【SMX East 2015 レポート記事】”検索エンジンの中の人になんでも聞こう!”から見えた 6つのこと。

公開日:2015/11/12

最終更新日:2024/03/13

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Search Engine Landに掲載された、SMX Eastのレポート記事の第二弾となります。(第一弾はこちら。)今回は、SMXではお決まりの(そして、大人気の)”検索エンジンの中の人になんでも聞こう!”のセッションになります。Googleからはゲイリー・イリーズ氏、Bingからはデュアン・フォレスター氏が、様々なトピックについて議論します。(司会は、もちろん、ダニー・サリバン氏。)今回のSMXではどのような内容が話されたのでしょうか?– SEO Japan

寄稿者のエリック・エンジ氏が、Googleのゲイリー・イリーズ氏とBingのデュアン・フォレスター氏を迎え、検索エンジンの現在、および、未来について議論したセッションを振り返る。

Six Key Themes From SMX East

*記事内のリンク先は全て英語となっています。

10月1日、私はSMX Eastの「検索エンジンの中の人になんでも聞こう!」のセッションに参加した。このセッションには、Googleのゲイリー・イリーズ氏とBingのデュアン・フォレスター氏を招き、Search Engine Landのファウンダーであるダニー・サリバン氏が司会進行を務めた。この記事では、このディスカッションで取り上げられた6つのテーマを振り返っていく。

テーマ 1: AJAXのクロール

2009年10月、GoogleはAJAXをクロール可能にする方法を推奨していた。これは、簡単に言うと、ハッシュタグ(#!)をURL内に含めることで、AJAXがクロール可能なURLである点を検索エンジンに伝えるアプローチであった。

このシグナルを確認すると、”#!”を文字列”?_escaped_fragment_”に置き換えるようにURLを修正する。例えば、下記のようなURLがあったとしよう。

Hashbang URL

上記のURLは下記のURLに置き換えられる

Escape Fragment URL

ウェブサーバーはこのバージョンのURLを受け取ると、HTML のスナップショットを検索エンジンに返す合図だと理解する。基本的に、このスナップショットは、ユーザーが目にするのと同様の、ページを完全にレンダリングしたバージョンである。しかし、検索エンジンにとっては理解や解釈しやすいフォーマットとなっている。

この件に関してのイリーズ氏からの報告は、「現在、Googleはこのアプローチを推奨していない」といったものだった。ただし、今後もGoogleは、この方法に対応することも明言している。つまり、Googleは今後推奨することをやめる、といったことだ。また、同氏は、Googleが、この件で同社の立場を明確にする記事を”2週間前後”にブログにアップするとも述べていた。

フォレスター氏とイリーズ氏は、この話の中でAngularJSにも言及していた。その中でも重要であった発言は、「ユーザー体験という意味では必要ないのに、AJAX、または、AngularJSを利用しているサイトが多い」といったものだった。

これらのフレームワークは、コーディングにおいて、あまりにも過剰な取り組みになっていることが多く、ディベロッパーが喜びを感じるものであるかもしれないが、わざわざ利用する理由として妥当ではない。このフレームワークを利用する決断を下す前に、ユーザー体験の面で本当に必要かどうかを確認してもらいたい。

テーマ 2: セキュリティ

このテーマでは、ランキングシグナルとしてHTTPSを使用する件に関しての議論から始まった。イリーズ氏は、ランキングシグナルのためではなく、ユーザーのために、HTTPSに切り換えるべきだと指摘していた。過去に何度も同氏が指摘していたように、ランキングのメリットがあるとしても、2つの同等なページの勝敗を決める程度であり、HTTPSに切り換えたとしても、それだけでランキングが上がる可能性は低い。

フォレスター氏は、「検索エンジンがセキュリティに関して強固な方針を取るのは簡単なことではない」、と話していた。個人的には、この発言は重要だと思っている。ユーザーのセキュリティに対する関心は徐々に高まってきていると言えるが、HTTPSを利用するサイトのみが上位にランクインする状況は、検索エンジンのユーザー体験としては望ましいものではない。なぜなら、セキュア対策がされていないが、ユーザーが求めているものを提供しているサイトは数多く存在するためだ。検索エンジンは、ユーザーを最優先しなければならないのだ。

しかし、検索エンジンがセキュリティの議題をプッシュする理由には注目する価値がある。フォレスター氏は、この点を強調し、元FBIの捜査官、マーク・グッドマン氏が綴った「Future Crimes」を紹介していた。この本は、ウェブがいかに危険であるか、そして、私達がいかに無防備であるかを詳しく説明している。

個人的には、今後の2年で、恐ろしいほどの”安全への侵害”が何度か起き、一般の人達のセキュリティに対する意識が急激に高まると予想している。不倫サイトのアシュリー・マディソンの事件は十分に恐ろしかった。遥かに強烈な事件がいずれ発生することになるかもしれない。

もう1点重要なポイントを挙げていく。「HTTPSの対応を実施する必要があるのはショッピングサイトだけ」という指摘をよく耳にする。しかし、普通のブログサイトでもHTTPSを利用するべきである。なぜなら、ユーザーは、(セキュリティが脅かされているサイトでも)修正が加えられたコンテンツではなく、あなたが提供するコンテンツそのものを受け取ることもあるからだ。以下の画像は、「中間者攻撃」によって、ハッキングされてしまう仕組みを説明している。

Man in the Middle Attack

実際のシナリオを用いて、この問題を説明してみよう。移動中に、Starbucksやホテルが提供するWiFiネットワークを受信したとする。このWiFiサービスのプロバイダーは、あなた(ユーザー)が受け取るコンテンツを修正することができてしまう。この技術の基本的な利用法は、広告を挿入することだ。これだけでも、注目に値するだろう。

しかし、問題はそれだけではない。彼らは、ユーザーがアクセスしたコンテンツのデータを集め、そのコンテンツのプロフィールを作ることもできる。このプロフィールを色々な目的で利用されてしまうかもしれない。少なくとも私は、こんな展開に巻き込まれるのはゴメンだ。そのため、できるだけ早く、多くのウェブサイトにHTTPSに切り換えてもらいたいものだ。

テーマ 3: ミレニアル世代がやって来る!

このトピックは、フォレスター氏から発せられ、今までの世代と、この新しい世代の違いを認識する必要性が盛んに論じられていた。オンライン/スマートフォンの世界で育ったこの世代は、慣習的なルールを変えつつある。フォレスター氏が強調した重要なポイントを簡潔にまとめておく。

  1. 低品質への寛容さがない
  2. ブランドからの本物の交流(エンゲージメント)を望む
  3. 信頼性は重要視される
  4. 体験や経験を求める
  5. 注目(集中)が持続する時間が短い

さらにフォレスター氏は、彼らが成人になり、親が亡くなると、史上最大の遺産の相続人になると述べていた(その額なんと7兆ドル!)

7 Trillion Dollars

つまり、ミレニアル世代は、その他の世代よりも厳しい要求をするようになると言える。私はSMX Eastの最後のパネルディスカッション「Best Of Show: Top SMX Takeaways」に参加した。そこで、オーディエンスの一人が、既にあらゆる世代が上記の内容求めているため、彼らに注目することはたいして重要ではないと反論していた。

確かにその通りではある。しかし、ミレニアル世代の要求のレベルは今までとは異なるという事実もある。例えば、ユーザーがコンテンツに集中する時間は、10年前では10分だとすると、現在は2分程度である。10年前にコンテンツを読んでもらうためのアピールの時間が20-30秒間あったとしたら、現在は2-3秒しかない。

事実として、ユーザーにとっての価値向上に今まで以上に力を入れ、ユーザーを優先したアプローチをマーケティングに反映させなければ、成功することはできなくなるということを意味しているのだ。

テーマ 4: コンテンツシンジケーション

コンテンツシンジケーションのメリットを尋ねる質問がオーディエンスから出ていた。フォレスター氏は、SEOを目的として行うべきではないが、その他のビジネスの目的のためであれば、実施する価値はあるかもしれないと述べていた。さらに、理論上は、重複コンテンツの問題は起きないとしたが、確実な保証はないとも述べている。

つまり、Bingは、あなたのサイトのコンテンツがオリジナルであると認識することを保証することはできないが、大方、適切に判断するということだ。

イリーズ氏は、重複コンテンツのペナルティというものは存在しないという点を強調していた。重複したコンテンツがあった場合、Googleは、正規のバージョンを選択し、それを表示する。これは、あなたのサイトへのペナルティではなく、Googleは単純にどちらのバージョンが最適かを選んでいるだけなのだ。

イリーズ氏は続けて、The New York TimesがコンテンツをCNNに配信した場合、CNNがコンテンツの作成者として認識される可能性もあるとした。そのため、rel=”canonical”タグを使用するなどして、オリジナルのバージョンを判断する際のヒントを検索エンジンに与えておくことが重要になる。The New York TimesとCNNの例においては、CNN版のコンテンツにThe New York Times版のコンテンツに向かうcanonicalタグを加えることになる。

【筆者の意見】
コンテンツシンジケーションは、デジタルマーケティング戦略において利用価値があると考えている。評判と露出(ビジビリティ)を高める可能性のある手段として、このアプローチを見てもらいたい。次のイメージをご覧になれば、このコンセプトを理解してもらえるのではないだろうか。

Content Syndication Done Right

注意してほしいことは、被リンクを期待し、多数の質の低いサイトにコンテンツをばらまいてはならないということだ。(反対に悪影響をもたらす危険がある)。そうではなく、あなたのサイトよりもオーソリティがあり、あなたが接触したいオーディエンスを抱えるサイトにコンテンツを配信する努力を心掛けてもらいたい。

このアプローチは、評判とビジビリティを高める上で有効に働くだろう。さらに、SEOにおけるリンクの価値をもたらすタイプのシンジケーションがあれば、利用しない手はない。

この件についての最後のアドバイスをしよう。それは、自分のサイトよりも信頼されているサイトにあなたのコンテンツを受け入れてもらえた場合、そのサイトへオリジナルのコンテンツを提供し、あなたのサイトには別のコンテンツを掲載するべきではないか、という点だ。この方法はビジビリティを高める手段として優れており、(オーソリティの高いサイトから)あなたのサイトへの被リンクの獲得も期待できる。そして、そのリンクから訪問したユーザーに、他のコンテンツを見てもらえるかもしれない。個人的には、こちらの方法がより優れていると考えている。

テーマ 5: 国際的なドメインのURL

オーディエンスの一人から、インターナショナルなサイトにおいて、どのようなURLの構造がベストかを問う質問が出ていた。イリーズ氏は、Googleにとっては関係がないと指摘した。最も重要なのは、hreflangタグを利用することだ。(このタグを実装する方法を知りたい方はここをクリック。)

続いて、フォレスター氏が、利用するURLに気を配る点に関しては、ユーザーを考慮した理由が存在するのではないかと述べていた。例えば、フランスのオーディエンスをターゲットとしている場合、”.fr”のドメインを利用することは賢い選択だ。また、フォレスター氏は、これは検索エンジンへの対策ではなく、ユーザーが望む体験を提供する取り組みであると指摘した。

ただし、これで問題が解決したわけではない。下記に、SEOに間接的なインパクトを与える可能性のある、CTRについての記載がある。(少なくともBingでは、ユーザーが”/fr”のフォルダを表示するサイトよりも、”.fr”のドメインを使用しているサイトの方がより多くクリックしている場合、こうしたことがランキングに影響を与えているかもしれない。)。

テーマ 6: ユーザーデータと検索エンジンのランキング

このトピックは、ページスピードについての話から始まったが、ページスピードについては特筆すべきことはない。しかし、フォレスター氏から気の利いた発言を引き出すきっかけとなった。フォレスター氏は、「ページスピードがSEOにとって重要なパターンがもう1つある。ユーザーがクリックした後、検索結果に戻ってくる時間が短ければ短いほど、ランキングの下降を導く」、と発言したのだ。これは新しい情報ではなく、私自身2011年にフォレスター氏とこの点について議論をしている。

続いてイリーズ氏は、ユーザーの行動に関するデータは不要な情報が多く、使いにくいと指摘した。しかし、Googleは特定の方法でこのデータを実際に利用しているとも述べている。 例えば、Googleは、検索結果で新しい機能をテストする際に、このデータを利用することがあるかもしれない。

さらに、パーソナライゼーションにおいても有益だと同氏は明らかにしている。例えば、ユーザーが”apple”で検索をかけた場合、appleが会社を意味するのか、あるいは、フルーツを意味するのかハッキリしない。ユーザーが、フルーツに関するページを求めていることが明らかである場合、Googleは検索結果をパーソナライズして、こうした検索に対しては、フルーツに関連するページをより多く表示するようになる。

ちなみに、クリックスルー率の単純計測を改良した、ポゴスティッキングの概念は、今回のパネルでは取り上げられなかった。

Pogosticking in the SERPs

これについての私見を述べたいと思う。この分野に関して検索エンジンが何をしているのかは不明だが、コンテンツの品質とユーザーエンゲージメントに関するデータを収集することは、検索エンジンにとって重要であることは疑いようがない。どのシグナルに注視しているのかを解明するのは非常に難しいことであるが、何らかの形でこのデータに注目しているはずである。これについては、私がSearch Engine Landで書いた、「100のユーザーモデル」を参照してほしい。

基本的に、検索エンジンが提供する結果に対するユーザーの満足度が高ければ高いほど、検索エンジンの利益につながると私は確信している。なぜなら、もし、ユーザーが彼らの質問に答えるサイトを紹介してもらえないのならば、質問の答えを得られる別の場所に向かうからだ。(Facebook、友達にメールを送る、電話で誰かに尋ねる、Amazonで検索する、そして、もちろん、別の検索エンジンで検索する手もある)。

2009年、GoogleとBingはサーバー側の遅延をテストした結果を公表した。このテストでは、検索結果のレンダリングに意図的に遅れを生じさせていた。以下にその結果を掲載する。

Impact of Server Side Test Delays

ユーザーの満足度と検索エンジンの利益の間に強い相関関係が見られる。 このデータは、品質の低い検索結果ではなく、遅延に焦点を絞ったデータではあるが、GoogleとBingにとっての共通の課題であると結論づけても問題はないだろう。

つまり、最善の結果を提供することは、どちらの検索エンジンにとっても最優先しなければならない取り組みであることは明らかである。従って、できるだけ多くの(質の高いシグナルを送る)方法を使用しているはずなのだ。

まとめ

今回は、このセッションの中で、私が重要だと感じたテーマを紹介した。他にも多くのトピックがあったが、個人的に注目したものを選ばせてもらった。あなたの意見を聞かせてもらえると嬉しい。

この記事の中で述べられている意見はゲストライターの意見であり、必ずしもサーチ・エンジン・ランドを代表しているわけではない。著者のリストはこちら

この記事は、Search Engine Landに掲載された「Six Key Themes From “Meet The Search Engines” At SMX East」を翻訳した内容です。

トピックはエリック・エンジ氏によって選ばれたものですが、注目に値するトピックのみを選択していると思います。ここで話されている内容は、もしかしたら、既知の情報が多かったかもしれません。(AJAXについては新情報だったかもしれませんが、既にGoogleからの公式ブログにも掲載されています。)しかし、現在注目すべき事柄や、これから取り組むべき課題を選ぶ際の参考にはなると感じています。SEOにおける課題は多く、サイトの状況によって優先度は変わってくると思いますが、こうした場で繰り返し話題となるトピックについては優先的に行ってもよいかもしれません。次に取り組むべき課題の選択の参考になれば幸いです。

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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