Googleは自社コンテンツにトラフィックを送ってもいいのか?

公開日:2010/12/21

最終更新日:2024/03/18

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Googleが自社コンテンツにトラフィックを送りすぎているのでは?という議論がGoogleのサービスに多様化と共に米国で話題になっています。今回はサーチエンジンランドがそんな議論に関する状況をまとめてくれた記事を紹介します。いずれ日本でも湧き上がる問題かも? — SEO Japan

自分のサイトにトラフィックを差し向けるグーグルの権利が、政策を巡る協議で再び中心的に取り上げられている。欧州委員会がこの問題をグーグルに対する大規模な反トラストの調査の一部として扱っているのだ。これは、ITA 買収の連邦規制機関による見解においても重要な位置を占める問題である。

検索における優遇

今週、ウォールストリートジャーナル(その他のメディアは準備中)に、多数のウェブ企業のCEOが、グーグルが自分のサイトを「優遇」しているとして非難する、もしくは懸念を述べる記事が投稿された:

グーグルはユーザーがオンラインで検索を行う際に徐々に自身のコンテンツをライバルのウェブサイトよりも売り込むようになっている。その結果、競合するサイトは非難の声を上げている。

インターネット界の巨人ことグーグルは、地域のビジネスの情報やグーグルヘルスサービスへのリンクをグーグルではない他社のリンクの上に表示している。

グーグルはこの記事に応じる形でブログのエントリを投稿し、ユーザーのために最高の結果を提供する取り組みを行っているだけであり、パブリッシャーに対する義務は負っていないと説明した:

誰かがグーグルで場所に対する検索を行った際、グーグルは今でも良質なサイトに向かう通常のウェブの結果を提供しています。私たちは単純に場所に関するこのような結果をまとめ、探している情報を遥かに早く見つけることが出来るようにしているだけです。例えば、今年の年明け、グーグルはプレイス検索を導入し、ユーザーが行き先についてより多くの情報を得た上で決定を下すことが出来るようにしました。プレイスのページは、特定の場所に関する結果を整理して、ユーザーが質の高い写真、レビュー、そして、重要な事実のソースを探せるようにしています。こうすることで、遥かに容易に場所を見たり、比較したり、そして、地域の情報を持つ良質のサイトを見つけることが出来るようになるのです . . .

スーザンとウディが綴っているように、私たちはグーグルをウェブサイトのためではなく、ユーザーのために作りました。喜んでウェブマスターと今後も会話を継続し、良質な製品を作っている点を裏付けていきますが、やはり、ユーザーを優先することになります。ユーザーの期待に応えることが出来なければ、瞬く間にライバルに逆転されてしまうでしょう。

この主張には、複雑な技術の疑問および哲学的な疑問が指摘されており、定期的に話題に上がっている。グーグルは、事実上検索業界には敵がいないため、パブリッシャーのサイトの成功の鍵を握っていると言う立場を取っているなら、グーグルが多くのライバルに囲まれていると言う立場で考えた上で出した答えと全く別の答えが見えているだろう。そのため、お馴染みの口癖がこのエントリの中でも繰り返されている、「瞬く間にライバルに逆転されてしまうでしょう」。

グーグルの“定義”に応じて、法律および政策の影響が及ぶのだ。

「検索の中立」の問題

「検索の中立」と言う問題のある用語が、グーグルの検索独占に関する記事と関連して最近よく使われるようになっている。私の知る限り、グーグルが検索結果のなかで大きな規模の組織に“偏っている”かどうかに関して、マイノリティメディアおよびテレコミュニケーションズ委員会が申し立てた訴状のなかでこの用語は初めて用いられた。この考えは、公正さにおける暗黙の理解が含まれており、一理あるが、当時、私はこの手のアイデアを実行に移すのはまったくもって現実的ではないと一刀両断した:

検索エンジンは、特定の種類の結果に特権を提供することで、不均衡を是正するのだろうか?そんなことをしたら非難の嵐に晒されるだろう。

「検索の中立」の概念は、グーグルは自分のサイトを優先するべきではない点(あるいはアルゴリズムを変更するべきではない点)を主張するために、グーグルの敵によって掻き立てられている。この点はウォールストリートジャーナルの記事にも見受けられる:

この秋、グーグルは多数のプレイスページへの関係を結果の1ページ目でさらに際立たせた。例えば、「Berlin hotels」の検索に対して、トリップアドバイザー等のサイトを結果ページの下部に追いやった。事業に対するプレイスページは、地図や営業時間等の基本的な情報、そして、シティーサーチやYelp等のサイトからユーザーが作成したレビューのまとめを提供する。グーグルの製品管理ディレクター、カーター・マスラン氏は、グーグルと地域の情報サイトとの間に“ちょっとした”緊張が張り詰めている点を認めている。しかし、同氏は、事業に関する情報をより早く与えることでユーザーエクスペリエンスを改善するため、そして、レビューサイトへのリンクを提供するために変更を加えたと述べている。

トラフィックを失って腹を立てる

パブリッシャーにとっては不意打ちであったのだろう。そして、グーグルのアルゴリズムへの変更が彼らを混乱に貶めているのだ: “以前よりもトラフィックの量が減っています”ウォールストリートジャーナルの記事が指摘しているように、ビングもまた同じように自分のサイトにトラフィックを向けることがあるのだ。幅広い意味での検索の進化では、ヤフー!を含むすべての検索エジンが「リンクではなく答え」に向かっている。要するに、より構造化されたコンテンツがSERPの1ページ目に増え、第三者のサイトへのクリックスルーが減りつつあると言うことだ。

パブリッシャーは、「条件が公平」ではなく、グーグルに有利だと主張するかもしれない。確かに一理あるが、すべて正しいなら、すべてのグーグルの製品がそれぞれの領域で独走するのではないだろうか?これは事実とは異なる。グーグルは標準以下の製品を数多く所有している。

しかし、オンライン検索は“インターネットへの入口”であり、グーグルは米国のクエリの65%を“所有”しているため(欧州の複数の国々ではさらに多い)、このような問題を議論するのは無理がある。しかし、ヤフー!とビングを合わせると28%のクエリを持っていることになる。これは競合者と言えるのではないだろうか?または複占と言えるのではないだろうか?

テクノロジーにおいては、競争の激しいマーケットを規制して是正することは出来ないが、不均衡をもたらす企業に対する競争を取り戻すことは出来る可能性がある。結局、選択を保護し、エンドユーザー(消費者、広告主)に影響を与える可能性がある価格の歪みを防ごうとしていることになる。このような価値は、この議論では関係がないように思える。競合する企業のCEOは、長期的に見ると、自分のサイトが倒産すれば、選択肢が少なくなると主張するだろう。しかし、サイトがSERPで1位もしくは2位に値すると言い張ることは出来ない。

マップクエストの重役は、トラフィックを自分のサイトに差し向けるグーグルの力によって、2年前、長い間地図部門で1位に君臨していた同サイトをグーグルマップが退けたと述べるだろう。確かに、グーグルはグーグルマップにトラフィックを送っていた。しかし、答えはそんなに簡単ではない。グーグルの製品はマップクエストよりも質が高かったのだ。タイムワーナーの経営が問題を抱えていたため、マップクエストは数年の間、改善を怠り、割と最近になるまで製品への投資を行っていなかった。

グーグルは他のサイトにどんな義務を負っているのか?

グーグルにはそもそも自社のコンテンツや製品を提供する権利はあるのだろうか?この疑問はあまり注目されていない。大半の人々は「YES」と答えるはずだ。そして、この疑問はすぐに次の疑問を生む: グーグルは自社の地図や製品検索や動画やニュースサイトにトラフィックを送ってもいいのだろうか?「NO」と答えるなら、これが現実では何を意味するのかお分かりだろうか?グーグルはオーガニックの結果から自社製品への参照をすべて削除する必要があるのだろうか?

また、グーグルの自社製品は、その他のパブリッシャーのサイトよりも下の既定の場所に配置するべきなのだろうか?第三者のパブリッシャーに対して、グーグルはどんな“義務”を負っているのだろうか、あるいは負うべきなのだろうか?個人的にはこの疑問が最も重要だと思う。

これらの疑問はすべて全く異なる問題であり、実行する段階においては解決が非常に困難になる。監督機関が、アルゴリズムおよびSERPをコントロールするグーグルの力の調査を始めるなら、悪い前例を残し、グーグルの革新する力、そして、やがて競争する力を削ぐことになるだろう。しかし、私はグーグルの力およびマーケットにおけるインパクトをないがしろにしているわけではない。SERPに関して、容易に規制の答えを出すことは出来ないのだ。

ウォールストリートジャーナルの記事でも取り上げられていた「map-pack/0-pack/x-pack」のケースでは、グーグルはかつてトラフィックを得ていたパブリッシャー – アグリゲーターではなく、トラフィックを直接地域のウェブサイトに頻繁に送っている。

かつて旅行関連のアフィリエイトスパムがSERPには大量に存在した。「Sheraton, New York」のようなクエリを入力すると、ホテルのサイトの前に多くのアフィリエイトのディレクトリが表示されていたのだ。グーグルはこの問題に対処し、ページを一掃し、そして、ユーザーエクスペリエンスを改善したのだ。アフィエイトのスパムがはびこっていた時代に戻りたいと思う人はいないはずだ(カヤックやオービッツ等のサイトのことではない)。

グーグルのプレイスページ、ショッピング、またはマップが、非難を上げるサイトよりも質の良いサービスを提供していたら、どうなるのだろうか?これは個人的な感想だが、プレイスページはその他の大半の地域部門の競合サイトよりも質の高いサービスを提供している。

公開会社になることで新たなマーケットを求めざるをえない

グーグルは、骨組みまたはトラフィックの送信機であるべきだと言う考え方には欠点がある。また、これは単なる幻想でしかない。グーグルは公開会社であり、成長を望んでいる。今後も拡大を続け、利益を追求し、そして、チャンスがあると見込んだ分野で製品を改善していくだろう。

個人的には、グーグルは、特定のパブリッシャーや競合者を懲らしめるために検索結果を操作するべきではないと思う。また、グーグルはオーガニックの結果のオーガニックな上位のポジションを自社のサイトのために一貫して保有するべきではないと考える人もいるだろう。しかし、これは「ワンボックス」や「スマートアンサーズ」やその他の検索エンジンの同様の製品にも言えることである。ヤフー!はそのなかでも最も手の込んだ「アコーディオン」スマートアンサーを提供している:

また、法廷はSERPのコンテンツは言論の自由で保護される“編集可能”な領域に該当すると解釈してきた。そのため、仮定の話だが、グーグルはグーグルに関連する結果のみを表示したとしても、合法なのだ。

マーケットで注目を得るには、グーグル以外にも経路はある。パブリッシャーやサイトのオーナーはグーグルSERP経由の“無料”のトラフィックに慣れ、このトラフィックを“既得権利”と考えるようになったのだろう。しかし、どのサイトがトラフィックに“値する”のかを論じることは出来ない。反競争の懸念が持たれる可能性があるのは、スカイフック-グーグルの訴訟だけだと思う。しかし、この訴訟は現在も係争中であり、すべての事実が明らかにされているわけではない。

グーグルのマーケットの独占は数年後には減少するだろう。私は自由市場をこよなく愛する自由競争主義者ではないが、マーケットのことはマーケットに任せておけばいいと思う。フェイスブックやその他のサービスは、従来の検索エンジンを利用することなく、コンテンツを発見する手段の考案に取り掛かっている。グーグルはこの点に懸念を抱いており、だからこそ“ソーシャル”戦略の改善に熱心に取り組んでいるのだ。

権力を持つ人間は、その力を不公平に利益を獲得するために使う誘惑に駆られる。規制機関の義務は、マーケットで公平な状態を保ち、マーケットをより大きな体系および社会のために機能させることである。一つの企業が力を持ち過ぎるようになったら、またはマーケットをコントロールする強大な力を持つようになったら、政府は慎重に状況を確認し、操作や悪い行いが横行しているかどうかを見極める必要がある。

しかし、個人的にはグーグル・プレイス検索は調査対象には当たらない気がする。

最後に、この件に関連する過去のエントリ、「検索エンジンのように振舞ったGoogleを調査するバカバカしさ」にも目を通しておいてもらいたい。


この記事は、Search Engine Landに掲載された「Once Again: Should Google Be Allowed To Send Itself Traffic?」を翻訳した内容です。

筆者はマーケットのことはマーケットに任せておけば良いという立場で「サイトのオーナーはグーグルSERP経由の“無料”のトラフィックに慣れ、このトラフィックを“既得権利”と考えるようになったのだろう」とまでいっています。1つの考え方ではありますし、私もどちらかというと自由競争主義者ですが、ここまでインフラ化した検索エンジンとしての公共性や中立性をどう考えるべきなのか、という議論はあってしかるべきとも思います。ソーシャルメディアが新たな発見・検索のツールとして成長しているとはいえ、純粋なサーチエンジンとしてのGoogleの圧倒的立場は揺るぎない部分もありますし。もっとも最近の日本のテレビ局が自社制作した映画やイベントを恥じらいもなく宣伝しまくっている(&それが結構大ヒットしている)のをみると、メディアの中立性ってそもそもあるのか?なんて思いたくもなりますが。。。新聞等のニュースメディアにしても限りなくその時々の権力者の影響を受けてきた面もあるのでしょうし。今回の騒動は改めてメディアの公共性・中立性を考える良い機会かもしれません。 — SEO Japan

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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