ブラックベリーの緩やかな死に学ぶマーケティングの8つの教訓

最終更新日:2024/02/17

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ブラックベリーといえばiPhoneが登場する以前は、スマホの代名詞的な存在だったカナダのリサーチ・イン・モーションが開発したスマート・フォンです。一時はアメリカでもスマホといえば大半の人がブラックベリーを持っていた時代がありましたし、ブラックベリーを持つことが時代の最先端でした。まさかそれが数年で空前のスマホブームから取り残されるとは多くの人が思っていなかったと思いますが、今回はそんなブラックベリーの失敗にマーケティングについて学んでみようという野心的な?記事をQuick Sproutから。 — SEO Japan

ほんの数年前はリサーチ・イン・モーション(RIM)がスマートフォンのリーダーだったことが信じがたい。今では、BlackBerryに関してスマートなことは何もないというのがジョークだ。

いわゆる“クラックベリー”(註:ブラックベリーマニアのこと)ユーザーが、今では、AndoridoかiPhoneデバイスのために自分たちが愛した携帯電話を手放しているということも信じがたい。

何が起きたというのか?

実際には、RIMが自分たちの市場でその支配力を失うこともやむを得ない数多くのことが起きた。あなたとあなたのビジネスが成長し続けるために、ビジネスに適用できるいくつかのマーケティングの教訓を彼らの失敗から学ぶことができる。

それでは8つの教訓を紹介していこう:

教訓その1: ソーシャルメディアとの会話をコントロールする

ソーシャルメディアの世界では、RIMは過去数年間で批評家からこてんぱんにやられてきた…最大の理由は、彼らがただ座って何もしなかったからだ。

彼らが、ソーシャルメディアを自分たちの有利になるように利用することは決してなかった。

例えば、RIMの新しいCEOが初めての収益報告書を発表した時…7年間で初めて損失が出たと彼らが言った時…あなたは、彼らが全てのマイナスの注目に対抗するためにソーシャルメディアキャンペーンのようなものを生み出しただろうと思う。

しかし、彼らはやらなかった。

その発表の間、RIMに対するTwitter上での感情は、59%が否定的で41%が肯定的だった。

Twitterで中心となっている会話はこんな感じである:

‘ごめんなさい!重すぎて読み込めないためこのページをクローズします。’ #memory #bullshit #BlackBerry #RIM #sorry

それは、彼らには忠実なファン基盤がないということではない。彼らは、Facebookページで11,000,000近くの「いいね!」を獲得しているのだ…

…彼らが、簡単に活用することができたはずの、この会社の味方に付いて否定的な感情に対抗する助けとなることを頼むことができたはずのコミュニティである。

残念ながら、彼らは、Facebookファンのいるコミュニティを育てることは決してなく、それをむしろアイディアを出すためのフォーカスグループのように使ったため、ファンはこの状況を助けたり、ブランド支持者になる状態ではなかった。

マーケティングの教訓: あなたのソーシャルメディア戦略には、少なくとも2つのことを含むべきである。1つは、自分の顧客との本物のコネクションを作ること。もう1つは、それらの顧客を、あなたが批判と戦うのに役に立つ忠実な支持者層に育て、ブランド・カンバセーションをコントロールすることだ。

教訓その2: 会社ではなく、カルトを作り出す…

Appleはおそらく世界で最も忠実なファン基盤を持っている。それは最も認知されたブランドだ。そして、Apple製品を買う人々は、それらの製品を必要としているから買うのではない…彼らがAppleを買うのは、Appleが彼らについて何かを表現しているからだ。

RIMをAppleと比較すると、会社というよりも人気のある1つのデバイスを作っている会社が見えてくる。Google InsightsでBlackberryとRIMを検索すると、会社よりも製品の方がずっと多いことが分かるだろう。

これがBlackberryとRIMの検索結果だ…

青い線がRIMに関する言及である。ここでの教訓は…製品が会社よりもずっと人気があるということだ。同じことをAppleとiPhoneでやってみるとこうなる…

iPhoneがAppleを上回ってはいるが、言及における急な山形が常に同期していることに気が付くだろう…それは、人々がこの製品と会社を認識していることを意味する。人々は製品について話すのと同じ位にこの会社について話すのだ。

マーケティングの教訓: 感情的でまるでカルトのような繋がりを自分の顧客と築くために、それらの体験を強化する体験と製品を生み出す。前にも言ったように、何をするかよりもなぜ存在するかのほうがずっと重要なのだ。

教訓その3: ユーザー体験を尊重する文化を作る

あなたの所で働く人々がエンドユーザーからの情報を尊重しなければ、あなたが消費者とカルト的な繋がりを作ることは決してできないだろう。

RIMが失敗したのは、エンドユーザーからの情報を全く尊重しなかった技術のエキスパートが支配的地位にいたからだ。それは、エンジニア主導の文化だった…それは、競合相手がいない限りはうまくいった。

消費者は、自分たちに手渡されるものを受け入れなければならなかった。2008年に発売されたBlackBerry Stormは、RIMが消費者を理解していないことを示していた。

その後、エンドユーザーに焦点を合わせた会社を築き、彼らにiPhoneとAndroidデバイスを与えることで顧客を本当に分かっていたAppleとGoogleが現れると、RIMのマーケットシェアを食いつぶした。

確かに、今でもタッチスクリーンよりも親指でクリックするホイールと感触のあるキーボードを好む人もいるが、その市場は小さい。

マーケットの教訓: もしあなたの会社がエンドユーザーに重きを置く文化を持っていないなら…それを今すぐに変えるためにキャンペーンを始めるのだ。そして、もしあなたがすでに消費者に焦点を置いた会社を持っているなら…それをそのまま維持することだ!

教訓その4: 従業員の意見を聞くことを恐れない

RIMで働いていたリサーチャー、エンジニア、マーケッターには、彼らのテクノロジーが変化する必要があることが分かっていた。RIMの幹部は、どんな理由であるにせよ、彼らの話を聞いたり取り入れたりすることを拒否した。

もちろん、彼らはイタレーション(反復)を展開したが、新しい顧客を誘引する者は何もなかった。彼らはお金を稼いでいたし、その公式に干渉したくなかった。実際、彼らは、法人顧客はまともには取り合わないであろうと、iPhoneをおもちゃとして見下していた。

今、彼らは、親指クリックのホイールよりも優れたナビゲートの手段を考えてみもしなかったことが理由で、大損失を被っている

マーケティングの教訓: 絶対にイタレーションをイノベーションと混同しないこと。イノベーションとは、あなたのお気に入りの製品を壊すことになっても、次の勝者となることができる何かを作り出す時を言う。会社の中にスカンク・ワークス(最先端技術開発チーム)を作り、人々が現状維持に立ち向かうことを恐れない文化を作るのだ。

教訓その5: 製品への情熱をしつこいほどの使命にする

市場における先発者であることが、あなたがとても長い期間にわたって優位に立つことを可能にする。しかし、それはあなたを眠らせたり、社内の人々を無関心にさせることにもなり得る。

BlackBerryに関しては大胆なことや向う見ずなことはなかった…決してアグレッシブに販売されることはなかったし、新しい市場に進出しようとすることもなかったし、現在の市場にさらに深く入り込もうとすることもなかった。それは、現状に満足していたのだ…そして、人々は製品に対する情熱を失い始め、競合相手がマーケットシェアを獲得することを許したのだ。

マーケティングの教訓: もしあなたが革命的な製品を持っているなら、どうやって需要を支えるのか素早く見つけ出す必要がある。そして、DropBoxがしたように新しいチャンスを積極的に追い求める必要がある。常に顧客が求めるものに見合うように革新するのだ。その情熱を維持するのだ。

教訓その6: 先発者の優位性を維持する

RIMの主たる問題は、自分たちは成功した、競合相手を倒した、と考えていたことだった。2007年、彼らは世界のトップにいた

彼らは、誰も自分たちを打ち負かすことはできないほどのマーケットシェアを持っていると思っていた。しかし、売り上げは落ちていった…

何が起きたのか?!

彼らはイノベーションを止め、つまらないイタレーションを展開したのだ。彼らは競争力を失った。そして、顧客の声を聞くことを止めた。なぜなら、身動きを取れなくしたと思ったからだ。

同じことがKodakとHPにも起きた。彼らは、自分たちのマーケットシェアの支配力が、対応するための時間を与えてくれるだろうと考えた。しかし、私たちは、AppleとGoogleが彼らの昼食を食べるために現れ、1年も経たないうちにマーケットが変化するのを目にした。

マーケティングの教訓: 競合相手を調査することや、たとえ小さな相手でも注意を払うことを決して止めないこと…なぜなら彼らがあなたの未来の収益のカギを握っているかもしれないのだ。

教訓その7: 無関心な経営陣を置き換える

RIMの問題は、経営陣が必要な変化を拒否したことだった。彼らは、RIMの立場について一貫して楽観的だったし、永久にお金が流れ込むと信じていた。

彼らは、AppleやGoogleを心配すべき競合相手としてみることを拒否した。なぜなら、彼らは、自分たちが先発者として市場を動かぬものにしたかのように感じていたからだ。悲しいかな、彼らはBlackberryを発売して以来、他に新しいアイディアを思いつくことはなかった。

新しい経営陣の導入は、長いこと延び延びになっていた。

マーケティングの教訓: あなたの会社と製品に新鮮な視点をもたらすことができる人を指導的立場に置くこと。クリエイティブな考え方をする人をあなたの周りに置くのだ。経営陣の自己満足に会社を阻害させないことだ。なぜならそれが失敗を導くからだ。

教訓その8: 常に1つ以上の製品を作ること

先に述べたように、BlackBerryはそれを作る会社よりも有名だ。その名声は、いわゆる“クラックベリー”のおかげで広まった。そして、BlackBerryは無敵で長い間優位に立つだろうと思われていた。

しかし、もしあなたが1つの製品しか持っていなければ、会社として生き残ることはできない。それでは決して十分ではないのだ。BlackBerry Mobile Fusionは、会社にとって正しい方向への良い一歩だったのだが…遅すぎたのかもしれない。

時間がたってみなければ分からない。

マーケティングの教訓: 継続して新しいアイディアを推す人々を自分の周りに置くのだ。Google Labsとそこで展開された全ての製品のことを考えてみるのだ。そこの人々は、エンドユーザーのためにより良い製品を作ることについて情熱的だった。全ての製品が成功したわけではないが、Gmailのような有名どころは、試合を変えた。複数の製品があれば、たった1つのマーケットに頼るのではなく、異なるマーケットから消費することを可能にする。

最後に

どんな会社でも、ソーシャルウェブで顧客に関与することに失敗して、エンジニアは好むが消費者が嫌う製品を作る可能性がある…どんな会社でも、自己満足して、イノベーションのための従業員のアイディアの価値を無視する可能性がある。

RIMに起きていることは、GoogleやAppleやDropBoxにも起こり得る。それはあなたにも起こり得る。だからこそ、RIMの緩やかな死から学ぶリアルなマーケティングの教訓は、常にいつでも動けるように構えていることなのだ。Intelの前CEOであるAndy Groveがかつて言ったように、“パラノイア患者(偏執症)だけが生き残る”。

RIMの失敗からあなたが学べるマーケティングの教訓は他に何があるだろうか?

PS: 私は現在BlackBerryユーザーで、かれこれ5年以上所有している。


この記事は、Quick Sproutに掲載された「8 Marketing Lessons from RIM’s Slow Death」を翻訳した内容です。

もちろん一つの視点ではあるでしょうし、Appleと比較されてしまった日にはどんな企業でも不利だとは思いますが、ソーシャル時代のビジネスの在り方に対応仕切れない一例とでも読めるのでしょうか。規模は違えどニッチ分野でビジネスをしている私も色々と考えさせられる記事でした。

1つ1つの教訓に思う所はそれぞれにありますが、最後の「どんな会社でも、ソーシャルウェブで顧客に関与することに失敗して、エンジニアは好むが消費者が嫌う製品を作る可能性がある」「どんな会社でも、自己満足して、イノベーションのための従業員のアイディアの価値を無視する可能性がある」という言葉は常に心にとどめておきたいです。そして最後の“パラノイアだけが生き残る”、こんな台詞を堂々と吐ける大企業の社長ってカッコいいですね! — SEO Japan [G+]

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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