SEOとデザインシンキング

公開日:2014/04/30

最終更新日:2024/02/20

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シリコンバレーで最近話題らしいデザインシンキングのプロセスをSEOに適用して考えてみたSEO Bookの一歩上を進んだ記事を。企業やサービスに新たなイノベーションを興す手法として注目されるデザインシンキングを学べる記事でもあります。 — SEO Japan

分析データばかりを参考にすると、未来を想像する際に、過去に囚われてしまうことがある。過去のパフォーマンスは、とりわけグーグルの気まぐれな変更に関しては、今後の成功を示唆するわけではない。

問題を特定し、解決策を策定するべきである。しかし、過去を計測し、最高のソリューションを考案して、未来を予測しようとすると、明白なチャンスを失ってしまう可能性がある。

デザインシンキング

1972年、心理学者であり、建築家であり、そして、デザインの研究者の肩書きも持つブライアン・ローソンは、問題をベースに問題を解決する人と解決策をベースに問題を解決する人の違いを理解するため、科学的な調査を実施した。ブライアン・ローソンは、建築学部の4年生、そして、理学部の大学院生の2つのグループの学生を調査の対象に選び、色のついたブロックで1階建ての構造物を作るよう求めた。建物の周りには、出来るだけ赤か青のブロックを利用する必要があったが、配置やブロックの関係に関する具体的なルールは示されなかった。
この調査の結果、次のことが分かった:

科学者タイプは、一連のデザインの手法を試していた。このグループは、出来るだけ早く、出来るだけ多くの異なるブロック、そして、ブロックの組み合わせを用いていた。そのため、許される組み合わせに関して、提示された情報を出来るだけ活かそうと試みていた。許容されるブロックの組み合わせを左右するルールを見つけることが出来れば、デザインに関して、必要とされる色を出来るだけ活用する配置を求めることが可能になる。反対に、建築学部の学生は、適切に色が並ぶようにブロックを選んでいた。組み合わせとして受け入れられない場合、次に理想的な色のブロックの組み合わせが考案されていき、受け入れられる解決策が見つかるまで、この作業が繰り返し行われる。

ローソンの調査に関して、ナイジェル・クロスは、「科学的な問題の解決は、分析によって行われ、一方、デザイナーは演繹的な推理を用いて問題を解決しようとする」と結んでいる。

デザイナーの考え方は、問題ではなく、解決策を先に検討する傾向が見られる。問題ベースの考え方をする人達は、問題に対する一つの解決策を見つけることに力を入れるものの、デザインを意識する考え方を持つ人達は、共通するテーマに関する各種の解決策を提供する傾向がある。このように、2つのグループには、考え方の違いが見られる。

グーグルでデザインを統括していたダグラス・バウマンは、グーグルは、決定を下す際にあまりにもデータを気にし過ぎると批判していた:

エンジニアばかりが会社に集まると、問題の解決にエンジニアリングが用いられるようになる。各決定を単一の論理的な問題に例えるようになる。主観性をすべて排除して、データだけを見る…そして、このデータは、すべての決定に対する支えになり、会社を麻痺させ、デザインに関して勇気ある決定を下すことが出来なくなる…

もちろん、データに基づいたアプローチに問題があるわけではない。しかし、このような考えに偏ると、機会を見逃してしまう可能性がある。「どうだった」よりも、「どのようになるのか」を想像すると、機会が自ずと姿を現す。もちろん、グーグルもこの点を理解している。だからこそ、同社は、未来を想像することに専念する部門、その名もグーグル Xを抱えているのだ。

キーワード取集ツールには、必ずしも表示されていないものの、ユーザーが利用している可能性がある検索のワードは何だろうか?当該の分野で、半年後にウェブユーザーは、どんな検索ワードを利用するのだろうか?ああするよりも、こうする方が、消費者は、頻繁に連絡を取るようになるだろうか?コピーは顧客の共感を得ているだろうか?それとも、検索エンジンにしか認めてもらえないだろうか?グーグルが、検索リファラーのデータを伏せていることを考えると、キーワードを狙いに絞る取り組みは難しくなる。そのため、デザインシンキングが心強い味方になる。

デザインシンキングのツール

Designing For Growth」の著者、ジーン・リエドツカとティム・オーグルビは、作品の中で、データベースの方法以外で、機会、そして、ビジネスについて考えるためのツールを紹介している。直感に基づく、デザイン主導のアプローチの有名な支持者と言えば、まず名前が挙がるのは、スティーブ・ジョブズである。

フォーカスグループを使って製品をデザインするのは難しい。実際に見せるまでは、何を求めているのか消費者自身が分かっていないためだ。

iPhoneやiPadは、過去だけを考慮して作られたわけではない。この製品は、ジョブズが、消費者が何を求めているのか理解する才能を持っていたため、生まれた。ジョブズの判断が正しかったことは、売り上げを見れば分かる。

デザインは、共感を得ることから始まる。そのためには、消費者の立場になって考えなければならない。つまり、実際に問題を抱える実際の人達を特定する必要がある。

そのため、過去のデータをひとまず忘れ、消費者を観察し、消費者の声に耳を傾け、そして、消費者に語りかける必要がある。この取り組み簡素化させたいだろうか?それなら、消費者は、思いがけない方法で問題を表現することがあるため、キーワード、そして、事業に関するアイデアを豊富に用意すると良い。

例えば、禁煙を、医学的な問題ではなく、健康問題のように、目標の設定の課題に挙げる人は多い。そのため、医学用語やキーワードをベースとした広告のコピーは、目標の設定や健康をベースとしたコピーほどの効果は期待できない可能性がある。このワードの違いによって、全く異なる広告コピーの世界、さらには、キーワードの世界が生まれる。分析データ、そして、キーワードのトレンドのみに頼っていたら、この異なる枠組みを利用しようとは思わないかもしれない。しかし、顧客候補に話しかけるだけで、割と容易にこの枠組みを見つけることが出来る。

4つの問い

問題に対処し、新たな機会を見出す斬新な手法を探しているものの、データ優先の考え方に行き詰っているなら、「Designing For Growth」を読むと良いだろう。特に目新しいコンセプトが提示しているわけではなく、また、時折、「最新の業界用語」として、ありきたりの考え方が紹介されているものの、基本的なアイデアは説得力がある。事実、幾つかのアイデアをSEOの問題に直接適応する価値はある、と私は思う。

Designing For Growthは以下の問いを投げ掛けることを薦めている。

何?

何が現状を形成しているのか?ターゲットの消費者が解決を試みる問題は何か?Xeroxは、ファックスを発明した際、顧客自身が分かっていない問題を解決することに成功した。ポラロイドカメラにも同じことがいえる。電子レンジも同じカテゴリーに属する。消費者は、実際のこのような製品を見て、理解するまでは、問題を説明することは出来なかったかもしれない。しかし、消費者が直面している問題を観察していれば、問題があることは明白であったはずだ。例えば、消費者は、一般的なタスクを早く、そして、簡単に完了する手段を求めていた。

現状について、業界について、消費者が、最も嫌悪感を抱いている点は何だろうか?消費者は、どのぐらいの頻度で質問を投げ掛けているだろうか?

この情報をフローチャートを使って、描写することが出来る。ユーザー体験の現状を、問題に直面する時期、キーワードの想像、検索、結果の確認、結果のクリック、サイトの発見、サイトの利用、理想的な行動に至るまで、描いていこう。結果やステップを改善することは可能だろうか?

ユーザビリティテストは、同じ方法を用いている。可能ならば、実際の消費者の行動を観察すると良いだろう。数名にインタビューを行い、質問を投げ掛け、消費者が用いる言葉に耳を傾けてもらいたい。データを収集することで、この情報の一部を拾うことが出来るものの、とりわけ、消費者がクリックしない場合、つまり、行動が起こされないケースは、分析データには、有益な形で表れない。そのため、直接観察した方が、遥かに多くの情報を得ることが出来る。

もしも…?

「もっと見た目が良い」デザインを考えてみよう。

実用的なデザイン、そして、ある行動を妨げる制約について考えるのではなく、実用性と制約を度外視した場合の、理想的なソリューションのデザインを想像してもらいたい。

例えば、絵を描く模型を作る、ストーリーを伝える手が考えられる。想像力を掻き立てることが出来るなら何でも構わない。感情、空想、そして、感覚を利用しよう。このようなプロセスを経ることで、スプレッドシートを睨むだけでは作ることが出来ないつながりを作ることが可能になる。

大勢のユーザビリティテストのテスターが、ペルソナを作り出す。ペルソナとは、実際の顧客、もしくは、顧客候補をベースとした架空のキャラクターであり、顧客が探しているもの、解決しようと試みている問題、そして、サイトに期待するアイテムを理解するために用いられる。このキャラクターは多忙を極めているのか?教養を身につけているだろうか?インターネットを多用しているだろうか?自分のために買い物をしているだろうか?あるいは、代行しているのだろうか?感情的に反応する傾向があるだろうか?それとも、論理的に行動するタイプだろうか?このキャラクターはどんなインセンティブに反応するだろうか?

実際の消費者に基づいている場合、ペルソナは特に有効である。じっくり見て、観察しよう。関連するケーススタディを調べてもらいたい。顧客から送られてきたeメールを遡って確認する手もある。絵コンテンツを使って、消費者が取る可能性のある行動や考え方を記録すると良いだろう。ストーリーは、モチベーションと思考を理解する上で、大いに役に立つ。

競合者はどんな取り組みを行っているのか、どの点において、自分の会社よりも優れているのか?制約のない、最高の世界では、どのように表現されるのだろうか?

何が感動を導くのか?

「何が感動を導くのか」は、今後のソーシャルメディアとSEOにおいて特に重要である。

質の低いサイトに関するマット・カッツの発言について考えてもらいたい:

このようなサイトは、価値を加えていない。コピーしているわけではないが、新しい情報をもたらしているわけではない。このタイプのサイトが行ってきた取り組みに問題があるわけではないが、上位にランク付けされるなどと期待するべきではない。
このような結果には、大きな違いがないため、グーグルは、そのうちの一つだけ表示する。そうすることで、検索結果に別のタイプのサイトを提供することが出来るためだ。

グーグルのスパム対策を統括する立場にあるマット・カッツは、新たな価値の創造を強調している。サイト Aが、サイト Bとほぼ同じ情報を提供している名合、重複とは見なされなくても、大きな価値を加えているわけではない。その結果、新しいサイトが、「ほぼ同じ内容」として、格下げされる可能性がある。

これは、Zygnaが歩んだ道のりとは正反対である:

SF Weeklyに次のような一節が記されていた。「イノベーションなんか求めていない。競合者よりも賢いわけではないんだから、競合者の真似をして、同じ成果を得られるまで、真似を繰り返していればいいんだ」とZyngaの元従業員は、ピンカスCEOに話したそうだ。

一般的に、有望なサイトは、深さ、そして、新たな見解を加えることで、オーディエンスを熱狂させることに焦点を絞るべきである。つまり、発言に値するアイテムを持つ必要がある。このアイテムこそが、ソーシャルメディア全体で言及され、リンクを増やしていくためだ。

確実にこのような成果を得られるのだろうか?グーグルに関して言えば、確実なことなど存在しない。グーグルは、自由にサイトを下位に沈める権限を持つ。しかし、老舗のサイトと同様のコンテンツとリンクの構造を用いて、真似するだけよりも、オーディエンスを感動させる方が見込みはある。このような老舗のプレイヤーもまた、現在得ている注目、そして、ランキングを得るために、オーディエンスを感動させなければならなかったのだ。型破りな行動を取っていたはずである。要するに、同じ穴を深く掘るのではなく、新しい穴を掘り始めるべきである。

SEOの世界では、変化は実験に基づいている。SEOは、繰り返し行う取り組みである。私達は、今後、どのような手法が有効なのか理解しているわけではなく、過去のデータがどんなに多くても、知りたい情報が得られるわけではない。それでも、テストを行い、効果のある手法を特定しようと試みる。サイトが上位にランクインしていないなら、上位にランクインするまで、別の手法を試すことになる。

その結果…

何がうまくいくのか?

検索エンジンのユーザーは、積極的に行動を起こしているだろうか?広告のクリック、登録、または、購入等、取って欲しい行動を取っているだろうか?

SEOは、この段階で、ほぼ目標を達成していると言える。数値化が困難な分野での実験 – アルゴリズム – は、SEOと切っても切れない関係にある。

難しいのは、場所によって効果が異なる点であり、また、現代病と同じように — グーグルは、アルゴリズムで巧みに遅延を行っている:

肥満、薬物乱用、喫煙等、多くの現代の病気は、共通する特徴を持っている: 病気を患う人達は、結果と原因が、大きな時間とスペースによって隔てられている点を理解することに失敗している。タバコを吸う度に腫瘍ができるなら、喫煙を始めにくくなり、反対に、タバコを簡単に止められるようになるはずだ。

あるサイトのランキングが、他のサイトよりも安定しているのは、秘密を特定するのが難しく、同じリンクを手に入れるとペナルティーを与えられるためだ。同じ戦略とリンクが、別のサイトでは、うまくいくこともある。

ユーザーの行動の変化は、SEOよりも、より直接的、そして、より早急に計測することが出来る。

変化の実験を、顧客候補のユーザーと会話を始めるための機会と考えてもらいたい。つまり、「今回の変更を気に入りましたか?気に入った点を教えて下さい」と問いかければ良いのだ。プロンプトを使って、チャットを開始する、あるいは、調査に参加して欲しいと要請することも可能である。エンゲージメント(参加を介した交流)は多くのメリットを持つ。 すると、すぐに「戻る」をクリックされずに済み、ターゲットのオーディエンスが用いるワード、そして、問題点表現する形式が判明し、顧客について深く学ぶことが出来るようになる。その結果、顧客のニーズに敏感に反応し、共感を持つことが可能になる。

デザインシンキングの向こう側にあるもの

デザインシンキングには、他にもいろいろな要素があるものの、基本的には、常識に基づいている。顔のないデータに囲まれて身動きが取れなくなっているなら、新たな構想を加えると良い。

デザインシンキングは万能薬ではない。シックスシグマがプロセスであるように、デザインシンキングもプロセスである。どちらも現代の企業において、それぞれ居場所がある。効率を求める取り組みは、今も行われている。事実、不況下においては、厳格に節約する機会を探す方針は、賢明である。

このタイプの考え方の一番のメリットは、戦略の問題とデータの問題を分類し、顔を与える上で役に立つ点である。

この世界では、デザイナーは今後も並外れた価値を創り出すことが出来る。デザイナーは、問題を解決するために必要な右脳と左脳、世界が何を求めているのか耳を傾けるために必要な嗅覚、そして、長期間に渡り、大きな軌道を描くために必要なデータベースを持っている(あるいは、持つことが出来る)。デザイナーは、方向性を明確に示し、分かりやすく、住みやすい世界を生み出す能力を持っている。


この記事は、SEO Bookに掲載された「Design Thinking」を翻訳した内容です。

過去のデータも重要ですが、それだけに囚われないアプローチも時に必要ですよね。SEO限らず全ての企業活動の参考になる内容でした。 — SEO Japan [G+]

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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