エンジェル投資家とVC(ベンチャーキャピタル)の違い

10年前のネット黎明期に比べてもスタートアップ立上げが才能とやる気に溢れる若者の1つの選択肢として一般化(少なくともネット業界では)してきたのは喜ばしいことですよね。スタートアップを始める、もしくは軌道に乗り出した際に大きな悩みとなるのが資金調達。最近では様々な企業によるスタートアップ支援プログラムなるものも増えてきましたし、さらには一度成功を収めた先駆者や若者を応援することが好き&余裕がある年配者によるエンジェル投資も行われているようですが、ベンチャー投資文化自体が短い日本ではその内容も実績も玉石混合なのが実態。今回は米国トップクラスのVC創設者が、エンジェル投資家とVCの違いについて彼の考えを解説した記事を。米国のベンチャー投資の歴史にまで踏み込んだこの記事、投資先募集中のスタートアップから投資側で成功したい起業家まで参考になる点は多そうです。 — SEO Japan

[このブログ記事は、もともとは2010年3月1日にMarcのブログで公開されたものである。]

私たちの新しいベンチャーファンドでは、ファンディングを求めている起業家の生活をより簡単にする新しい方法を探すことに時間を費やしている。そのため、私たちは、Series Seedドキュメントと呼ばれるオープンソースのリーガルプロジェクトに取り組んでいるTed Wangと連携してきた。私たちは彼の仕事に感銘を受け、これらの基本的なファンディングのドキュメントを私たちのシードステージの投資の一部として適所で使用するつもりでいる。

私たちはTedに大きなエールを送らなければならない。彼がこれを成し遂げたのだ。それは、古いVCのルールに従う必要なしに今日の環境でビジネスを築くことに起業家に焦点を合わせさせるという私たちの目的とぴったりと合致している。

一言で言えば、起業家と彼らが始めているビジネスが進化したのだ。今日のスタートアップは、ビジネスを始めるために製造工場を作る(最初のハイテクVC投資、DECが1957年にしたように)必要はない。彼らが製品を作ってビジネスを拡大する前にそれが機能することを証明するために必要とするお金は少ない。しかし、起業家に資金提供をすることに関する書類は、これらのニーズに合うように変化してこなかった。Series Seedが、今日の起業家に相応しいファンディングの新しい方法を初めて確立するのだ。そして、私たちはその大ファンだ。

あなたの考えを聞かせて欲しい:Series Seedドキュメントをチェックしてあなたの意見を共有しよう。

ここでは、いかに起業家精神が変化して、これらの簡略化したファンディングのドキュメントの必要性を生み出しているかということに関する私たちの考え方のさらなる背景を述べよう。私は、二つの全く異なる種類の投資家であるエンジェル投資家とベンチャーキャピタリストの両方の視点から話すつもりだ。

エンジェル vs. ベンチャーキャピタリスト

エンジェル投資家はなぜ存在するのか?

この質問に答える前に、関連する質問をしてそれに回答をするのが有益だ:なぜエンジェルが存在し、なぜ彼らはここ10年でもっと顕著になったのか?結局のところ、エンジェルが実施する活動の全てはベンチャーキャピタルの定義に含まれないのか?

その答えは、テクノロジー企業の歴史と、彼らが30年前にどのように作られたかと今どのように作られているかの違いの中にある。テクノロジーベンチャーキャピタルの初期の頃、Arthur RockやKleiner Perkinsのような大企業は、Digital Equipment Corporation(DEC)やTandemのような会社に資金提供をした。その時代は、最初の製品を作ることが、ハイクオリティなソフトウェアチーム以上に必要だった。Tandemのような会社は、独自の製品を製造しなければならなかった。その結果、最初のアイディアで市場に入って行くことは、とりわけ、工場を作ることを意味した。それ以上に、ほぼ全てのテクノロジー製品は、直接販売チーム、フィールドエンジニア、プロフェッショナルなサービスを必要とした。スタートアップは、最初の顧客と契約を結ぶ前に50~100人の従業員を簡単に採用した。

これらの課題を基に、スタートアップはベンチャーキャピタルパートナーに対して具体的な要求を展開した:

  • たくさんの複雑な活動に資金供給するための大金へのアクセス
  • 経験豊富な製造局長のようなシニアエグゼクティブへのアクセス
  • 早期導入顧客へのアクセス

立ち上がったばかりの会社が重大な過ちを避けられるよう、熱心で実践的な支援を行い、同時に自分たち自身に収益性のあるビジネスを築くために、ベンチャーキャピタルは今でも広く使われているオペレーティングモデルを開発した:

  • 企業投資家からたくさんの資金を調達する。
  • 製品を作り、その後で会社を作ることに実践的な専門知識を提供することができる経験豊富なパートナーを集める。
  • 詳細に及ぶデュー・デリジェンスと広範囲なパートナーコンセンサスで各契約を注意深く評価する。
  • 各契約に投入される大量の資金を守るために強力な統治を用いる。これには、必要不可欠な重役の座や、後続のファイナンシングをコントロールする力を含む複雑な契約条項が含まれる。
  • 資金/パートナーの数/パートナーごとの最大重役席数を計算することによって独自のリソースを効果的に管理して、各契約に投資されるべき最小限の資金を導き出す。

ベンチャーに支援されたテクノロジー企業の初期の頃から会社を作ることはかなり大変だったことが分かる。TwitterやFacebookのような会社を作ることは、Tandemを作ることとはかなり異なる。具体的に言うと、最初の製品を作るリスクと費用が劇的に少ない。現代の会社を作ることは、低リスクでも低コストでもない。例えば、Facebookはたくさんの競合相手とマーケットリスクに直面して、自分たちのビジネスを築くために何百ドルもの資金を集めた。しかし、最初のFacebook製品を作ることにかかったお金は100万ドルよりも優に少なく、製造局長を雇う必要も工場を作る必要もなかった。

結果として、現代のスタートアップにとって、最初の製品に資金供給をすることは、以下のような従来のベンチャーキャピタルモデルと調和しないことがあるのだ:

  • 長いデリジェンスのプロセス。ベンチャーキャピタルは、投資したいかどうかを決めるのに長くかかりすぎる。なぜなら、彼らは大きなリスクを負うようにできていて、それらのリスクを評価するための複雑なプロセスを持っているからだ。
  • 資本金が多すぎる。ベンチャーキャピタルは、非常に多くの資本金を投入する必要がある―時に、VCは最低でも300万ドルを投資したがる。もしあなたが製品を作ってそれを市場に出すのに4人しか必要ないのであれば、これはあなたのビジネスにとって理にかなわないだろう。
  • 役員の席。ベンチャーキャピタリストは、役員の席を要求することが多く、さらに言えば、役員会が作られることを要求する。もし会社の100%が製品を作っていて、チームがそれをどのようにするか知っていれば、役員会はやり過ぎになるかもしれない。加えて、あなたが誰を役員会に入れたいかを決めるには早すぎるかもしれない。

上記の結果、ベンチャーキャピタリストは通常、かなり実験的なアイディアを先に進めるために起業家から厳粛な公約を要求する。もし製品が突き出なかったら、起業家にとっては、全く違うアイディアを先に進めるか、もしくはビジネスを全て中断することが理にかなっているかもしれない。これは、3,000,000ドルを調達した場合よりも300,000ドルを調達した場合の方が、ずっと簡単にできる。

起業家が最初の製品を作ることと会社を作ることの溝に橋を架ける人を必要としていた時に、エンジェル投資家が登場した。

エンジェル投資家は、概して、良いコネのある裕福な個人だ。彼らは一般的に自分自身のお金を使用し、上記に説明したVCの制約のどれも持たない。役員会にも乗り込まないし、たくさんの資本金を注ぐ必要もない(実際、彼らは通常そうしたくない)し、極めてシンプルな条件を好み(彼らはリーガルサポートを持たないことが多いため)、アイディアの実験的特性を理解し、時には1回のミーティングで投資するかしないかを決めることができる。

その一方、エンジェルは大量の資本金を扱わないため、起業家は会社を築くことに資金供給をする他の誰かを見つける必要がある。さらに、大部分のエンジェルは、起業家が会社を築くのを手助けすることにたくさんの時間を費やすつもりはない。

最初の質問に答える前にもう一つ。

Series Seed ドキュメントの必要性に戻る前に、ベンチャーラウンドとエンジェルラウンドをベンチャーキャピタリストとエンジェル投資家と区別することが重要だ。ベンチャーキャピタリストがエンジェルラウンドに投資することやその逆は可能だ。時にこれは素晴らしいアイディアでもあるが、悲劇になることもある。最初にラウンドについて分析し、その後で投資家について分析しよう。

いつエンジェルラウンドを調達し、いつVCラウンドを調達すべきなのか?

この質問は、会社の進展具合に帰着する。もしあなたが“受け入れられるかどうか見てみよう”という期待を持って(もしそうならなかったら別のものを試そうという意味合いもある)製品を作っている小さなチームなら、あなたには役員会もたくさんのお金も必要ないため、エンジェルラウンドがベストの選択である可能性が高い。一方、あなたが自分の製品や製品アイディアに強い信念を育ててきて、市場を獲得するために時間との闘いをしているのなら、ベンチャーラウンドがより適している。あなたは、投資家からの真剣かつ大きな制約と共についてくる追加の資本金と追加のサポートから恩恵を得るだろう。

では、それぞれに投資する資格があるのは誰か?

明らかに、エンジェルはエンジェルラウンドに投資することができるが、VCはどうだろう?彼らを参加させるのは安全だろうか?その答えは、“彼らがエンジェルのように行動する時に限り”である。VCがエンジェルのように行動するとはどういう意味なのか?それは、彼らが以下のようでなければならないということだ:

  • 快く少額投資(例えば、50,000ドル)をする。
  • 素早く投資の決定をすることができる(例えば、1,2回のミーティング)。
  • 役員の席を取らずに投資できる。
  • 後続のファンディングラウンドのコントロールを要求しない。
  • 複雑な条件を負わさない。
  • VCがエンジェルラウンドに参加したいがエンジェルのように行動することを拒否する場合、起業家は用心する。エンジェルラウンドでVCのように行動するVCを持つことは、後続のファイナンシングを脅かす可能性がある。

エンジェルはベンチャーラウンドの優れた参加者になり得るが、一般的にはVCにそれらの契約をリードさせた方が良い。なぜなら、VCは会社を築くのに必要な財政的リソースやその他のリソースをより多く持っているからだ。

これは、アンドリーセン・ホロウィッツ(註:全米トップレベルの実績を残す筆者の投資会社)と私たちがしている投資の種類についてどんな意味があるのか?

先に述べたように、アンドリーセン・ホロウィッツでは、ベンチャーラウンドとエンジェルラウンドの両方に投資している。エンジェルラウンドに投資する時は、私たちはエンジェルのように行動する。エンジェル投資家として、私たちはわずかな50,000ドルを投資することができ、役員の席を取ることもなければ、支配を要求することもない。

質の高いアイディアを育てる手助けをしたいというこの願望に根差して、Seed Sourceのリーガルドキュメントに対する私たちの支持が、投資家と起業家の両方がリーガルドキュメントを綿密に調べるよりも成功する製品を築くことに焦点を合わせることを可能にするだろう。


この記事は、ben’s blogに掲載された「Angels vs. Venture Capitalists」を翻訳した内容です。

最近のスタートアップブームで活躍している投資会社は特に日本の場合、ネット企業大手だったりそれ自身が新興ベンチャーだったり、と既存の投資会社が余り目立たない印象がありましたが、この記事を読むに従来の構造から投資会社自身が生まれ変われていない現状もあるのでしょうか。

エンジェル投資家とVCについては、どちらが良いかはケースバイケースと思います位、成功するしないも運の要素が多分にあるとは思いますが、起業家である以上、最低限の学習はして、投資家依存にならない(支払されすぎない、仮にうまくいかなかった時でもピボットして再出発できる)環境だけは作っておきたいものです。 — SEO Japan [G+]

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