“本物の”ピボットを成功させる方法

日本のスタートアップ業界(?)でもお馴染みになってきたピボットという言葉。当初のビジネスモデルや製品戦略を市場や顧客ニーズに合わせて方向転換することを指しますが、ともすれば最初に考えた(本人的には素晴らしすぎる)アイデアに固執しがちな起業家にとって、時にピボットを必要に応じて行えるかがスタートアップ成功の大きな鍵ともいわれています。とはいえ、言葉でいうのは簡単ですが、適切なピボットの決断はまた難しいのも事実。今回は正しいピボットを実現するためのる様々なアドバイスを、自らのスタートアップをSalesforceに売却した経験もある筆者が語ります。 — SEO Japan

ビジネスにおいてアナリティクスをうまく利用する方法に関して書かれた新しい本『Lean Analytics』の共同著者、Ben Yoskovitsによるゲスト投稿。Benは現在、2012年にSalesforceに買収されたGoInstantVP Prodoctだ。彼は定期的にInstigator Blogでブログを書いており、@byoskoでフォローすることができる。

あなたはピボットをしたことがあるだろうか? 恐らく。

それは怠けたピボットだった? そうではないといいのだが。

残念なことに、リーン・スタートアップの人気とそれが後押しするコンセプトも手伝って、ピボットは、もはや人々にとってあまり意味をなさないところにまで価値が下がった。私たちは、“ピボット”という言葉を聞くと、人々が言い訳としてピボットを使っている可能性が高いことを知っているため、うめくか肩をすくめる。

私たちは起業家が妄想的であることを知っている。それは私たちの本質の一部だ。私たちは、過酷なスタートアップライフを生き残ることを可能にする現実歪曲フィールドに囲まれていて、心の底から、自分が作っているものや心に描いているものは成功すると信じている。私たちは、その世界に入って行き、同じことを顧客、投資家、パートナー、従業員など他の人にも納得させなければならない。証拠もない中で、私たちは自分の妄想と現実歪曲フィールドを頼りにして、前進する。

しかし、現実歪曲フィールドが頑強で、フィクションと事実を分けることができないところまで行くと、あなたは衝突して酷いやけどに見舞われる。そして、それは痛い。

リーン・スタートアップは、現実歪曲フィールドに穴を開ける。それは、私たちが壁に当たらず(当たったとしてもあまり痛くない)適応できるようにする知的誠実性を必要な量だけ提供する。ピボットをするために。

では、ピボットとは何か?

私はこのように定義する:ピボットとは、有効な学習に基づいた、スタートアップの焦点の1つの側面の変化

もしあなたがビジネス全体を変えているのなら、それはやり直しだ。やり直すことは良いが、それはピボットではない(ちなみに、あなたを導くいくつかの洞察を持ってやり直さない限り、成功しないだろう)。ピボットは、やり直しよりもずっと狭い―そして、それは何かを学ぶことから始まる。それは、私たちが“有効な学習”と呼ぶものだ。あなたは、自分がどこでなぜピボットしているかを知っている時にピボットする。あなたは、向くべき方向を自分に言い聞かせる取り組み(リーン・スタートアップ方法論に取り組むこと)から洞察を得たのだ。

有効な学習

有効な学習は、リーン・スタートアップの中心にある。それは、仮説から始まり、その後にその仮説を証明もしくは反証するためのテストが続く。あなたはアナリティクスを利用して自分の実験の結果を測定する。例としてBackupifyを使用しよう。

Backupifyはオンラインバックアップストレージを提供する。彼らは、最初からリーン・スタートアップに厳密に従ってきたわけではないかもしれないが、創設者のRobert Mayは始めから自分のアイディアをテストしていた。“最初、私たちはサイト訪問者に焦点を合わせていた。なぜなら、人々に私たちのサイトに来て欲しかっただけだからだ。”と彼は言った。“その後、私たちはトライアルに焦点を合わせた。なぜなら、私たちの製品を人々に試してもらう必要があったからだ。” 彼らの最初の仮説は、“続けていくほど十分な数の人がオンラインバックアップストレージに関心を持つだろうか?”だったのかもしれない。訪問者を引き付けるため(そしてサインアップさせるため)の最初のウェブサイトと取り組みは実験だった。続ける価値があることを正当化するためには、“十分な人々”がいくつかのターゲット目標と共に定義されるのが理想的だ(10ユーザー?100ユーザー?1000ユーザー?)。

Robertは十分な人々がオンラインバックアップストレージについて関心があるということを学んだ。しかし、ビジネスが成熟しお金を請求し始めると、彼らは問題にぶち当たった。消費者のための顧客獲得費用が、生み出される利益に比べてあまりにも高いことが分かったのだ。

2010年初め、私たちは、年間で39ドルしか支払わない1人の顧客獲得のために243ドルを支払っていた”と、Robertoは説明した。“それは最悪の経済状況だ。大部分の消費者アプリは、何らかのバイラリティで高い獲得費用をうまく避けるが、バックアップはバイラルではない。だから、私たちは(消費者販売から)企業を狙うためにピボットをしなければならなかった。”

これについて重要なことが2つある:

  1. Robertは、多くの他のこと(人々がオンラインバックストレージに関心があること、顧客が十分な時間滞在していたことなど)を学ぶまでは、酷い経済状況について学ぶことができなかった。Backupifyが顧客を獲得して維持する方法を見つけて初めて、Robertは経済状態に目を向けることができたのだ。
  2. スケーラブルな消費者ビジネスを築くことができるというRobertの仮説は、その経済状況によって無効になった。Robertが学んだ“有効な”部分は、かなり明白だった:ただ数字が合わなかったのだ。

Backupifyは企業に焦点を合わせるためにピボットした。そしてその時から拡大に成功してきた。企業は(基本的に)同じサービスにもっと多く支払い、RobertはCPAと生涯価値との比率に目を向けることによって中心となる経済状態に目を光らせ続けることができるのだ。

有効な学習は常に量的なことではない。 あなたのスタートアップが本当に初めの頃は、質的なことになる可能性が高い。質的なフィードバックは厄介でもっと解明するのが難しいが、それはものすごく重要だ。私の経験では、10~20人に話せば(きちんと構成された顧客インタビューをすること)、決断をするのに十分な洞察を与えるパターンを目にする。そして、アンケートを利用してより質的なやり方でもっと多くの人に手を伸ばすことによってその学習を拡大することができる。

“怠けたピボット”

もしあなたが有効な学習をしていないなら、やみくもにピボットしているということだ。それが“怠けたピボット”である。そしてそれは失敗を招く可能性がある。怠けたピボットの思考プロセスは以下のように進む:

“はて、私がしているこれは、機能していない…なぜだか分からない…でも、こっちは面白そうだし良さそうだから、こっちをすることにしよう。”

うわっ。ほぼ確実に、あなたは自分の既存のアイディアに綿密な努力を十分に注がなかったのだ。そして間違いなく、あなたが他のことに移るための必要な洞察を持っているようには聞こえない。1つの光り輝く物体から別の物体へ飛び移っているのだ。

ピボットを成功させるためにリーン・アナリティクスを使用する

ピボットを成功させるためには、フォーカスと学習が必要だ。あなたは自分のビジネスに関して1つのこと―それはビジネスモデルかもしれないし、価格かもしれないし、ターゲット市場かもしれない―を変え、何が起こるか見てみる。Lean Analyticsを書いている間、私たちは、あなたのアイディアや製品をテストしてピボットすべきかどうかを決めるプロセスを説明するのに役立つサイクルを思い付いた:

リーン・アナリティクス・サイクルを見ると分かるように、あなたの仮定を適切にテストして必要ならば調整するために必要とされる集中的な注目と知的誠実性がたくさんある。これは、かなりメトリクスに焦点を合わせたアプローチだが、いくつか上位レベルの質問を自問自答することもできる。

自分のビジネスモデルを評価する

私は、“自分は本当に自分がやっていることを分かっているのか?”と自問するための強制因子としてLean Canvasを使うのが好きだ。もしあなたがLean Canvasに馴染みがないのなら、絶対に見た方がいい。それは1ページのビジネスモデルツールだ。自分のLean Canvasを見て(最初の20~30分のセッションで全てをまとめることができるはずだ)、自分が進み続けるための十分な答えを得たと正直に言えるだろうか?あなたは、自分が解決しようとしている問題を本当に理解しているだろうか?その解決策が正しいかどうか本当に知っているのだろうか?売り込むためのチャネルを理解しているだろうか?不正利益を持っているだろうか?

あなたは、次に何をすべきかについて良い決断を本当にすることができるように、自分のビジネスのこの定期的な再評価を経験しなければならない。

一部の人は、リーン・スタートアップ(ひいてはリーン・アナリティクス)を見て、それは全くメカニカルなプロセスで、魂に欠け、効果的ではないかもしくは文字通りにプロセスに従えば勝つほどにとても効果的だと考える。どちらも真実ではない。スタートアップは、工場内の製造ラインで作られるのではない。あなたは、自分のやる気と情熱を無視することはできないのだ。

Lean Canvasに従ってそれを使用し、自分のスタートアップが次のステップに移るための十分な情報と十分な自信を得たかどうか自分自身に尋ねるのだ。もしあなたが最初から問題を持って始めているなら、解決する価値があるほどに痛みを伴う問題を見つけたと心から言うことができるだろうか?見込み客に対して十分に優れた質のインタビューをしただろうか?

Lean Analyticsを書いている間に私たちが提案した1つのアイディアは、プロブレム・インタビューを採点することだった。このインタビューは公平に構成されるよう作られているため、特定の質問に得点を当てはめて人々の回答のより質的な感覚をつかむことが可能だ。これは、量的な回答だけを使うこと以上に、あなたが有効な学習を探し求めるのに役立つかもしれない。

情熱が重要だ

もしも自分のしていることに対して情熱を持っていなければ、あなたは失敗するだろう。成功するための努力はあまりにも大きすぎて、膨大な量の関心と愛着心なしではそれはできない。時々これはプロセスに焦点を合わせることと対立するが、あなたは、自分の情熱とやる気を知的誠実性と厳密さとを組み合わせる方法を見つけなければならない。

では、興味深いことを見つけたとしよう―あなたには自分の現在のビジネスに基づいた洞察力がある―それはあなたがどこに向かってピボットすべきかを教える。自動的にピボットをして前進する前に、自分自身に“本当に私は関心がある?”と尋ねなければならない。もしないのなら、ピボットすることが理にかなっているのかどうか再検討しなければならない。

私は、自分がしていることに没頭してそれにあまりに多く投資して、そもそもなぜ自分がそのビジネスに夢中になったのかを忘れてしまった人々に数多く出会ってきた(それは私にも起こったことだ)。そこまでいってしまうと恐ろしい。

ピボットする前に、向かっている方向に自分は情熱を持っているのか自問するのだ。もしその答えがイエスなら、ピボットしよう!もしその答えがノーなら、立ち止まる必要がある。一歩下がって再評価し、一息ついて考える時間を設けるのだ…または、中止する時なのかもしれない。負けを認めて、傷を癒して、もう一度戦うためにいつか戻って来るのだ。

ピボット前の簡単なチェックリスト

いくらかの有効な学習とどの方向にピボットすべきかに関して洞察を得たとしよう。そして、あなたはピボットをして前に進み続けたいと思っている。他にあなたに必要なことは何だろうか?

  1. 大きなビジョン。会社を始める前に、あなたは自分が何を成し遂げようとしているかの大きなビジョンを持っているべきだ。それがなければ、大きな可能性を持たない小さなもの(feature company = 機能だけの会社)を築くというわなに簡単に陥る。そして、大きく大胆な将来の目標を持っていなければ、ピボットは意味のないものになる。ピボットとは、大きなビジョンに向かってジグザグに進むことなのだ。
  2. 問題に対する深い理解。私が話をする起業家の大部分は、自分が解決しようとしている問題やそれが解決する価値があるのかどうかを心から理解していない。彼らは、十分にその問題を掘り下げていなかった。もしくは、普遍の真理を解決しようとしている。もしあなたが問題を根本的に理解しなければ、適切にピボットする方法を見つけ出すことはできない。
  3. 実際の(反証可能な)仮説。有効な学習だけでは十分ではない。あなたには、検証することができる反証可能な仮説が必要だ。さもなければ、自分のピボットがうまくいくかどうかを知るのはとても難しい。
  4. メトリクスと譲れない一線。リーン・アナリティクスの中核となるコンセプトは、トラックする適切な数字を選ぶことと比較するベンチマークを持つことにある。自分の重要な1つのメトリック(物事がどのように進んでいるかを教えてくれる1つのメトリック)を特定し、譲れない一線を描くのだ―つまりあなたが目指している目標である。もし目標が達成できないなら、再評価する。もし目標を達成したなら、次のステップに移る自信(それにデータ!)が持てる。

ピボットをするのは難しい。成功のチャンスを手に適切にピボットをすることは難しいことを確認するのだ。あなたは自分が好きなように目的もなくピボットしたり、怠惰にピボットしてベストを願うこともできるが、それでは自分自身に危害を与えていることになる。自分のピボットを公正とデータにつなぎ止めておくこと―素晴らしいものになるビジネスを見つけるチャンスを自分自身に与えるのだ。


この記事は、a smart bearに掲載された「The *real* pivot」を翻訳した内容です。

私も今年様々な新規サービス立ち上げ中ですが、色々と参考になるアドバイスが満載の素晴らしい記事でした。もちろん最初のビジネスプランがそのまま成功するのが理想ですが、正直そんなケースは宝くじに当たるより難しい確率かもしれません。自身のアイデアや信念に囚われすぎることなく、必要に応じて適切なピボットを繰り返し、事業を形にしていけるかがスタートアップ起業家&新規事業責任者の腕の見せ所です! — SEO Japan [G+]
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