Google+が次世代ソーシャルネットワークとして君臨するための道のりと課題

公開日:2011/07/14

最終更新日:2024/02/17

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ベータリリース後からギーク&アーリーアダプター層に高評価のGoogle+、最近ではFacebookやTwitterを駆逐する可能性もあるのでは?なんて議論まで出ています。今回は米国の有名ブロガーの発言からGoogle+の未来に関するポジティブ/ネガティブな意見を紹介し、またGoogleに近い人物からGoogleが考えているGoogle+も含めたGoogleのソーシャル戦略について詳しく紹介します。今まで聞いたことがなかった貴重な意見・事実が満載の記事。 — SEO Japan

長らく噂が絶えなかったグーグルの新しいソーシャルプロジェクトがついにデビューした。素晴らしいスタートを切ったことは疑いようもない。

フェイスブックスタイルの共有と会話、グループビデオチャット、モバイルグループメッセージ送信、そして、自動コンテンツ発見機能を併せ持つグーグル+は、運よく招待された初期導入者から既にお墨付きを得ている。アクセスを求める需要は高く、招待がeBayで販売されているほどだ。

しかし、グーグル+は一つ大きな問題を抱えている。それは、関連性である – ユーザーの日常生活に居場所を見つけ、ユーザーの望みを寸分違わず叶えなければならないのだ。

グーグル+の居場所

サービスを初期段階で導入した人達は高く評価しているものの、グーグル+を待ち構える問題は、初めの数日間でユーザーを喜ばすことではなく、ユーザーの日常生活で長期的な居場所を確保することである。それはどこになるのだろうか?現時点ではっきり特定するのは難しい。現在成功を収めているソーシャルネットワークを見ると、幾つかのコアのカテゴリに収まっていることが分かる:

共有および友達とのコミュニケーション: フェイスブック、Hyves、オーカット等

ちょっとしたアイデア、ニュース、意見を共有: ツイッター

ビジネスに特化したネットワーク作り: リンクトイン、Xing、Viadeo 等

それでは、グーグル+はどのカテゴリに収まるのだろうか?全てのカテゴリに当てはまる。「サークル」を使って友達や連絡先をまとめることが出来るなら、ビジネスに焦点を絞った情報を同僚と、夜遊びした写真を友達と、相手を選んで共有することが出来る。グーグルは大勢の人達を説得して、既存のソーシャルネットワークからグーグル+に切り替えてもらうことが出来るかどうかが大きな問題である。

この点では意見が分かれている。ロバート・スコブル氏は、「一般ユーザーはグーグル+に飛びつかない」(それがとっても嬉しくてしょうがない)と今週述べていた。スコブル氏は、グーグル+をギーク向けの完璧なサービスと評している。「よく考えてもらいたい。ギーク、アーリーアダプター、そして、ソーシャルメディアマニア達は、ジャスティン・ビーバー(註:アメリカの若手アイドル歌手)をキリストの再臨だと思っている人達に関わらずに自由に話す場所を必要としているはずだ。グーグル+こそがその場所である。この場所をメチャクチャにしたいだろうか?」

スコブル氏は、グーグル+はフェイスブックにはまず勝てないと考えている。「ほとんどの一般ユーザーは、フェイスブックに閉じ込められており、友達から紹介されるまでは、新しいソーシャルツールについて考える気すらない。グーグル+を利用している人達の大半はギーク、関係者、ソーシャルメディアのスター、ジャーナリスト等であり、普通の人達(例えば、母親)はしばらくグーグル+の名前を聞くことはないだろう。その時が来るまでにフェイスブックはグーグル+の最高の機能に対してリアクションを起こすはずだ(つまりコピーする)。」つまり、現時点でグーグル+に関わっていない一般のユーザーは、切り替える必要性を感じないと言うことだ。

的を射た意見である。フェイスブックは既にスカイプベースのビデオチャットを翌週にデビューさせると見られており、「切り替えるべき理由」の一つを打ち消そうとしている。さらに、友達と共有するために、フェイスブックのユーザーは新たなソーシャルツールの使い方を一から学びたいと思うだろうか?多くのユーザーにとってフェイスブックは単なるサービスではなく、友達と簡単にコミュニケーションを取る手段なのである。その目的を達成し、大きな失敗をしていないなら、ユーザーはフェイスブックにとどまるだろう。

反対にフェイスブックは危機にひんしていると信じている人達もいる。オールフェイスブックのブロガー、ニック・オニール氏は、一度試した場合、グーグルにログインしていると常に赤い通知カウンタがスクリーンの上部に現れる点を指摘している。グーグル+を一番先に立ち寄るサイトに決めていなくても、通知カウンタが常に視界に入り、友達が何をしているのか気になってしまうのだ。

テクノロジーニュースのアグリゲイターサイト、テックミームでエディターを務めるマヘンドラ・パスル氏は、フェイスブックは懸念を持つべきだと確信している。パスル氏は、フェイスブックはユーザーの好みに関する情報を多く得ているものの、このデータを使って、個人のページに表示されるアイテムの関連性を改善しているわけではないと指摘している。

「フェイスブックは、ユーザーの関心をつかむ点に関しては、それほど成功しているわけではない。多くのユーザーが「いいね!」しているのは友達に頼まれたからである。ソーシャルグラフに対するフェイスブックのこだわり、そして、必要以上の依存は、インタレストグラフを腐敗させてしまっており、長期的に見て、これがフェイスブックのアキレス腱になる可能性がある。一方、グーグル+は異なるアプローチを採用している。スパークス機能の目的は、本当の関心を捉えることである。現時点では、まだ原始的な状態だが、ここでは全体像について考えてもらいたい。」

「次世代」のソーシャルネットワーク

パスル氏はグーグル+の今後の方向性を推測しているが、グーグルは過去の失敗から学ぶだけではなく、莫大な予算を投じ、ワールドクラスのエンジニア達を割り当て、そして、その他の各種サービスで得た教訓を活かしてソーシャルネットワークの構築に取り組める貴重なチャンスをつかんでいる。

プライバシーに対するフェイスブックの怪しげなアプローチとは異なり、グーグル+では、配信する個々のアイテムを見る人を特定することが出来るだけでなく、いつでも自分のプロフィールが他のユーザーにはどのように見えているのかを確認することも出来る。ツイッターのユーザー達は関心を持っている話題のアイテムも、持っていない話題のアイテムも投稿しているが、グーグル+は、興味を持ちそうなユーザーをターゲットにメッセージを送信する機能を用意しているため、例えばギークのファンを地元の街の祭りに関する話題でスパムしなくても済むのだ。

そのため、グーグル+は「次世代」ソーシャルネットワークとして認められ、過去10年で登場したサービスから得た教訓を基にサービスを構築していくことが出来るだろう。ツイッター、フォースクエア、そして、タンブラに出資し、ベンチャー投資家として有名なフレッド・ウィルソン氏は、ソーシャルネットワークの失墜は、新しいネットワークの台頭ではなく、変化する環境への適応することが出来ない場合に起こると指摘している

「“破滅するサービス”の大半は自らその原因を作っていると私は思う。マイスペースやフレンドスターを破滅に追い込んだのはフェイスブックではなく、サービスの欠点を克服することに失敗し、そして、変化するマーケットに対応することが出来なかったため、これらのサービスは自ら破滅に向かって突き進んだのだ。その変化の幾つかは競合者によって持ち込まれたものもある。当然だが、これは、私達が投資している企業も含め、どの企業にも起こり得る。しかし、グーグル+の登場が破滅の原因になることはないだろう。」

ウィリソン氏は、グーグル+が、フェイスブック、ツイッター、またはタンブラのようなサービスの利用を好まない人達の代案として、競合者と肩を並べるスペースは残されていると考えている。「例えば、私の父はこのようなサービスの利用を求めていない。」とウィルソン氏は述べている。さらに同氏は、「しかし、グーグル+なら好きになるかもしれない。eメールに近いからだ。学生時代の友達、地元の友達等、友達のグループを管理し、素早く且つ容易に情報を共有することが出来るのだ。」と続けた。

同様に、ジャーナリズムの学者であり、自らグーグルのファンと認めるジェフ・ジャービス氏は、公開しているグーグル+のエントリで、フェイスブックは関係を築くことに、ツイッターは情報を広めることに、そして、ブログは文章を綴ることに重点を置いているが、グーグル+は共有を最優先しているのではないかと示唆していた。ユーザーが最終的に利用するかどうかに関わりなく、基本的な方向性は今後見えてくるだろう。しかし、タンブラのターボエンジン搭載版として、間違いなく自分の居場所を見つけるだろう。

グーグル+と“推奨の問題” – オーディエンスを熟知せよ

グーグル+のもう一つの関連性の問題は、適切な人達と適切なコンテンツを共有することが難しい点である。これはグーグルがゼロから作っている機能だが、的確に行われたのだろうか?ロバート・スコブル氏は、何かしら興味があるトピックにつながりのある人達のサークルを作っても、必ずしもそのトピックについて会話が行われるとは限らない不満を説明していた。

ベンチャーキャピタリストを集めてサークルを作った。このリストを今見ている。ベンチャーキャピタリストに話してもらいたいことが全く話題に上がっていない。新しい会社への投資に関する会話が行われ、シリコンバレーを情報通の視点で見ることが出来たり、会社を経営して、より多くの利益を得る方法に関するアドバイスが与えられているわけではない。

そうではなく、伊藤穰一氏のダイビングの写真、ライアン・スプーン氏のフェイスブックプレイシズに関する話、デビッド・リー氏がプロフィールの写真を変えたと言う情報、フランシーン・ハーダウェイ氏が投稿した風変わりなGIFアニメ、ポール・ブヘイト氏によるツイッターのセレブに関する投稿。このようなアイテムばかりが目につく。

その通りだ。この問題は、現在、情報を欲しい人達だけで共有するようにサークルをうまくまとめることでしか解決することが出来ない。例えば、スコブル氏が言及したベンチャーキャピタリスト達は、休暇中の写真は個人的な友人と共有し、テクノロジーの投資に関する考えは公開すると言う選択をすることも出来たはずだ。ユーザー達はグーグル+に慣れつつあるため、徐々に改善されていくはずだが、この問題は+の興味深い面を浮き彫りにしている – それは、関連性は受信する側ではなく、送信する側が管理しなければならない点だ。

私を“テックブロガー”のサークルに所属させることも可能だが、皆さんを(誤って)“写真が好きな人達”のサークルに入れてしまう可能性がある。皆さんが興味を持つであろうテクノロジーに関する投稿を行ったとしても、皆さんを誤って分類してしまったため、この投稿を皆さんが知る術はない。一方、なぜカメラについてばかり私が語っているのか皆さんは気になるだろう – それでも私は関係のある話をしようと心掛けているのだ。それでも、私は皆さんを誤ったサークルに“入れてしまった”ために、マイナスの効果をもたらしてしまう。

当然だが、誰もが迷惑だと感じるわけではない。事実、多くのユーザーが全てのフォロワーに対して様々な話題の話をしているにも関わらず、ツイッターは成功している。ユーザーは、憧れのヒーローがお昼に何を食べているのか、またはテレビで何を見ているのか等を知る“人間的”な面を楽しんでいる。それでも関連する情報を共有する点を前面に押し出しているなら、適切な情報を提供するためには、オーディエンスのことを十分に把握しなければいけない点は、奇妙な弱点であり、また、ユーザーが増えつつある中で徐々に表面化しつつある。

この問題に対するアプローチとして、関心について知っていることを基にサークルに人を分けていくように勧める戦略が考えられる。グーグルは、ユーザーの好みおよび関心に関する情報をグーグル+、グーグルプロフィールでの行動、さらには検索履歴を基に大量に手に入れることが可能である。グーグルはこの方法を実行する際には十分に気を配る必要はあるが、実行することが可能な事実は、関連性の問題を解決することが出来るサービスがあるとすれば、グーグルがその候補に上がることを意味する。

長い道のり

長年に渡ってグーグルのスタッフと太いパイプを持つジャーナリスト、スティーブン・レヴィー氏は、今週、ワイアードで今週立ち上げられたプラスは、グーグルが考えるソーシャルメディアの全体図のほんの一部に過ぎないと説明していた:

「火曜日に発表されたサービスは、グーグルの計画のほんの一部に過ぎない。同社が“ローリングサンダー”と呼ぶアプローチの中で、グーグルは静かに野心的なソーシャルストラテジーを推進してきた ? 予定表には100回を遥かに超えるローンチが計画されている。一部のローンチが盛り上がらなくても、エメラルドシーチームのリーダー達は、全く気にしていなかった ? 盛り上がりに欠けることは計画の一部なのだ。グーグルは、意識的にこのような製品を全体的な戦略に当てはめないようにしている。」

レヴィー氏は、グーグル+のローンチが、グーグルに“人間性”をもたらす長い道のりの節目の一つに過ぎないと述べている。この長く辛い道のりは、確実に報われ始めている。グーグルは明らかに失敗に終わったグーグルから多くの教訓を得ている。今週、グーグルの動向を調査しているジーナ・トラパーニ氏がグーグル+がバズとウェーブから得た教訓をリストアップしていた。大々的なフィールドテストから、ユーザー中心の開発アプローチ、優れたモバイルアプリとの同時リリースに至るまで、グーグルは以前の過ちで得た多くのフィールドバックを採用している。

現在もフィードバックを活用している。グーグル+がローンチされてから数時間以内に、サークル限定で共有した投稿が、サークル内のユーザーにより一般(その他のユーザー)に公開されてしまうと言う、プライバシーの抜け穴が見つかっていた。グーグルはすぐに行動を起こし、限定された投稿の一般公開をブロックした。また、グーグルのスタッフはこのサービスにおいて非常にアクティブに活動しており、ユーザーからのクレームや提案を見つけ、会話に参加している。

グーグル+が最終的にどこに居場所を見つけようとも、まだやらなければならないことは無数にあり、今の段階で判断することは出来ない。しかし、グーグル+のチームがユーザーの懸念に迅速に対応し、フィードバックを基にサービスを形成している点を考慮すると、数週間後にはさらに強力で、さらに関連性の高い製品になっている可能性は高い。

ソース:

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ライター紹介

マーティン・ブライアントは、ザ・ネクストウェブのヨーロッパ在住のエディターであり、英国マンチェスターを拠点に活動している。ツイッター個人のサイトをチェックしておこう。


この記事は、The Next Webに掲載された「Google+ and its two-pronged relevance problem」を翻訳した内容です。

アーリーユーザー層にも受け入られている感のあるGoogle+ですが、勝負は「ユーザーの日常生活で長期的な居場所を確保すること」 ができるかどうかですからね。現状ではFacebookを倒せるかというのは酒場の議論の範疇にしか過ぎない気もします。しかしギークの象徴のようなロバート・スコブル(元マイクロソフトの社員ブロガー)がGoogle+否定派だったのは興味深いです。元マイクロソフトの社員だからってことはないでしょうが。。。

一方、Google+勝利の可能性が、Google+がGoogleと連動して既存のGoogleユーザーにGoogle+の友達の利用状況が常に表示される点にある、という意見も納得できるものですよね。Google+の成功はGoogleがいかに現在の圧倒的な検索(&メール&その他・・)サービスと融合しきれるかという点にあるのかもしれません。

そして最後の、Googleに近い人による「Google+は、Googleが考えるソーシャルメディアの全体図のほんの一部に過ぎず、今後100回を遥かに超えるローンチが計画されている。Google+はGoogleに“人間性”をもたらす長い道のりの一つに過ぎない。」という発言も極めて興味深いものでした。Google+がGoogle BuzzやWaveとは企業としての重要度・真剣度が確実に違うのだけは間違いなさそうです。今後のGoogle+、そしてソーシャルプラットフォーム覇権争いの展開がますます楽しみになってくる記事でした。 — SEO Japan

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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