ソーシャル時代に改めて考えるフリーミアムの功罪

少し前にフリーミアムという言葉が流行りました。米国のあるVCの人が提唱し、クリス・アンダーソンが著書で持ち上げた言葉です。その著書「FREE」は日本でも話題になったのでご存じの方も多いでしょう。基本サービスを無料で提供、広告代わりの集客ツールとして利用し、追加サービスを有償で提供して賢く稼ぐ、というモデルで、最近でいえばソーシャルゲームの「最初は無料、攻略には有料アイテム」のようなモデルもその一例でしょうか。最も最近は皆がそうしているのでその上で多額のプロモーション費が必要なようですが。今回はあえて今、フリーミアムについて考え直す記事をThe Next Webから。 — SEO Japan

目を閉じて、90年代後半/2000年代初頭のドットコムブームを思い出すのだ。あなたにとって、あの熱狂的な時代全体の決定的な思い出は何だろうか?あなたがよく思い出せないほどに若かったなら、ミレニアムの変わり目にシリコンバレーに関して言及したドットコムバブルドットコムブームを聞いて何をすぐに思うだろうか?

私は、それは準備が不十分でいかれたアイディアの過大評価と関係があると推測してみるつもりだ。確かに、それはAmazonやeBayやGoogleのように、今も仕事に励んでいる企業にとっては的外れかもしれない。それに、うまくいかなかった多くのアイディアの全てが本質的に悪かったわけではない。それらは単に時代の先を行っていたのだ。

この話題については以前にも議論したことがある。なぜ10年前のドットコムブームは今日と同じではないのか、なぜ私達はデジタル業界の崩壊が同じように広がるのを目にしないのかについて考えた。2つのドットコムブームの間の断続的な数年間の間、テクノロジー、考え方、スキルレベル…全てのことが巻き込まれた。つまり、たとえGrouponのような企業が明日ばったりと倒れたとしても、単にインターネットエコシステムがもっと頑丈であるという理由で、恐らくそのバブルは無傷なままなのだ―企業はこれまでと同じように浮き沈みがあるが、eコマースはなくならないだろう。

こんなにも多くの企業がこれまでに失敗した理由の1つは、ウェブの収益化について理解が広く欠けていたからだ。

私がイギリスの投資家兼起業家のRupert Cookにインタビューをした時、彼は、決まった場所に多数のユーザーをただ持つことがお金もうけに結びつくのではなく、これは過去10年間で学んだ基本的教訓の1つだったということに注目し、この点について繰り返して言った。あなたのウェブサービスを単に使ってもらうのでは十分ではないのだ。存続可能なビジネス提案にするには、あなたには、収益を得て願わくば利益を得るために消費者の財布のひもを緩くする手段が必要だ。

今日も未だにこのこだまがあるが、重要な違いは企業の多くが収益を挙げていることだ。だから、一般的な考え方は、ほんの少し時間がかかるかもしれないが、利益がすぐに付いてくるということだ。実際に起きるか起きないかは、多くのケースでまだ分からないのだが。

しかし、この記事のポイントは、ドットコム企業の利益性にはあまり深く考えない。ポイントは、デジタル企業が自分達のベンチャーも収益化することを求める方法の1つを掘り下げて考えることだ。そして、あなたがその言葉に馴染みがあるにしろないにしろ、あなたはそのビジネスモデル―フリーミアム―に必ず詳しくなるだろう。

フリーミアム

“サービスを無料で提供し、もしかすると広告収入はあるかもしれないが、口コミや照会ネットワークやオーガニック検索マーケティングなどで効果的にたくさんの顧客を獲得し、その後で、プレミアム価格の価値を追加したサービスやサービスの強化版を顧客基盤にオファーするのだ。”

これは、VC Fred Wilsonが5年以上も前にブログ記事の中で言っていたことだ。この記事は、このビジネスモデルの名前を提案することを大衆に尋ねるという展開となった。“私達は、購読、広告収入、ライセンス、ASPのようなよく理解された言葉を得た”とWilsonは言った。“このビジネスモデルを表す言葉があるのだろうか?もしあるとしても、私は知らない。”コメント欄で、Alcraというテック会社のJarid Lukinがこんな提案を投稿した:

Lukinは最初にこの言葉を作ったことで高い評価を得ているが、基本的な無料サービスで顧客を誘引して後で‘アップグレード’することを期待するというコンセプトは新しくはなかった。1980年代と90年代を振り返って考えると、ゲーマーが夢中になって完全な‘最新’版に投資することを期待して、コンピューターゲームの無料バージョンが雑誌で配られていた。そして、それは大いに効果があったと評価できる。

しかし、インターネットは無料のコンテンツを期待する世代を作り上げた。オンラインニュースサイトからNapsterやYouTubeまで、人々はオンラインコンテンツを無料で消費することに慣れてしまった。そして、フリーミアムが本当に注目されるようになったのだ。

フリーミアムは、インターネット世代によく適していて、対象物にお金を支払う前に製品やサービスをテストしたり機能限定版を楽しむことをさせてくれる。多くの場合、永遠にポケットから手を出さずに事実上有料版と同じ機能を楽しむことができるが、その代わり少し広告に耐える必要がある。

あらゆる優れたビジネスモデルと同様に、複数のサービスレベルに拡張したアドオンを提供する段階的サービスもよくあるので、消費者は何にお金を支払うのか決めることができる。フリーミアムは素晴らしいが、それ特有の欠点がある。

夢中にさせてから値段をつり上げる

フリーミアムの否定的側面について話す時に私がいつも引用する面白い例えがある。ザ・シンプソンズで、ホーマーがショッピングモールでクッキーを売っている女の子に出会うエピソードがある。その時の会話がこんな感じだ:

女の子: アロハ!クッキーの無料サンプルはいかがですか?
ホーマー: いい値段だね!モグモグ…マカダミアナッツか!
女の子: いくつか買えば、1つたったの1ドルです。
ホーマー[すごい勢いで、口からクッキーの欠片を吐き出して]: おっと、それが君の計画か。僕を夢中にさせておいて、値段をつり上げるんだな!ふむ、君の勝ちだ。

このシナリオを21世紀のデジタル業界に当てはめると、音楽ストリーミングサービスSpotifyが、人々が夢中になったことを検知するとゴールポストをわずかに移動させるというかなり素晴らしい仕事をやってのけた。ただし、それは値段のつり上げではなく、ただサービスに表示される広告部分を減らしたのだ。

Spotify が、ユーザーが6カ月間登録していると発生する無料のSpotify Open サービスの制限について紹介していることを4月に報告した。その変更は、無料音楽再生が毎月10時間に半減されることや、数回しか再生できないトラックがあることを意味する。

同時にSpotifyは普通のユーザーは違いに気が付くことはないと主張したが、もちろん多くの人がその違いに気が付いた。そもそもの目的は、ユーザーを有料サービス―月€4.99のSpotify Unlimitedと€9.99のSpotify Premium―の1つに押し込むことだった。

喜ばせるべき投資家がいて勝ち取るべき世界があるSpotifyは、広告支援サービスを介して数十億の巨大企業になることは決してできなかったのだ。それには、有料メンバーが必要だったため、人々がこの先お金を払う準備ができるようにまずはそのアイディアを受け入れさせなければならなかったのだ。

しかし、この方法でフリーミアムのビジネスモデルを運営することにはいくつかの欠点がある。広告支援サービスを減らす会社には、それ自体はユーザーにとって嬉しいことだが、彼らにプレミアムサービスに支払いを強制することで消費者が逃げて行く危険がある。確かに、Spotifyの場合は、これは起こらないかもしれないが、そもそものこの設定の全体のポイントは、広告にさらされることや制限付き機能を喜ぶ人ならそれでいいが、もしそれが嫌なら、月£10/€10/$10の手ごろなプレミアムサービスに魅かれるだろうということなのだ。いたってシンプルだ。

Spotifyはうまく切り抜けたが、私達が目にするデジタル部門の至る所で採用されているこれらの戦略の多くは、消費者が皮肉に変わり、それを実際のサービスレベルに反して価格が上がった短期間の特別なプロモーションとしてとらえ始める傾向がある。無料サービスを減らすことによって、消費者のそのブランドに対する確信は弱くなるのだ。

デジタルの他の場所を見てみると、Appストアには、ゲーム体験を拡張するための‘有料’機能のついたたくさんの無料ゲームがある。また、CityVilleやFarmVilleやMafia WarsのようなFacebookゲームも、アプリ内のマイクロトランザクションを介してそんなにお金のかからない追加機能を提供している。しかし、何百万ものプレイヤーがそれに貢献すれば、それはかなりの金儲けになるのだ―みんなが勝者である。

しかしながら、より多くのアプリやゲームのデベロッパーがポンド記号の可能性を見いだし始めると、有料プレミアムバージョンを唯一の実行可能な選択肢にして、無料サービスはますます必要最低限のものだけを装備したものになるだろう。例えば、ゲームやアプリがそれ自体を‘無料’と呼んでいるが、1つのレベルしか入っていないかもしれないし、あなたはそれが実際には見せかけのフリーミアムでお試し期間だけ無料なことにすぐに気が付くかもしれない。

これはすでに起こっている。EA Gamesは、アメフトゲームMadden NFL 11の無料版を1月にリリースした。その問題点は、ユーザーが1つの試合しか選択できないことだった:Indianapolis Colts対 New Orleans Saintsで、それも短い期間しか使用ができなかったのだ。もちろん、ゲーマーは簡単に4.99ドルでフルバージョンにアップグレードすることができた。それは恐らく単なる言葉の選び方になるが、マーケティングなのだ。それでもこれは無料ゲームというよりはデモゲームと呼んだ方がぴったりのように思えた。

これは、私達が今後の年月でもっと目にするようになることだ。企業は、消費者を自分の製品やサービスに夢中にさせる方法を見つけるのに四苦八苦しているのだ。

決して転換しない人々がいる

すでに言ったように、人々は無料でコンテンツを消費することにあまりに慣れており、多くの企業はサービスの無料版から有料版にユーザーを転換することが難しいと分かるだろう。かなり成功した場合でさえも、無料ユーザーは通常有料ユーザーよりも数が多く、企業はお金を支払う気が全くないユーザーに時間とお金とリソースを注いでいるという結果になる。これは、Spotifyがその無料サービスを使用するユーザーの下からカーペットを引き抜いた理由なのだ。それが、お金を払う価値があることを示すものすごく優れたサービスに人々にお金を支払わせることだった。

ヨーロッパでは、Spotifyは1,000万人以上のユーザーがいて、そのうちのおよそ10%が有料登録している。7月にアメリカ国内でローンチして以来、およそ140万ユーザーでそのうち175,000人が有料ユーザーと、有料登録の獲得はかなり素晴らしい。 しかし、それもまだ10%を少し超える程度にすぎない。残りは広告によって支援されているのだ。

DropboxEvernoteは、無料ユーザーを有料ユーザーに転換する企業の良い例だ。なぜなら彼らのサービスが、それにとてもうってつけだからだ。それらは、本当に素晴らしい製品で、あなたが無料アカウントの制限を超えた時には、他の選択肢を探索するよりも手ごろな有料バージョンにアップグレードする方がずっと簡単なのだ。例えば、Evernoteは、無料ユーザーの5分の1を最初の2年間で有料ユーザーに転換している。つまり、決してお金を支払わない人々への多くのリソースを割り当てているのだ。

では何が機能するのか?

デジタル企業で利益を出すことの疑問に答えるのは簡単ではない。たくさんのアプリ、ツール、ソフトウェア…ありとあらゆるものがあるため、しばしば‘無料’は最初に弾みをつけるには一番明白な方法である。しかし、製品にある程度値段をつけることで人々はそれをもっと価値あるものとして見るという教えがあることも事実だ。しかし、このアプローチをうまく行かせるためには、あなたの製品が素晴らしいものでなければならない。そうすれば、人々が世の中に溢れている無料のがらくたにうんざりして、役に立つものにお金を払うことを次第にいとわなくなることを当てにすることができる。

しかし、利益をほとんど出していないが成功しているデジタル企業の数を見てみると、フリーミアムモデルを機能させることがいかに大変であるかの証である。Skypeは巨大な会社で、ヨーロッパ最大のデジタルのサクセスストーリーの1つだ。2010年には国際電話市場の13%を手にしていたが、去年の8億6000万ドルという収益を見る限り、700万ドルを損失している。

Twitterには、毎月4億以上ものユニークビジターと1億のアクティブユーザーと毎日ログインするユーザーが5,000万人いる。それはほとんど収益にならないし、ローンチから5年が経った今、全プラットフォーム内のPromoted TweetsとPromoted Trendsを介して収益源を積極的に促進しようとしている。Twitterはフリーミアムモデルを使っているわけではないが、膨大な数のユーザーが大きな収益と結びつくとは限らないことを示すのに役立つ。

じゃあ、フリーミアムは最悪なのか?

これは、フリーミアムが完全に悪いことだと言っているのでない―そういう場合もあるが、うまくいくこともしばしばある。しかし、最大のデジタル企業がそのモデルを使ってお金を稼ぐことに四苦八苦しているなら、それよりも小さなスタートアップはどうやってフリーミアムで成功できるというのだろう?

結局のところ、あなたにはお金を支払う価値のある優れた製品が必要なのだ。無料版はゴミであってはならない。実際は、有料版を反映したもので、人々をその気にさせ、消費者がジャンプする理由を与えなければならないのだ。そして、願わくば、消費者が無料版を楽しんでいる間に、彼らの下からカーペットを取り除くことなく成し遂げたい。


この記事は、The Next Webに掲載された「The Freemium flaw: The challenges faced by digital’s default business model」を翻訳した内容です。

シンプソンズの例えが良かったですね 笑。あのホーマーでさえ、そこまで先が読めるんですし、冷静に考えれば、何でもかんでもフリーミアムでいいわけじゃない、というのはある意味当然かとは思いますが、一時はフリーミアムが最高!的な雰囲気もありましたからね。特に最近は海外の小規模のウェブサービスやスタートアップには、最初から無償版無しで有償サービスのみでサービス展開している所も多いように思います。例えばSEO Japanでも良く登場するニール・パテルが運営しているヒートマップサービスのCrazyEggは、利用範囲によって価格帯は変えていますが、無償版はありませんが、着実にユーザーも増え黒字のビジネスを続けているようです。無償版提供は提供で運用コストやサービス対応が大変だったりしますしね。しないですむならしないですむのがベストとは思いますし。あえて無償版提供をしなくとも、良いサービスさえ作れば口コミやレビューでソーシャルで一気に広まる可能性もある今の時代。あるべき価格戦略について考えてみるのも良い機会かもしれません。 — SEO Japan
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