エンタープライズSEOが失敗する理由

公開日:2012/04/23

最終更新日:2024/02/17

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エンタープライズSEOに関する記事を何度か配信してきたSEO Japan、実際の仕事でも大規模サイトに対するSEO導入や改善に関するご依頼をいただくことがありますが、作業範囲の広さから関わってくる部署や人の多さ、元々(あまりSEOを考慮しないで)決められている制作ルールまで苦戦することも多いです。今回はエンタープライズSEOを成功させるための秘訣をエンタープライズSEOが失敗する理由から考えようという記事をサーチエンジンランドから紹介します。 — SEO Japan

知名度が高いブランドであっても絶対に検索結果に表示されるわけではない。企業レベルの文化的な変更を介して、検索の進化を注意深く観察して情報を集めることで、持続可能なSEOの成功を収めることが出来るのだ。

ランキングに関して言えば、ブランドは確かに今でも強力なシグナルではあるが、「オーサーシップランク」やサーチ・プラス・ユア・ワールド等の進歩により、プロモーション戦略の焦点を大幅に絞る必要性が生じている。

自分は特権を持っていると過信し、多くの老舗ブランドが自己満足している。検索結果で数年に渡って良い成績を収め、その後、“これで検索はカバーした”モードに突入して、焦点、大事なリソース、そして、注目を別のイニシアチブに移す企業が多過ぎる。

そのため、インハウスのマーケッター/SEO/ストラテジストは、企業のエゴと官僚気質を退けて、変化するテクノロジー/編集の障害を評価しつつ、トラフィックをもたらす上で必要なシステムを守る必要があるのだ。

グーグルを見張るのは誰?

競合者がより優れたSEOを、早く行い、しかも自分のアセットが使われているなら、それは内部のSEOのプロセスが壊れている最初の兆候である。競合者が皆さんのアイデアまたはコンテンツ – 必ずしも盗用や同時配信を介してではなく、人気の高いストーリーをよりレベルの高い最適化を通してリライト、もしくは取り上げることで – 自分の会社よりも上に行かれてしまう状況ほど上司に早く注目してもらえるケースは他にはない。

シンプルな過ちによって – タイトルタグを誤る – 競合者に追い越されることもあるが、ベストプラクティスの実行、キーワードリサーチ、そして、XML サイトマップの統合に至るまで、コンテンツ作成プロセスが抱える大きな問題の存在を示唆している可能性もある。

SEOでは、全ての障害は編集に返ってくる。コンテンツの作成者(既に多くの仕事を抱えている)は会社の声を見つけ、拡大し、ブランドの編集における整合性を死守する役割を担っている。SEOの役目を別の部署が担当する時代はとっくに過ぎ去っている。

現在、コンテンツチームはオーディエンスを完全に理解している必要がある。事実、オーディエンスの獲得は彼らの役目である。要するに、コンテンツの作成者は通常のキーワードリサーチをトピックで実施して、検索および季節的な傾向を特定し、ニュースおよびユーザーの行動を観察し、そして、データをワークフロー、スタイルガイド、そして、プロセスに還元する必要があるのだ。

この情報の多くは既によく知られているはずだ。例えば、編集チームなら読者が「photo」よりも「picture」を検索フレーズとして利用している点を心得ているはずだ。しかし、他にも出来ることはあるはずだ。

だからと言って、SEOの専門家に参加する余地はないと言っているわけではない。SEOのアドバイザーは教育を行い、プロセスを導くことが出来る。しかし、キーワードリサーチが分散化されていないなら、比率の大きな問題が戦略におけるこの重要なステップを事実上葬ってしまう可能性がある。

コンテンツの作成者にデータを集める権利を認めることで、オーディエンスおよびユーザーがトピックを探し出し、触れあう仕組みに対する社内の全体的な理解度が上がる。容易に手に入れられる業界のデータを活用し、デジタルなアセットを最適化するために利用する取り組みは、コアの役割として、機能を追加するよりも遥かに効果的である。

教育は経済的な成功の基礎

検索の自覚は、継続的な専門のトレーニングおよび教育スケジュールによって高められ、そして、維持されると最も高まる。編集チームは出入りが激しく、デザインチームは通常はイノベーションと隣り合わせであり、そして、テクノロジーはサイトを改善し、スピードアップさせ、そして、強化する。しかし、全ての部門が、会社が採用を望むミクロおよびマクロの検索戦略を定期的にアップデートする必要がある。

組織として、四半期ごと、あるいは一ヶ月ごとの必須のトレーニングセッション、または日常的なSEO会議を行い、最新の情報を手に入れることが出来る。このようなセッションを行うことで、業界の変化(話題に事欠かない)、そして、戦術的な対応について話し合う機会が生まれる。

これはインハウスSEO担当者の仕事である。検索が常に重要な理由を同僚に“思い出して”もらわなければ、SEO – そして、哀れな検索ディレクターも – は忘れられてしまうだろう。

マンスリー検索ランキングレポート、リアルタイムでうまくいった試みと失敗した試みの例を紹介するデイリー、そして、ウィークリーのeメールの他にも最適化を担当する人達を前面に押し出す手はある。

優れたSEOはプロセスを分散化するものの、上層部、もしくはテクノロジーまたはマーケティング部門で抱えておく必要がある。プロジェクトを先導して、最新の変化を把握し、そして、巨大なキーワードリサーチプロジェクトに従事するチームを支援するためだ。SEOディレクターを関係者のミーティングに呼び、また、デザインおよびテクノロジー部門のローンチサイクルのeメールリストに登録しておく必要がある。

私はSEOを組織化する方針 – 組織における役割および任務に関連するため、*すべてのスタッフ*を教育して、SEOの責任を担ってもらう -を推進しているが、SEOのプロセスを官僚化させる必要はない。

SEOは選択肢の1つではない、必須なのだ。この状況を理解し、DNAに刷り込んでいる企業は、日曜の朝に上司からiPadで検索していたときの状況を説明するeメールが届くような企業である。

組織が大きくなると、手順への注目および規律の重要性はさらに増す。重要なステップを身落とさないためだ。適切に行っているなら、コンテンツを動かしても問題はない。301またはrel=canonicalの利用は簡単だと考えられているが、手順を誤り、セクション全体が消えてしまうことがよくある。

チェックリストと教育を通して、参加し、品質保証のメソッドにアドバイスを送る取り組みこそが、今後のミスを防ぐ上で、最高の保険と言えるだろう。

SEO vs その他の従業員

ベストプラクティスに反し、SEOよりも他の取り組みを優先する決定が行われことがある。これは自然な流れであり、必ずしも悪いことではない。しかし、このような決定は、結果を完全に理解した上で下されることが前提である。

デザイナーが新しいフォトギャラリーでユーザーエクスペリエンスを考慮して、HTMLの代わりにフラッシュを選ぶ。テクノロジー部門はHTML5の代わりにAJAXを選ぶ。関係者全員が検索ランキングへの影響を理解しているならそれで問題ない。

ホームページのビジターに注目してもらえそうではあるが、ターゲットのキーワードフレーズが欠けたヘッドラインをエディターが要求している。検索の機会を逃すことになる点を理解しているならそれで結構だ。ハッキリさせておこう。SEOによって、編集の整合性を犠牲にするべきではない。コンテンツが最も重要であり、SEOはその次である。

ここでトップからボトムまでのSEOの組織化が重要になる。

強力なSEOの文化の下では、提案を受けた後、上層部またはプロジェクトマネージャーから口から出るのは、「いいね。でも、どんな影響がランキングに出るんだ?」と言う質問である。

リソースが全て割り当てられ、SEOへ注目するのが重荷になってしまう後の段階でプロジェクトを変更するのではなく、全てのレベルで検索の手順を作成しておいた方が無難だ。

予算 & リソースを巡る戦い

ビジネスサイクルを続けていくと、自然にSEOへの注目が薄まっていく。例えば、ソーシャルネットワークでのアクティビティは、検索のエキスパート & トラフィックにおいては残念だが、SEOからリソース、予算、そして、注目を吸い上げている。勘違いしないでもらいたい。検索は今でも最も価値の高いトラフィックである。

同僚のブライアン・プロヴォストが「エンタープライズSEOの最強ガイド: これだけは知っておきたい25のポイント」(日本語)で指摘していたように、鍵を握っているのはお金である。SEOは資金なしでは実施することは出来ない。自力で何とかすることが出来るかもしれないが、それでもプロセスにはSEO専用の恒久的な予算が必要である。

適度に資金を投じると分析の質が改善され、顧客の望み/ニーズおよび行動をより明確に理解することが出来るようになる。データは貴重だが、計測していないなら存在しないのと同じである。

ささいなこと: 実行 = SEOは効果を上げる

最新のベストプラクティスを把握する取り組み – 永遠に終わらない“いたちごっこ”のように思える – には多くの労力と注目を割く必要があるが、戦略的に実施する必要がある。SEOが全てのグーグルのプレスリリースをテクノロジー部門と編集チームに届けていたら、すぐに無視され、また、反感をもたれる可能性すらある。

しかし、ささいなこと – 全てのリリース、新しいアングル、そして、テクノロジーのオプション – を重荷ではなく、チャンスとして実施するハングリーなサイトこそが、最大のROIを手に入れることが出来るのだ。

新しい発見、タイミング、そして、新しい戦略を企業に説明する方法の重要性のレベルを評価するのは私達の仕事である。実行および計測可能なアーリーアダプターを活用した手っ取り早く簡単に勝利を得る方式が、心をつかむ上で最も効果が高いことを私は発見した。その際は創造力が必要になる。

昨年の春、パワーマッパーが、ページタイトルの長さへの変更についてレポートしていた。70文字前後が最高のようだ。通常、これは大した情報ではないが、5文字を加えることで、ブランドがSERPに掲載されるかされないかが変わってくるため…間違いなく考慮する価値はある。

もう1つ例を紹介する: rel=authorは、実装するのは面倒であり、スケールしない(グーグル+のプロフィールを作る上で、30人以上のエディターに説明しなければいけない人もいるだろう)。それでも、やはり実施する価値はある。

CTRが確実に増加している点を示すレポートが増え始めているのだ。

 

rel=author Joost de Valk

グーグルのゴールポストを頻繁に動かす方針は、プラスに働く。

大半の場合は – 検索製品を改善する、アセットを活用するチャンスが新たに生まれる、公平な競争の場を作り出す、常に興味深い業界にする(私達の仕事を守ってくる点は言うまでもない) – 多くの利益を生む。しかし、サーチ・プラス・ユア・ワールドで最適化を行う方法を解明する取り組み等、もっと複雑な問題も存在する。繰り返すが、これも興味深さを深めてくれる。

URLやブランドに関わらず、同じルールが適用される。ここ数年間では、多くの肝の据わったサイトが、全ての新しい機会(日本語)を活用するために、いち早く順応 & 採用し、専用のリソースを用意している。その一方で、過去の実績を過信して、大きく、遅い組織が優位な立場を失っているケースが目立つ。

上層部の支持および擁護を通して、SEOの取り組み、そして、すぐに取り組みを実施するためのテクノロジーのリソースを維持し、さらには頻繁なアップデートとトレーニングを行うことで、巨大な企業でさえも、ランキングとトラフィックを守る効果が見込めるのだ。

ネットワーク全体で素早く行動することが可能な企業には、コンテンツを掲載してもらえるだけでなく、良い状態を継続する最大のチャンスが訪れるだろう。

この記事の中で述べられている意見はゲストライターの意見であり、必ずしもサーチ・エンジン・ランドを代表しているわけではない。


この記事は、Search Engine Landに掲載された「Why So Many Companies Fail At Enterprise SEO」を翻訳した内容です。

単なるSEOの導入だけではなく、日常的な取り組みも含めた予想以上に高いレベルの話をしている内容でしたが、エンタープライズSEOの導入に努力している人であれば納得できることが多い記事だったのではないかと思います。SEO DNAのレベルが「日曜の朝に上司からiPadで検索していたときの状況を説明するeメールが届く」ことがどうかは分かりませんが。。。過去にそういう経験が何度かありましたが、大体見当違いまたは「たまたま検索してみた」上司が「自分の意図したキーワードで自社が上位に表示されていなかった(または毛嫌いするライバル企業が上位にいた)」ケースが大半だったような?

それはさておき、色々書かれた記事ですが結論は最後に「上層部の支持および擁護を通して、SEOの取り組み、そして、すぐに取り組みを実施するためのテクノロジーのリソースを維持し、さらには頻繁なアップデートとトレーニングを行うことで、巨大な企業でさえも、ランキングとトラフィックを守る効果が見込めるのだ。」と簡潔にまとめてくれました。自分一人がわかっていれば大半のことはすんでしまう中小サイトのSEOとはまた次元が違う能力が求められるエンタープライズSEO、結果的にか導入や活用事例もまだまだ限定的とは思いますし、数年後にはどこまで普及しているのか気になります。 — SEO Japan

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アイオイクス SEO Japan編集部

2002年設立から、20年以上に渡りSEOサービスを展開。支援会社は延べ2,000社を超える。SEO/CRO(コンバージョン最適化)を強みとするWebコンサルティング会社。日本初のSEO情報サイトであるSEO Japanを通じて、日本におけるSEOの普及に大きく貢献。

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