うだろう。「以前検索エンジンで実行していた行動」として見ているのではなく、新しい行動と考えているのだ。

また、ユーザー達のレベルが上がり、検索エンジンへの要求が高まっている点もその理由である。2007年と比べると検索エンジンの能力への満足感は減っているが、これは、この分野の製品が成熟化しているため当然である。

意識して習慣を破ってもらえるように、本気で人々に喜びを与え、驚かせたいなら、ユーザーの要求をもっと理解しなければならない。ユーザーの期待は高まっている。検索モデルに対する変更は瞬く間に全ての人々に拒絶される感覚に私達は慣れていたため、これは私達にとって胸が膨らむような取り組みである。今後は、このような憂鬱な思いをせずに済みそうな気がする。

次回の行動に関するコラムでは、クローンズ氏との会話の続きを紹介する。次回は、検索アクティビティの3つのタイプ、異なる種類のデバイスでこの3つのタイプの検索がどのように展開しているか、アプリを介した検索、そして、インターフェイスと広告の未来への影響を詳しく見ていく。

この記事の中で述べられている意見はゲストライターの意見であり、必ずしもサーチ・エンジン・ランドを代表しているわけではない。


この記事は、Search Engine Landに掲載された「Exploring The Shift In Search Behaviors With Microsoft’s Jacquelyn Krones」を翻訳した内容です。

最初から最後まで知的好奇心をくすぐり続けられた素晴らしいインタビューでした。「検索行動を行う背景の現実世界の要求まで検索マーケッターは考えていない」「自分で情報を確認し、対比し、比較し、自分にとって正しい答えに関する結論を導き出すことで知識になる。検索するだけでは知識は得られない。」などのコメントは思わず考えさせられます。時間がある時に改めて再読してじっくり考えてみたいです。 — SEO Japan

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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