訴訟問題で四面楚歌のAndroidに未来はあるか?

公開日:2011/12/02

最終更新日:2024/02/17

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KDDIがiPhone発売、もしかするとDOCOMOまで?と最近はiPhoneの話題で盛り上がっている日本ですが、スマートフォン最大のライバルAndroid勢の未来はいかに。今後数年がAndroidにとっても勝負になってくると思いますが、どうもAndroid勢は様々なプレイヤーと思惑がからみあって全員一丸となって妥当Appleというわけにはいかないようです。数か月前の記事になってしまうのですが興味深い内容だったので遅ればせながら紹介します。 — SEO Japan

このエントリを読んでいる皆さんなら、iOSまたはアンドロイドのモバイルデバイスを所有しているのではないだろうか。

今年の8月、アンドロイドが全世界のスマートフォン市場の半分に値するものの、売れた台数に関しては、iOSが市場の5分の1近くを占めており、アップルが世界1位に輝いている事実が判明した。

当然だが、アンドロイドがスマートフォン市場で旋風を巻き起こしている理由は容易に想像がつく。無料のオープンソースのプラットフォームとして、HTC、サムソン、エイサー、ソニーエリクソン、LG、モトローラ等、多くのメーカーが提供する複数のデバイスに採用されているからだ。

この点を考慮すると、グーグルが去る6月に毎日50万台のアンドロイドデバイスを稼働していると発表していたとしても特に驚いたりはしないだろう。この数字にはタブレットも含まれているが、それでも天文学的なペースであり、メーカーと消費者の間でアンドロイドの人気が高まっている点だけでなく、スマートフォンが社会の欠かせない一部になりつつある点を示している。

しかし、アンドロイドは最近別の理由で注目を集めている。このOSは複数の特許の問題の渦中にあり、アンドロイドの生き残りについて多くの人々が疑問視し始めているのだ – メーカーがアンドロイドを利用するために料金を支払わなければならないなら、魅力が大幅に薄れてしまう。

今年の5月、ザ・ネクストウェブは、HTCが販売したアンドロイドデバイスに対して1台につきマイクロソフトに5ドル支払っていると報告した。特許料として実際に金銭的な価値がつけられたのは今回が初めてであったが、メーカーは恐らくアンドロイドの利用に料金を支払っているであろうと前から言われていた。昨年の10月、マイクロソフトのCEO、スティーブ・バルマー氏は、次のように発言していた: 「アンドロイドには特許料金が課されている。無料とは言い切れない。」

先月、ザ・ネクストウェブは、マイクロソフトがサムソンに対してリリースしたアンドロイド製品1台につき15ドルを支払うよう求めていると伝えた。しかし、グーグルの利益の一部を狙っているのはマイクロソフトだけではない。アップルとオラクルもまた検索エンジンの巨人ことグーグルを包囲している。そして、その争いが今週公になった。

グーグルはこの特許を巡る状況において沈黙を貫いてきた。しかし、8月に投稿された公式のブログのエントリでは、グーグルでシニアバイスプレジデント兼チーフリーガルオフィサーを務めるデビッド・ドラムンド氏は、堂々とマイクロソフト、アップル、オラクル、そして、その他の企業が“インチキの特許を介して敵対的且つ組織されたアンドロイド対抗キャンペーンを始めた”として、堂々と非難していた。ドラムンド氏の批判は止まらない:

「スマートフォンには25万もの特許(その多くは疑わしい内容)の請求に関わっており、グーグルの競合者達は、アンドロイドのデバイスを消費者にとってより高価にする怪しい特許の利用料として「税金」を課そうとしているのだ。彼らはメーカーがアンドロイドのデバイスを売りづらくなるような状況を作りたがっている。新しい機能やデバイスを開発することで競争するのではなく、訴訟を通して戦っているのだ。」

この状況に混乱している人のために、一歩下がって、現状に至った経緯を確認しておこう。アンドロイドは巨大であり、競合者達はその支配を明らかに抑えようとしている。マイクロソフトを始めとするその他の企業がグーグルから利益を得ようとする理由がよく分からないなら、この投稿は大いに役立つはずだ。

まず、アンロイドの生い立ちを簡単に振り返ってみよう…

アンドロイドの略歴

Android 500x312 The rise of Android and why it could be about to crumble

アンドロイド社は、アンディー・ルビン氏、リッチ・ミルナー氏、ニック・シアーズ氏、そして、クリス・ホワイト氏によって2003年に設立された。2003年、アンドロイドを法人化する2ヵ月前に行われたビジネスウィークとのインタビューで、ルビン氏は、所有者の居場所や好みを把握するより賢いモバイルデバイスの開発には、大きなポテンシャルが存在すると指摘していた。「ユーザーが賢いなら、その情報は消費者製品に集められていく。」とルビン氏は述べていた。

このビジョンとは裏腹に、アンドロイド社が、携帯電話用のソフトウェアの開発を除き、実際に何をしているのかは明かさなかった。2005年、ビジネスウィークは次のように指摘していた: 「アンドロイド(www.android.com)は秘密裏に業務を行っており、事業の内容は謎に包まれている。」

しかし、2005年にアンドロイド社を買収し、グーグルの子会社化したグーグルは十分に把握していた。そして、アンドロイドをグーグルは加速化させ、ルビン氏はリナックスのカーネルを介してモバイルデバイス用のプラットフォームの開発を指揮し、そして、2008年9月、初のアンドロイドデバイスのHTC ドリーム 1をリリースした。しかし、その後、グーグルとアンドロイドに問題をもたらす原因となったのはそのリナックスのカーネルであった。

マイクロソフトとリナックス

Microsoft 500x315 The rise of Android and why it could be about to crumble

リナックスのカーネルについて簡単に説明しておこう。リナックスOSのカーネル(大半のOSの主要な構成要素)は、1991年に初めてリリースされた、無料且つオープンソースのソフトウェア(FOSS)の代表例である。

そのリナックスベースのOS(アンドロイドを含む)をマイクロソフトが知的財産の侵害と見なしていることは周知の事実である。フォーチュンは、2007年3月にマイクロソフトのスティーブ・バルマー氏は、この類の無料のソフトウェアの質が高いのは、200点以上のマイクロソフトの特許を侵害しているからだと述べていたと報告していた。

2007年を振り返ると、ウォルマート、AIG、そして、ゴールドマンサックスを含むフォーチュン500の企業の半数以上がデータセンターでリナックスを利用していた。つまり、マイクロソフトは多額の利益を失っていたことになる。スティーブ・バルジャー氏は、インタビューの中で次のように述べている:

FOSSのユーザー達も「その他のビジネスのルールに従わなければならない。フェアプレーに徹するべきだ」と述べた後、「この世界では、知的財産の保護に敬意が払われ、受け入れられるべきだ。」と続けた。

この問題の裏側にある歴史自体も興味深いが、これもアンドロイドが現在脅かされている理由の一つである。

グーグルの不満

Google 500x333 The rise of Android and why it could be about to crumble

それでは、マイクロソフトはなぜモバイル戦争でグーグルを直接攻撃しないのだろうか?恐らく、絶大な力を持つグーグルを追うよりも、アンドロイドデバイスのメーカーを狙う方がマイクロソフトにとって遥かに楽なのだろう。また、デバイス自体をターゲットにすることで、無料で利用することが可能なはずの大きな競合者のプラットフォームに値を付ける効果もある – グーグルはアンドロイドの利用料をメーカーに要求していないのだ。

マイクロソフトは、スマートフォンのマーケットでウィンドウズフォン 7を携え、スマートフォンのマーケットで人気を獲得しようと奮闘しており、タブレットのマーケットにも参入したばかりである。マイクロソフトが、アンドロイドデバイスのメーカーを特許の利用料を理由に追い回せば、アンドロイドはメーカーにとって魅力的な選択肢とは言えなくなるだろう。マイクロソフトはこの点に注目し、ウィンドウズフォンの売り上げよりも、より多くの利益をHTCのアンドロイドの携帯電話から得ていると主張している。驚くべき事実である。

アップルとオラクルもこの特許戦争に参戦しているが、両社はグーグルに何を求めているのだろうか?データベースソフトウェア会社のオラクルは、サンマイクロシステムズの買収を通じてJavaを入手した。その結果、アンドロイドに侵害されているとオラクルが主張する7つの特許に対して、グーグルを訴える権利を得たのだ。グーグルは数十億ドルを支払わなければいけない可能性があり、また、アンドロイドで今後利用するための特許の許可を取らなければいけないとされている。しかし、幾つか特許を侵害する以上の重要なポイントがこのストーリーには隠されている。

マイクロソフト、アップル、オラクル、そして、EMC コーポレーションを含むテクノロジー企業で構成される連合、CPTN ホールディングズは、ノベル社が販売し、その後アタッチメイト社が取得した882点の特許を確保している。そして、アップルとマイクロソフトをメンバーに迎えたロックスター連合は、先日、破産したカナダの通信会社、ノルテルの6000点の特許/特許申請書をオークションで獲得していた。

これが先程挙げたグーグルのデビッド・ドラムンド氏の非難の対象である。競合者が共謀してアンドロイドのコストを吊り上げようとしているのだ:

「共謀してノベル社の古い特許(マイクロソフトとアップルを含む[CPTN]グループ)、そして、ノルテル社の古い特許を手に入れ(マイクロソフトとアップルを含む[ロックスター]グループ)、グーグルが特許を入手することが出来ない状況を作っている。全てのアンドロイドのデバイスに$15のライセンス料金を基め、電話機のメーカーにとってウィンドウズフォン 7よりもアンドロイドデバイスのライセンスが高くなるようにしている。特許はイノベーションを促す役目を持っていたが、現在はイノベーションを止めるための武器として使われている。」

マイクロソフト、アップル、オラクル等の行動は、モバイル世界のグーグルとアンドロイドのパワーに対抗する武装行為かもしれないが、グーグル自身も過去に同じような特許取得戦略を実施していた。先日もIBMから1000点を超える特許を確保していた。

グーグルとアンドロイドの未来

それぞれの分野でイノベーションを達成してきた(そして今もイノベーションを続ける)企業が、特許を取得する戦略に訴え、競合者に勝とうとする姿は出来ればあまり見たくはない。事実、常軌を逸している。しかし、現在、特許訴訟は至る所で行われている。

グーグルのデビッド・ドラムンド氏が堂々と批判した行為にハッキリと現れている。グーグルはアンドロイドの未来を本気で心配しており、アンドロイドが携帯電話機メーカーのにとって有望なプラットフォームであり続けるため、積極的に戦っていかなければならないだろう。

IBMの特許取得を見れば分かるように、グーグルは、大幅に特許制度の改革が行われるまでは、この戦いから逃れることは出来ないだろう。そして、その改革が行われるのは随分と先になる。ドラムンド氏は次のように指摘している:

「また、グーグルは、グーグルの特許のポートフォーリオを強化することで、アンドロイドに対する非競争的な脅威を抑えるためのその他の手段にも注目している。私達が行動を起こさなければ、アンドロイドのデバイスの価格が高騰し – 今後の電話機の選択肢は少なくなってしまう。」

どちらの味方をするにせよ、マイクロソフトが、グーグルよりもアンドロイドから多くの利益を得ていると言うのは奇妙であり(少なくとも直接的に)、ウィンドウズフォン 7の利益を上回っていると言うのは異常である。

しかし、さらに奇妙なことがある。グーグルがこのような事態を想定していなかった点である。アンドロイド社を2005年に買収し、現在私達が利用しているモバイルOSを構築した際、特許訴訟を考慮してデザインする機会は数多くあったはずである。競合者をやり玉に上げるやり方は、焦っている何よりの証拠である。スマートフォンマーケットへの参入が比較的遅かったため、油断してマイクロソフトとアップルが持つ特許に対抗する策を見過ごしてしまったのだろう。

恐らく特許を巡る戦いでは今後も様々なドラマが展開されていくだろう。既に司法省は非競争的な意図があったかどうかを探るため、ロックスターグループによるノルテル社の特許の取得を調査しており、また、既にCPTN ホールディングズにはフェアな条件でライセンスを行うよう命令している。そのため、どんな方向に転がってもおかしくはない。

アンドロイドはスマートフォンマーケットで台頭しており、同じマーケットに参入している既得権利を持つライバル達のターゲットになっている。テクノロジー業界の重鎮であるグーグルは、戦い抜く覚悟を決めているが、現段階ではアンドロイドの未来がバラ色だとは思えない。

ライター紹介

ポール・サワーズはザ・ネクストウェブの英国 & メディアエディターである。ツイッターでフォローするなら: @TGW_Paulをフォローしよう。また、paul(at)thenextweb.comでeメールで連絡を取ることも可能だ。


この記事は、The Next Webに掲載された「The rise of Android and why it could be about to crumble」を翻訳した内容です。

Androidの人気が出た分、訴訟のターゲットになるという皮肉な現象が起きているようですね。記事にもあるように、グーグルよりマイクロソフトがAndroidで利益を上げるというのは心情的には納得がいかない感じもします。巨大企業化したGoogle、最近は批判されるケースも増えてきましたが、この件に関しては思わずGoogleを擁護したくなりますね。そしてビジネスとはいえ、アンチマイクロソフト派がまた増えそうな話でした。Androidの未来はどこに向かっていくのでしょうか? — SEO Japan

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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