Googleがオーサーシップを諦めた理由を検証

最終更新日:2024/02/16

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Googleが導入を積極的に推進していたオーサーシッププログラムがまさかの完全終了となったようです。検索結果上の著者名表示は既に取り止めとなっていましたが、オーサーシップデータを利用すること自体を終了することを正式に発表しました。SEO的にいずれ役立つはずとGoogle+がイマイチ不人気な日本でも頑張って導入を行ってきたウェブマスターの皆さんには衝撃ともいえるこのニュース発表、改めてオーサーシップの歴史を振り返り終了に至った理由を考察した記事をサーチエンジンランドから。 — SEO Japan

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3年間に渡って行われた、素晴らしきGoogleオーサーシッププログラムの実験がついに終了した– 少なくともしばらくの間…。

本日、Googleウェブマスターツールを担当するジョン・ミューラーが、Google+の投稿の中で、Googleが、検索結果でオーサーシップを表示する取り組みを終了し、今後は、rel=authorマークアップを利用したコンテンツのデータを追跡することはないと発表した。

マーク・トラファゲンと共同で作成した今回の詳細な記事では、・オーサーシップ終了の告知、・オーサーシップの歴史、・中止の要因として挙げられた理由を裏付けるために行われたStone Temple Consultingによる調査、そして、・検索におけるオーサー(著者)のオーソリティの未来に関する考えを取り上げている。

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消滅へのカウントダウン

オーサーシッププログラムの中止が発表されるまでの8ヶ月の間に、2つの主要なオーサーシップのリッチスニペットが削減されていた。まず、2013年12月には、同年の10月に行われたPubconのキーノート講演で、ウェブスパムの取り組みを統括するマット・カッツが予告した通り、クエリ一つにつき表示するオーサーの写真のスニペットが姿を消した。そして、12月に入ると、一部のオーサーシップの結果のみに写真が掲載されるようになり、残りの結果は署名欄のみになった。

続いて、2014年の6月、世界の検索結果から全てのオーサーの写真が削除され、全ての正規のオーサーシップの結果に、署名欄のみが掲載されるようになった。

当時、ジョン・ミューラーは、Google+の投稿で、Googleがデスクトップ検索とモバイル検索のUXの融合を目指しており、オーサーの写真はモバイルの限られたスクリーンと回線容量では、あまりうまくいかなかった点を理由として挙げていた。また、オーサーの写真があってもなくても、「クリックの行動」に大きな違いがなかった点も明らかにされていた。

Googleオーサーシップの歴史を簡単に振り返る

オーサーシッププロジェクトのルーツにあるのは、2007年のエージェントランクの特許である。Googleの特許に詳しいビル・スラウスキが説明していたように、エージェントオーサーランクの特許には、複数のコンテンツを、一名の(もしくは数名の)エージェント(オーサー)を示すデジタル署名を結びつけるシステムが描かれていた。

この認識システムは、エージェントのコンテンツに向けられた各種の信頼のシグナルおよびオーソリティのシグナルに応じてスコアを与えるために用いられ、さらに、このスコアは、検索のランキングに影響を与えるために利用される可能性があった。

エージェントランクは、実用的に適用する手段がない状態では、理論的な概念でしかなかったが、Googleが、構造化マークアップの基準としてschema.orgを採用するようになったことから、180度運命が変わった。2011年6月に投稿されたブログの記事で、Googleは、オーサーシップのマークアップへの対応を始めると発表していた。そして、rel=author、 & rel=me タグを使って、サイトのコンテンツをマークアップし、コンテンツをオーサーのプロフィールと結ぶ取り組みをウェブマスターに促すようになった。

オーサーシップが、本格的にGoogleに貢献する上で最後のパズルのピースの役目を果たしたのは、2011年6月末にリリースされたGoogle+であった。Google+のプロフィールには、オーサーとコンテツを結びつけるGoogleの共通特定プラットフォームとしての役目が与えられた。

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ハンソン & カッツ

同年の8月に配信されたYouTubeの動画で、当時、オーサーシッププロジェクトを統率していたオサー・ハンソンとマット・カッツは、コンテンツをGoogle+のプロフィールと結びつけた方が良い理由を詳しく説明し、その結果、プロフィールの写真が検索結果に表示されると指摘し、そして、初めて、オーサーシップのデータが、ランキングの要素として用いられる可能性が「今後」あると述べていた。

その後の3年間、オーサーシップには、様々な変更が加えられていったが、ここでは割愛させてもらう(アン・スマーティが、オーサーシップの変更の歴史をまとめているので、興味がある方は目を通すと良いだろう)。マット・カッツを始めとするGoogleの広報は、オーサーのオーソリティに関するコンセプトに、Googleが、長期的に力を入れていると繰り返し言及していた。

Googleがオーサーシッププログラムを終了させた理由

Googleは、同社が始めた取り組みが何であれ、不可侵、または、不死の称号を得ることはないと何度も指摘してきた。あっさりと廃止されたGoogleの製品とサービスをリストアップしていけば、小冊子を作れるボリュームに達する。

このような製品のシャッフルが行われるのは、主に、Googleが、徹底してテストを実施しているためだ。全ての製品、そして、各製品に対する変更、または、工夫に対して、絶えずテストが行われ、評価される。利用者の人数が足りない、ユーザーに大きなメリットを与えていない等、Googleの目標に到達したいものは、見捨てられる。

ジョン・ミューラーは、この記事を共同で綴ったマーク・トラファゲンに対して、3年前から集めてきたデータを参考にする限り、オーサーシップの結果を表示する試みは、データを処理するために用いるリソースを考慮すると、十分なメリットを与えているとは言えないと、述べていた。

ミューラーは、オーサーシップの実験が、期待外れに終わった2つの具体的な領域を挙げている:

1. オーサーとウェブマスターへの普及率が低い。この記事の後半で提供する調査のデータにも表れているが、オーサーシップのマークアップに参加するオーサーは、ひいき目に見ても、まばらであった。また、参加者がゼロの分野も数多く存在した。サイトが参加を試みても、マークアップを誤ってしまうケースも多かった。さらに、大半のテクノロジーに詳しくないサイトのオーナーやオーサーは、マークアップとリンクに対して、あまりにも複雑だと感じており、そもそも、実装を試みる確率は低かった。

このような問題を受けて、Googleは、2012年の始めに、マークアップが存在しないケース、あるいは、不適切に行われているケース、もしくは、オーサープロフィールのリンクが存在しないケースで、オーサーシップを自動的に与える取り組みを始めた。2012年11月、Forbesが作成した50名の影響力の強いソーシャルメディアマーケッターのリストから、30%はオーサーシップマークアップをブログで使っている点、そして、34%はマークアップを使っていないものの、オーサーシップのリッチスニペットを得ている点をマーク・トラファゲンが発見している。これは、エリック・エンゲが実施した調査で得られたデータとも一致している。この調査に関しては、後程詳しく説明する。

しかし、オーサーに対する自動アトリビューションの取り組みは、作家のトルーマン・カポテが、死後28年が経過しているにも関わらず、New York Timesのオーサーとして表示される等、エラーが続出し、Googleは恥をかくことになった。当然だが、ウェブページのオーサーを特定し、コンテンツと結びつけ、続いて、信頼性のレベルとオーソリティのレベルを隠れたランキングの要素として評価するGoogleの願いは、Googleに詳しくない人達との協力に左右される状況では、見通しは明るくなかった。

2. 検索エンジンのユーザーに対するメリットが少ない。今年の6月、検索結果からオーサーの写真を削除する件を発表した際、ジョン・ミューラーは、オーサーシップのスニペットがあるケースとないケースを比較したところ、「クリックの行動」にほとんど違いがなかったと指摘していた。この発言は、オーサーのスニペットが、クリックスルー率を高くすると確信していた人達にショックを与えた(そして、この情報の真偽を疑う人達も多かった)。

マーク・トラファゲンとの今回の変更に関する議論の中で、ミューラーは、Googleが集めたデータを参考にする限り、オーサーシップのスニペットから、ユーザーは十分なメリットを得ていなかったと何度も主張していた。「メリット」が何かは詳しく説明してくれなかったものの、検索ページでのユーザーの行動が、オーサーシップのスニペットの存在の影響を受けているように見えなかった、と推測することが出来る。もしかしたら、ユーザーは、何度も見るうちに、目新しさを感じなくなったのかもしれない。

(この記事を書いている時点で)Google+のアカウント(パーソナライズ検索)にログインしている状態では、Googleのネットワークに参加している人物のGoogle+のコンテンツに対しては、引き続きオーサーの写真が掲載されている。

ミューラーは、この写真の表示を中止する予定は今のところない、と語っていた。しかし、トラファゲンの下には、写真が表示されなくなった点を指摘する報告が幾つか届いている。Googleは、パーソナライズの結果からオーサーの写真を本当に削除しているかどうかに関して、今後も動向を追い、ここで最新の情報を提供していく。

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Googleが、一部のパーソナライズの結果に対して、引き続きオーサーの写真を表示するなら、個人的な関係持つ人物がコンテンツを投稿している場合、リッチスニペットがユーザーにメリットを与えることがデータに出ていると推測することが可能だ。この件に関しては、最後のセクションで再び取り上げるつもりだ。

rel=authorの実装に関する調査

幸運にも、弊社、Stone Temple Consultingは、rel=authorマークアップの利用に関する調査をまとめるプロセスを行っていた。データを見ると、Googleがこの取り組みで直面していた問題の一部が、浮かび上がってくる。この調査により、利用者が少ないこと、そして、rel=authorを試みたものの、正確に実装されたケースが少ないことが明らかになった。さらに、オーサーによる利用も少なかった。それでは、実際のデータで確認していこう。

オーサーシップの普及

私達は、150の主要なメディアサイトから、500名のオーサーを選んだ。Google+のプロフィール内でのオーサーシップのタグ付けの実施状況に関するデータを以下に掲載する:

G+のプロフィールでの実装状況 人数 全体の%
プロフィールがない 241 48%
プロフィールはあるが、コンテンツを投稿するサイトにリンクを張っていない 108 22%
プロフィールがあり、1本、または、数本のリンクをコンテンツを投稿するサイトに張っている 151 30%

 

なんとオーサーの7割が、オーサーシップをメジャーなウェブサイトで投稿したコンテンツに結びつけていない現状が判明した。もちろん、Googleが、この類の取り組みを宣伝する仕組みにも原因がある。そもそも、Googleは宣伝を行っていない。インターネットの口コミに頼っており、これでは、均等に情報が伝わるわけがない。

パブリッシャーの利用

150サイトのうち50サイトは、オーサーページを用意していない。また、用意しているサイトであっても、実に3/4以上が、オーサーの名前しか、アトリビューションの要素を提供していない。残りのサイトでは、記事の下の方でアトリビューションへのリンクを掲載していたが、オーサーの大半は、この利点を活用していなかった

この投稿のために、オーサーページを持つ20のサイトを選び、オーサーシップの実装における成功を詳しく分析した:

  1. 20サイトのうち13サイトが、オーサーシップのマークアップを実装していた(65%)。
  2. 実装を試みた13サイトのうち10サイトにエラーが見られた(77%)。
  3. 実装を試みた13サイトのうち12サイトが、GoogleのSERPでリッチスニペットを受けていた(92%)。

オーサーシップを実装する方法に関する資料は、ウェブを探せば、山ほど見つかる。しかし、タグの形式が誤っているサイト、そして、オーサーシップを実装しているものの、オーサーのG+のプロフィールにリンクを張っていないサイト、タグが矛盾し、ある記事に対して数名の人物をオーサーとして報告するサイトを私達は発見した。また、2名のオーサーが記事にタグ付けされていたものの、2人目のオーサーのみがGoogle+のプロフィールにリンクを張っており、Googleが2人目のオーサーのみに功績を認めていたケースにも遭遇した。

  1. 20サイトのうち、7サイトは、オーサーシップのマークアップを実装していなかった(35%)。
  2. 7サイトのうち2サイトは、GoogleのSERPでリッチスニペットを受けていた(28%)。

マークアップが存在しないにも関わらず、Googleがリッチスニペットを与えていたケースでは、オーサーは、Google+のContributor Toのセクションからサイトにリンクを張っていた。

調査のまとめ

手短に言うと、適切にrel=authorを実装しているサイトは、極めて少ない。Googleは、多くの問題に直面しつつも、オーサーとパブリッシャーを結びつける試みを徹底的に行った。より大きな視点に立って考えると、パブリッシャーからデータを集めるのが、いかに難しいかが分かる。とても難しく、やっとのことで得たにも関わらず、その情報の質は低い。

結論

Googleは、過去3年間、オーサーのオーソリティを理解することに関心を持っていると何度も述べていた。この点に関するエリック・シュミット会長による発言を忘れることが出来ない:

検索結果で、認証を受けたオンラインプロフィールに結び付けられた情報は、認証を受けていないプロフィールよりも、高くランク付けされる。すると、大半のユーザーは、自然に、上位の(認証済みの)結果をクリックするようになるだろう。その結果、匿名を維持するために支払う対価は、ますます高くなっていく。

エリック・シュミット — The New Digital Age

しかし、この問題を解決するのは、非常に難しいことが判明した。このデータを望むものの、現在のアプローチは有効ではなかった。先程も申し上げたように、これは、オーサーシップの取り組みが見捨てられた2つの大きな理由の1つである。

ジョン・ミューラーが特定したもう1つの問題も同じぐらい重要だ。写真であれ、あるいは、単純に署名欄であれ、何らかの形式のリッチスニペットを取り込むアプローチは、SERPでエンドユーザーにメリットを与えていなかった。Googleは、検索の品質を絶えずテストしており、特別扱いは存在しない。エンドユーザーがメリットを受けていないなら、Googleは、容赦なくその取り組みを終わらせる。

また、この試みに費やす処理能力の影響も無視するわけにはいかない。Googleは、無限の処理能力を持っていると考えたくなるが、それは事実とは異なる。そんな力を持っていたなら、光学式文字認識技術を使って画像内のテキストを読み、画像処理技術を用いて写真を認識し、音声テキスト変換技術を使ってインターネットの動画を文字に起こし、そして、毎日すべてのウェブページをクロールする。しかし、Googleにも限界はある。

Googleは、処理能力の利用に関して、意識的に判断を下さなければならない — つまり、予算を賢く割り当てる必要がある。現時点で、オーサーシップの試みは、与えていた予算の額に見合う結果を残していないことになる。

モバイルの台頭が、この結果に影響を与えた可能性もある。オーサーシップのリッチスニペットを導入したものの、SERPのクリックの行動に大きな変化は見られなかった、とジョン・ミューラーが語っていたが、現在、Googleのトラフィックの半分はモバイルである。モバイルデバイスの貴重なスクリーンのスペースを、このタイプのマークアップで食いつぶしてしまうのは、得策とは言い難い。

それでは、オーサーシップは二度と帰ってこないのだろうか?恐らくその可能性が高いと私達は見ている。コンセプト自体は良かった。トピックに関する知識に差があると言う考えに関しては、間違えていないと思う。この問題を解決するための試みが失敗しただけであり、コンセプト自体は失敗していない。

セマンティック検索への取り組みを強化する上で、Googleは、マークアップ等の人間の行動以外で、例えば、信頼されているオーサー等のエンティティを特定する方法を作り出さなければならない。先日行われたナレッジボールトプロジェクトの告知は、Googleがセマンティック化を進めていることを裏付けている気がする。従って、このプロジェクトを介して、Googleは特定する取り組みにアプローチする可能性があると言えるだろう。

もし、本当にこのデータをGoogleが利用するようになったら、どのような結果になるのだろうか?インパクトがあまりにも小さく、全く気がつかない可能性も十分にあり得る。恐らく、オーサーの写真が結果に表示されることは二度とないだろう。何らかの形式のオーサーランクが現れる可能性はあるが、十分にパーソナライズされた形式で表示されるか、あるいは、その他の多くの要素と組み合わされ、事実上、検知することが出来なくなるのではないだろうか。

つまり、しばらくは、オーサーシップに会うことは出来ない。オーサーシップは、気高く、輝かしい実験であり、我々は寂しい思いをするだろう。しかし、今後、オーサーシップにとってさらに素晴らしい展開になることを願っている。

エリック・エンゲマーク・トラファゲンによる共同作成。


この記事は、Search Engine Landに掲載された「It’s Over: The Rise & Fall Of Google Authorship For Search Results」を翻訳した内容です。

今後のSEOではオーソリティ構築が不可欠であり、その要素として重要視されていたオーサーシップだけに、その突然の終了には正直私も驚きましたが、ダメならダメで次に進むスピード感はGoogleならではですね。今後どのような形でオーソリティの参照データを構築していくのか、Googleの新たな挑戦が気になるところですね。 — SEO Japan [G+]

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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