ソーシャルメディア時代のバイラルマーケティングとは?

「バイラルマーケティング」(いわゆる口コミマーケティング)と言えば2000年代前半にセス・ゴーディンの著書やHotmailの成功(無料メールの最後にHotmailのリンクを付けて無料PR&短期間で大量の利用者を実現)で大ブームになった現象ですが、ソーシャルメディア全盛の時代にその重要性はかつてない程、高くなっているのではないでしょうか。ブライアン・ソリスがソーシャルメディア時代におけるバイラルマーケティングを再定義します。必読。

2008年9月にニューヨークで開催されたウェブ2.0エキスポで、私は、多くの人々がその存在を信じて疑わない“バイラルマーケティングなるものが存在しない”と言い切った。

この宣言には、「バイラルなコンテンツを作って、解き放て」と言う命令を受ける側のマーケッター達から、多くの共感が寄せられた。事実、私は、このようなプロジェクトを求めるキャンペーンの立案者に向けて言ったのだった。

コンテンツは、どんなに素晴らしくても、どんなに創造性に溢れていても、どんなに奥深くても、もしくは、どんなに話題性があっても、最初からバイラルなものはない。しかし、私たちは何度も何度も永遠に絶えることのないリツイートを誘発するバイラルな動画、エントリ、その他のソーシャルオブジェクト、そして、すぐにファンやフォロワーを引き寄せ、耳をつんざくような口コミを呼び起こすページやプロフィールを作成するように求められるのだ。

アイテムをバイラル化させるのはコンテンツではない。人々のネットワークを結び付ける注目が集まる領域全体で、ソーシャルオブジェクトに力を与える源の大部分は、人間なのだ。

常識のように思えるが、独創的なアイデアが、当然得られると思っていたアクセス数、注目、そして、部数を集められない場合、私たちは必ずと言っていいほど、意外な結果だと言い放つ。

アテンション・エコノミーにおいては、情報はランダムに発見されるわけでも、幅広く広めてもらえるわけでもない。これがソーシャルメディアの現実だ。そのため、誰かが関連するキーワードを探した際に発見されるか、もしくは意図的に誰かに情報を見せるように戦略的に置く場所を選ぶ必要がある。

個人レベルでは、私たちは情報を発見するわけではなく、情報が私たちを見つけるのだ

ソーシャルオブジェクトにも同じことが言える。私たちは、それが動画であれ、テキストであれ、イメージであれ、バッジであれ、ウィジェットであれ、もしくは、アプリであれ、語りたいストーリー、そして、取ってもらいたいアクションで構成される“ソーシャルフック”付きのまとめられたコンテンツを作成しなければならない。バイラル・マーケティングなるものは存在しないが、クチコミ(WOMM)を始める気にさせるマーケティングは、思慮深く、計算されたアプローチと言えるだろう。そして、この戦略は、通常、ソーシャルメディアの内外でオプションが必要になる。

良いアイデアは共有する価値がある

タイムリーな変革を提示するアイデアを…

キャンペーンの中核には必ずアイデアが存在する。良いアイデアは共有する価値があると言っても、ソーシャルオブジェクトを“バイラル”化させたいなら、餌を与え、世話をする必要がある。原則的に、私たちは、コンテンツを作るだけでなく、私たちのストーリーをソーシャルグラフを定義する一等親血縁者(友達)、そして、友達の友達のリンクによって広がる二等親血縁者に広める手伝いをしてくれる個人のために、点と点を結び付ける必要がある。

ソーシャル・サイエンティストのダン・ザレラ氏は長年に渡り、アイデアが広がる理由を分析していた。ザレラ氏はリサーチを行った結果、オーガニックであろうが、積極的に宣伝されていたものであろうが、多くの人気のあるミーム(口コミ情報)に見られる広がりやすいコンテンツの共通の特徴を発見した。

種(シーディング)

アイデア/ソーシャルオブジェクトに最初に触れる個人の集団が、ミームの程度および範囲を決定する。これらの“種”は、既存のオーディエンス、例えば、ツイッターのフォロワー、フェイスブックのファン、ブログの購読者、メールリスト等と勘違いされることがよくある。アイデアの寿命およびオーディエンスを拡大する際は、アクティビティやレスポンスを活性化させることが出来る個人を慎重に選ぶか否かが、勝負の分かれ道となる。早い段階での関与、つまりリリースされる前の段階での交流が重要であり、これは、コンテンツを展開する上での彼らの役割でもある。

ノベルティ

伝染するアイデアには、独自性がなくてはならない。個人のつながりもまた必要だ。コンテンツ共有に対する個人のモチベーションは、そのコンテンツにさらされる人物とどの程度つながりがあるのか、もしくはその程度心に響くのかによって決まる。アイデアが早い段階で通じるのは、関連性があるか、もしくは、個人的な内容であるためだ。1対1モデルの共有に対するモチベーションの要素に挙げられるその他の伝染性の感情は以下の通りだ:

1. 個人的/関連性あり/タイムリー

2. ユーモア

3. 実用性

4. 関係の構築

5. 一般的な関心事

6. 見落とし

7. 会話

8. 相互依存

関連性と相互関係

ザレラ氏が述べているように、口コミの可能性を決定する重要な要素は、直観である。もし誰かがアイデアを理解することが出来なかったら、そのアイデアを捨て、次のアイデアに移ってしまうだろう。そして、リアルタイムウェブの時代では、私たちはあまりにも早く動くため、アイデアをさらに分析することも、理解しようとすることもままならない。そのため、アイデアの意図と目的を一目で分かるように明確に示さなければならない。正直に言うと、つながりに値する説得力のあるコンテンツを作るのは私たちの仕事である。閲覧している人と交流することが出来る時間は3秒から5秒だと言われており、その間に彼らは共有する(可能性もある)、もしくは単純に放棄するかを決めるのだ。

関連性

アテンション・エコノミーにおいては、私たちのフォーカスは注目と言う名のダッシュボードを通して流れるアイテムに集中し、本人の意思で集中するのをやめることができる高度なフィルタリングツールが徐々に開発されてきたが、個人によるフィルタリングは今でも行われている。注目するアイテムを選ぶことで、私たちは絶え間なくフォーカスを呼び込もうとする情報の量を調整する能力を身につける。関連性は、コンテンツを知り合いと共有するよう促す上でカギとなる。

個人ベース、そして、興味を共有する集団ベースで人々に訴えかけるコンテンツを作成する技術と仕組みを理解する必要がある。これがソーシャルメディアがソーシャルと言われる由縁だ。

人々は、情熱、興味、そして、大志を分かち合う人物と結び付く。ソーシャルオブジェクトを、交流し、刺激したいと願う人々のデモグラフィック(層)ではなく、サイコグラフィック(心理)に基づいて策定することが、個人的なつながり、要するに共有する価値のあるつながりを生み出すポテンシャルに大きく影響するのだ。

実用性

魚を一匹与えれば、彼はその日の食事に困らない。魚の釣り方を教えれば、彼は一生食事に困らない…

私たちが頻繁に目にして、耳にするコンテンツの例の大半は、短期的なエンターテイメントに狙いを絞っているが、役に立つコンテンツを作って、配信する作業はそれ自体に伝染性がある。答えを探すのを手伝ってもらいたい、質問させて欲しい、参加する理由を一緒に探して欲しい、意見を聞かせてもらいたい、そのソーシャルオブジェクトに出会わなければ出来なかったことを私が出来るようにしてもらいたい、等々。

実用性または問題解決をソーシャルオブジェクトに組み込むと言うアイデアは、コンテンツを共有してもらえる可能性を高め、また同時にその寿命を延ばす。有益なコンテンツを継続的に紹介することで、社会的交換理論に基づいた掛けがえのない関係の下地を作ることが出来るのだ – つながりを持った人々は、徐々に花開くタイプのソーシャルオブジェクトや会話によって生まれたアイデアを継続的に交換することで、お互いに成長していくのだ。

ソーシャルインフルエンス – カスケード効果

(註:カスケード効果とは、あることが次々と影響を及ぼしていくこと)

初期および繰り返しのシーディングは重要であり、仲間同士で与えあう影響が、知ってもらったり、重要度を分かってもらう際のベースを作り、仲間外れや仲間入りと言う感覚で私たちを囲む壁を作る。ソーシャルオブジェクトを、リーダー、トレンドセッター、オーソリティと呼ばれる人達に合わせることで、親近感、同一性、そして、関連性が好まれる雰囲気が作られる。そして、見て、共有することで“仲間に加わる”よう誘う環境が出来上がるのだ。

このようなインフルエンサーへの見返りは、トレンドの先頭を走っている点を認めてもらうことだ。この地位にいる人が後で話題に加わるケースは珍しい。通常、彼らは広まると新しいモノ好きとしての評判が高まるような未発見のアイテムを探している。

ソーシャルインフルエンスの領域においては、集団の知識の要素も重要である。集団がコンテンツとアイテムの周りを取り囲み、リアクションを起こすとき、無言で評価が行われる。これも魅力の一つである。結局、誰かが適切なフォロワーや読者の集団を抱えているなら、もしくはコンテンツの一部に集中的にアクセスが集まり、リアクションが起き、リツイートされ、共有され、好まれているなら、その人物は人気が高まり、その結果、信頼されるだろう。コミュニティはソーシャルオブジェクトを取り囲んで形成され、そうすることで、現在、そして、今後、参加者や見物人の行動に影響を与えるのだ。

そのため、ソーシャルオブジェクトは、注目、フォロワー、そして、インフルエンシャル・アクティビティを得るために、リリースの前およびリリース期間中に支持を受けていることが必須条件になる。

情報の喪失

真実もしくは情報が見えてこない場合、推測が噂を呼び、その結果、ムーブメントが発生する。そして、臆測を通じて質問に答えようとする人が加わるにつれ、最終的にモーメンタム(勢い)が生まれる。私はイベントまたはオブジェクトの導入を情報分割と呼んでいる。これは、情報がソーシャルウェブに紹介される瞬間と正確性を確認するまでに要する時間の違いを意味する。そこで、幾つか疑問が浮かび上がる。コンテンツまたはコンテキストはリアルタイムウェブでも重要なのだろうか?そして、口コミマーケティングにおいても重要なのだろうか?

情報が意図的に失われていると、もしくは推測を誘うために明確に位置付けられていると、ソーシャルオブジェクトは瞬く間に様々なネットワークに広がっていく。例えば、BMWが、1-シリーズを発売したとき、「The Ramp or Rampenfest」と名付けられたビデオドキュメンタリー(モキュメンタリー)を通して上述の戦略が行われた。この動画は、ある映画監督が小さな村を訪れ、1-シリーズのBMWで大西洋を超えると言う記録的な村の試みを映像に残したものだ。その際、BMWは意図的に好奇心を掻き立てていた。本当に大西洋を横断する試みだったのだろうか?BMWが裏で動きまわっていたのだろうか?新しい疑問が出てくるたびに、その結果として、視聴者が増え、多くの人々が共有するようになったのだ。

現在、Rampenfest.comを訪問すると、BMW 1-シリーズのホームページに飛ぶようになっている。

経験が行動を生む

ソーシャルオブジェクトは経験を生み出す。口コミの失敗と成功の分かれ道は、オブジェクトが起こすことになっている結果として生じるアクティビティに現れる。ソーシャルオブジェクトの最大の特徴は、原因と結果をもたらす“きっかけ”に変装する能力が関係しているだろう。

戦略的なマーケッターは、最初の閲覧と結果として生じる共有の後に何が起きるのかを計算する

彼らは意義深い一連の手順を策定し、このプロセスを分析し、完璧且つ方向付けされた経験を提供するコンテンツを作成する。

コンテンツは関心を促し、変革を誘う能力も持っている。それには、トピックに合う人々にピンポイントでアピールする必要がある。そして、彼らを説得するには、ソーシャルオブジェクトに、参加者の心と情を結び付ける個人的且つ感情に訴えるメッセージが含まれていなければならない。親近感は感情によってもたらされる。自分が信じている何かを誰かに支持してもらうエッセンスが必要になり、これが、使命を分かち合う他の人々の情熱に融合させるのだ。さらなる行動を呼びかけるようなコンテンツ等を介して意図が支持されると、意義深いつながりが構築され、複製されていくだろう。結局、人間のつながりを作ろうとしているのであり、このつながりはお金で買うことは出来ない。

この点こそが、目的を持ったソーシャルメディア・マーケティングであり、口コミマーケティングである。そして、私が実施してきたた交流の形の中で最も効果が高い。コンテンツが完全に個人的なレベルで人とつながり、明確に参加/共有を呼び掛けている場合、素晴らしいことが起きる。例えば、ペプシ・リフレッシュ・プロジェクトは、ペプシブランドとアイデア、そして、それを軌道に乗せる人々に対する感情と支持を高めながら、人々、アイデア、そして、情を結び付けることに成功した。

スポットライトを分かち合う

認識および相互依存を介した手法は、行動を起こしてもらえる確率が一番高い。

ムーブメントでは、アイデアを広げる力を持つ人々の言葉をピンポイントで用いる必要がある。彼らに対して、アイデアや意見を与えてくれたことを祝福してくれる既存のオーディエンスに語りかけることが可能なプラットフォームを提供することで、ブランドに、そして、同じように参加者に力および見返りが与えられるのだ。ソーシャルメディアを動かしているのは人間であり、ソーシャルメディアの未来は、私たちがコンテンツを楽しむだけでなく、コンテンツの意義と関連性にいかに投資することが出来るかにかかっている。

英国でノキアが最近実施した実験で、同社は世界最大の案内標識を組み立て、GPS機能をビジュアルで示し、宣伝を行った。この標識には、標識に直接情報を送った人々のロケーションが表示され、この標識のツイッターのアカウントを介して情報が共有されていた。ノキアはキャンペーンの中心に参加者を据えており、個人に特化した愉快な取り組みと言えるだろう。

共有は思いやりではなく、アイデアをさらに促進すること

アイデアは、共有するインセンティブがあるときに、共有する価値があると言える。しかし、インセンティブが見返りの中にいつもあるとは限らない。モチベーションはリアクションが原因で発生することもある – スマイルであったり、eメールであったり、顔文字であったりする。この共有によって、関係が絡み合うソーシャルコミュニティが明らかになる。そのため、ソーシャルオブジェクトは、宣伝プロセスを簡素化するために策定された共有メカニズムを統合すると最も効果的に作用するのだ。先日、アドトゥエニーはアイデアとコンテンツの共有および対応する会話が集中する傾向のあるネットワークを調査していた。

ソーシャルネットワークの中で、4億人のユーザーを抱えるフェイスブックはずば抜けて活発であり、eメールを2倍近く上回っている。また現時点では、フェイスブックを追走しているのはeメールだが、ツイッターが機会をうかがっている点にも注目しておきたい。

シンジケーション戦略を策定している点、そして、ワンクリックで共有する機能がある点を満たしていない場合、コンテンツを届けることが出来る範囲は、紹介する以前に限られていることになる。

この点において、ザレラ氏もまたフェイスブックとツイッターでの共有に関して、“動画”と言う言葉の効果を調査していた。同氏の見解は非常に興味深く、読み進めていくと、フェイスブックへの取り組みに集中したくなるだろう。

動画を含むストーリーは、平均的なストーリーよりも多くフェイスブックで共有されていた。一方、ツイッターでは、動画と言う言葉を含むつぶやきは、平均的なストーリーよりも共有されていなかった。ザレラ氏は、フェイスブックのプラットフォームは、共有を促す効果があると考えている。フェイスブックはマルチメディアをエンベッドすることが可能であり、一方のツイッターでは発リンクを掲載する必要があるためだ。

まとめ

先日、サーチエンジンランドに投稿されていたエントリで、ジョーダン・キャストラー氏が、共有する動機の7つのタイプを説明していた:

1. 自己表現

2. 共感

3. 検証

4. 性的

5. 業績

6. 奉仕

7. 利己的な興味

ソーシャルオブジェクトを“バイラル化”する方程式が数多く出回っているが、最も重要な点は以下の通りだ…

1. 関連性のあるコンテンツを作成する

2. 流行仕掛け人とインフルエンサーを特定すれば、適切なオーディエンスに声を届けやすくなる

3. キャンペーンを公式に導入する前に彼らをプロセスに関与させる– シーディング

4. 彼らが説得しようとしている人物の共感を得る – 感情面のつながりを作る

5. 知り合いとコンテンツを共有するよう促す

6. その見返りを与える

7. 交流後に閲覧者に取ってもらいたい行動を明示する

8. 自己表現が出来るようにフォーラムを提供する

9. 協力してくれた人すべてを評価する

10. 今後の交流のためにすべての関係者を一つにする

戦略、例、裏付けするデータを、バイラルマーケティングのレシピの材料と見なすと、その価値は薄れてしまう。そうなると、アイデアを広げる人々の役割の価値を軽視し、事実上、経験全体から人間性を奪ってしまうだろう。

ソーシャルオブジェクトを導入する際、オブジェクトに関する情報やアイデアのきっかけを作り出し、結び付け、定義する力量によって、値する注目を得ることが出来るか否か、または計画を通じて作り出したコラボレーションの関係を楽しむことが出来るか否かが決まる。

良き友人であるヒュー・マクラウド氏が語った、ソーシャルメディア・マーケティング、または、マーケティング全般にとって重要な3つのポイント は、シンプルでもあり、深くもある…

1. 贈り物を特定し、定期的にオーディエンスに与えること

2. 広告ではなく、本当の贈り物として受け取ってもらえる点を確認すること

3. プロセスの開始点に何があるのかを特定すること

私はバイラル・マーケティングと言われるものが存在するとは思っていない。しかし、関連するアイデアや情報が、誠実で事前に明示された意図を携え、適切な場所で適切な人々に届けられた際に発生するソーシャル化現象については、信じるに値すると思っている。


この記事は、Brian Solisに掲載された「Redefining Viral Marketing」を翻訳した内容です。

バイラルマーケティングに関する様々な意見を取り上げながらブライアン・ソリスが独自の視点でバイラルマーケティングについてまとめた良記事でした。と言いますかソリス自身はバイラルマーケティングと言う言葉は否定しており、あくまでソーシャルメディアで特定の条件下で起こりうる現象として捉えているようですが。

確かにマーケティングとして捉えすぎてしまうと、結果的に本質を見失い場合によってはポジティブPRのつもりがネガティブPRにも成りかねないかもしれませ。過去に数多くあったように。

またダン・ザレラ氏がバイラルコンテンツの特徴で挙げていた「情報の喪失」「スポットライトを分かち合う」「経験が行動を生む」は改めて解説されると、なるほど、と納得でるものですし、バイラルコンテンツを考えるヒントにもなりました。 — SEO Japan

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