CEOがマスターすべき最も難しいスキル

テクノロジー分野で米国No.1のVCとも呼ばれるアンドリーセン・ホロウィッツの共同創設者が語る、CEO/経営者にとって最も重要なスキルについてのお話を。自らも元々シリコンバレーで大成功した起業家だけに自らの経験に基づいたその内容は巷によくあるビジネス本とは違うリアリティと魅力に溢れています。 — SEO Japan

It’s f@#ked up when your mind’s playin’ tricks on ya
—The Geto Boys, Mind Playing Tricks on Me

私にとってCEOとして習得するべき圧倒的に最も難しいスキルは自分自身の心を操る能力だった。組織設計、プロセス設計、メトリクス、雇用、解雇は全て、自分の心を抑制することと比べると比較的習得するのが容易なスキルだった。長年にわたって、私は同じ経験を持つ数百人ものCEOと話をしてきた。それでもなお、それについて話す人はほとんどいないし、私はそのトピックに関するものを読んだことが一度もない。それは、マネージメントのファイトクラブのようだ:CEOの心理崩壊の最初のルールは、「心理崩壊について話すな」なのである。

聖なるルールに反するというリスクのもと、私は、この症状を説明して、自分を助けてくれたいくつかのテクニックを処方することを試みるつもりだ。結局、これはどんなCEOでも直面する最も個人的で重要な戦いなのである。

うまくやっているのなら、なぜこんなに気分が悪いのか?

一般的に、高い目的を持ち、自分のする仕事に深く思いを寄せる人でない限り、CEOにはならない。加えて、CEOは人々がこの人のために働きたいと思うほどに、熟達しているか、賢くなければならない。機能不全の組織を運営したり、ひどい官僚制度を作って会社をいきなり休止する悪いCEOになろうと思う人などいない。しかし、優れた会社への平坦な道のりを約束されたCEOもいない。途中で多くのことが悪い方向に進み、それらの全ては避けられるはずの、避けるべきことだったのだ。

最初の問題は、誰もがCEOになることでCEOになることを学ぶということだ。マネージャーとして、ジェネラルマネージャーとして、その他の役職としての訓練が、あなたに会社を経営するための準備をさせることはない。あなたが会社を経営するための準備をする唯一のことは、会社を経営するということだ。これはつまり、あなたは、自分が持っていないスキルが必要とされ、自分がやり方を知らない幅広いことに直面することを意味する。それでもなお、みんなは、あなたがCEOであるという理由から、あなたがそれらをする方法を知っていることを期待する。私は、自分が初めてCEOになった時に、投資家が私に“cap table”を送るように言ったのを覚えている。私は、彼が意味することのあやふやな知識を持っていたが、実際には、そのフォーマットがどういう外観でなければならず何を含んで何を省くべきなのか分かっていなかった。それはほんの小さなことで、私にはもっと大きな心配事があったのだが、自分がしていることが実際に分かっていない時に全てのことは難しく、私はその馬鹿げたスプレッドシートに汗水たらす時間をかなり無駄に費やしたのだった。

たとえあなたが自分がしていることを分かっていても、物事は悪い方向に進む。物事が悪い方向に進むのは、活力に満ちた競争の激しい市場で戦って勝つために多面的な人間の組織を作ることは、とても困難だからだ。もしCEOが相対評価をつけられたら、テストの平均は100点中22点になるだろう。この種の平均は、オールAの生徒にとっては心理的に困難になることがある。誰もあなたに平均が22点だとは教えてくれないため、それはとりわけ困難なのだ。

もしもあなたが10人のチームを管理するなら、間違いや悪い行動はほとんどなくすることはかなり可能である。もしあなたが1000人の組織を管理するなら、それはかなり不可能である。あるサイズでは、あなたの会社は、あなたがその種の無能力さと結びついているとは想像もしなかったほど悪いことをすることになる。お金を浪費したり、お互いの時間を無駄にしたり、ずさんな仕事をする人々を見ることがあなたの気分を悪くする。もしあなたがCEOなら、それはあなたを病気にするかもしれない。

そして、傷口に塩をすり込んで物事をもっと悪くするのは、あなたのせいである。

非難する相手はいない

You can’t blame Jazz Musicians
or David Stern with his NBA fashion issues
—Nas, Hip Hop is Dead

私の会社にいる人たちが、例えばレポートプロセスの費用などあれこれ文句を言う時、私はそれは自分のせいだとジョークを言う。そのジョークは面白い、なぜなら、それは本当はジョークではないからだ。会社の中の全ての問題は、確かに私が悪かったのだ。創設CEOとして、会社がした全ての雇用と全ての決断は、私の監督のもとに起こったことだ。突然姿を現して以前の管理体制の問題を全て非難する臨時雇用者とは違って、私にとって非難する人は文字通り誰もいなかったのだ。

もし誰かが間違った理由で昇進したなら、それは私の失敗だ。もし私たちが四半期利益目標をミスしたなら、それは私の失敗だ。もし優れたエンジニアが辞めたなら、それは私の失敗だ。もしセールスチームが生産組織に無理難題を言ったなら、それは私の失敗だ。もし製品にあまりに多くのバグがあったなら、それは私の失敗だ。ある意味私はかわいそうな奴だ。

全てのことに責任を負って、テストで22点を獲得することが、あなたの意識に重くのしかかり始める。

壊れた考え方

このストレスのおかげで、CEOは以下の2つの過ちのうちの1つを犯すことがよくある:

  1. 物事を個人的にとらえ過ぎる
  2. 物事を全く個人的にとらえない

最初のシナリオの場合、CEOは全ての問題をものすごく真剣に、個人的で、切羽詰まったものとしてとらえる。問題の量を考えると、この動きは通常2つのシナリオのうちの1つの結果をもたらす。もしもCEOが外側に焦点を合わせていれば、その会社でもはや働きたいと誰も思わないところまでチームを恐れさせることになる。もしもCEOが内側に焦点を合わせていれば、その人自身が、どうにもならない全ての問題から気分が悪くなることになる。

2つ目のシナリオの場合、繰り返す惨事の痛みを抑えるために、CEOはひどく楽観的な態度をとる:それはそんなに悪いことではない。この視点において、実際に悪い問題はなく、彼らは緊急に取り組む必要はないのだ。この問題を正当化することによって、CEOは自分の気分は良くなる。問題は、彼女が実際には何の問題も解決していないこと、そして従業員が次第に最高責任者が最も基本的な問題と対立を無視し続けていることに不満を持つことだ。最終的に、会社はくずへと変化する。

理想では、CEOは緊迫しているが常軌を逸していない。CEOは、感情的に悪いと感じることなく積極的かつ断固たる態度で動く。もし彼女が問題の重要性から自分がどう感じるかを分けることができたら、従業員や自分自身を悪者扱いすることを避けるだろう。

孤独な仕事

And this loneliness won’t leave me alone
—Otis Redding, (Sittin’ On) The Dock of the Bay

CEOとして最も暗い時代に、従業員と一緒に自分の会社の生存能力についての基本的な疑問について議論することは、明らかにネガティブな結論を招くことがある。その一方で、あなたの理事会と外部のアドバイザーに話すことは成果がないことがある。あなたと彼らの知識のギャップはとても広くて、あなたは、決断に役立つという意味では、彼らに事情を完全に説明することができない。あなたは1人なのだ。

私の以前の会社Loudcloudでは、ドットコムバブルが崩壊して、それに続いて私たちの顧客の大部分が破産に追い込まれた時、私たちのビジネスは機能しなくなり、バランスシートは打撃を受けた。むしろ、それは1つの解釈だった。他の解釈および会社にとっての表向きの話は、私たちはまだ銀行にたくさんお金を持っていて、目覚ましい比率で従来の法人顧客を登録しているというものだった。どちらの解釈がより真実に近かったのか?話をする人がいない場合、私はその質問を自分に3000回位尋ねた。余談だが、何かを3000回自分に尋ねることは、悪い考えであることが分かっている。この場合、私には2つの具体的な難しい疑問があった:

  1. もしも表向きの解釈が間違っていたら?私が投資から従業員までみんなを間違った方向に導いていたとしたら?その場合、私は自分のポジションから直ちに退くべきだ。
  2. もしも表向きの解釈が正しかったら?私が自分の頭を理由もなしにおがくずにすりつぶしていたとしたら?私が自分自身の方向性に疑問を持つことによって会社を軌道から外していたとしたら?その場合、私は自分のポジションから直ちに退くべきだ。

よくあることだが、どちらの解釈が正しいかはずっと後になるまでは知る方法はないのだ。それは、実際にはどちらも正しくなかったことが分かった。新しい顧客は私たちを救ってくれず、私たちは生き残って最終的に成功するための他の方法を見つけたのだ。正しい結果に行き着くためのキーは、楽観的もしくは暗い物語のどちらかと結婚することを避けることだった。

私の友人Jason Rosenthalは、約1年前にNingのCEOを引き継いだ。彼がCEOになってすぐ、彼は財政難に直面し、次の3つの難しい選択肢の中から選ばなければならなかった。1.会社の規模を根本的に縮小する。2.会社を売却する。3.希薄化によって資金調達をする。

これら3つの選択肢について考えてみる:

  1. 一生懸命に採用した才能のある従業員を数多く解雇し、その結果、残った人々のやる気にひどくダメージを与える可能性がある。
  2. 従業員に使命を果たすチャンスを与えることをせずに会社を売却することによって、過去数年間一緒に並んで仕事をしてきた(Jasonはこのポジションに昇進した)従業員全てを売る。
  3. 従業員の所有権を劇的に減らし、彼らに経済的に無意味に働かせる。

これらの選択は女性を女の子と区別する。起業家を目指すためのアドバイス:もしあなたが最悪と激変から選択をしたくないなら、CEOにはなるな。Jasonはこの業界の優秀な人からのアドバイスを求めたが、最終的に彼は、最後の決断においては完全に孤独だった。誰も答えを持っていなかったし、答えが何であるにしろ、結果を受け入れなければならなかったのはJasonだったのだ。これまでのところ、一番最近の雇用を優先的に手放すことによってスタッフを減らすという彼の決断が効果を生んできた。Ningの収益は上昇し、チームのやる気は高い。もしそれが悪い方に進んでいたら、それは全てJasonのせいだし、新しい答えを見つけるのはJason次第なのだ。私がJasonに会うといつも、私はこう言う:“ショーへようこそ”。

上のような時には、ほぼ全ての会社が生きるか死ぬかの時を経験すると言うことを理解することが大切だ。私のパートナーのScott Weissは、それの頭字語があるのは普通のことだと言った。WFIOはWe’re F#%ked, It’s Over (私たちは失敗した、もう終わりだ)と言う意味だ。彼がそれを説明しているように、全ての会社が少なくとも2つから最大5つのこれらのエピソードを経験する(しかしながら、私はOpswareでは少なくとも1ダースは経験したと確信している)。全てのケースにおいて、WFIOは、特にCEOにとっては、実際よりもずっと最悪に感じる。

テクニックが神経を静める

心理の問題は、全ての人がわずかに違っている。それを留意しつつ、私は長年かけて、自分自身を対処するテクニックをいくつか開発した。あなたにも役に立つことを期待する。

何人か友達を作る—あなたがする難しい決断に対して質の高いアドバイスを得ることは不可能に近いが、似たような困難な決断を経験してきた人たちと話すのは心理学的観点からとても役に立つ。私の友人のBill Campbellは、CEOである私の大きな助けだったが、面白いことに、私が最も役に立つと思ったことは彼のIntuitの経営の成功ではなかった。それは、彼がGoを経営している時の悲惨な経験だったのだ。その経験とIntuitでの最もトラウマ的な日々(会社の3分の1の解雇など)を通して、Billは心理学的観点から耐え難いほどに難しい決断について考える方法についてたくさんのことを学んだのだ。

考えることをやめて、文字にする—上場企業として、私たちの顧客全てと利益全てを売ってビジネスを変えるのが一番だと私が考えていることをBillと残りの理事会に説明しなければならなかった時、私の心は乱れていた。その決断をまとめるために、私は自分の理論の詳しい説明を書き出した。そのドキュメントを書くというプロセスが、私自身の心を離れさせ、決断を素早くすることを可能にした。

壁ではなく道に焦点を合わせる—レーシングカーのドライバーを訓練する時の最初のレッスンの1つは、200MPHでカーブを曲がる時に壁に焦点を合わせるのではなく、道に焦点を合わせるということだ。もし壁に焦点を合わせれば、あなたはそれに向かって運転する。もし道に焦点を合わせれば、あなたは道に沿って運転する。会社を経営することをそれと同じようなものだ。悪い方向に進んで船が沈むことは常にたくさんある。もしあなたがそれらのことに焦点を合わせすぎると、あなたは気が変になって、自分の会社を転覆させる可能性が高い。自分が避けたいことよりも自分が進んでいる方向に焦点を合わせるのだ。

最後のアドバイスー怖気づくな、止めるな

CEOとして、止めたいような気持になるときは何回もあるだろう。私は、CEOが、深酒をしたり、立ち去ったり、さらには止めたりすることで、ストレスに耐えるのを見てきた。どの場合においても、CEOは、怖気づいたり止めることがなぜ彼にとってOKなのかという素晴らしい正当化を持っているが、その中の誰も優れたCEOになることはない。優れたCEOは痛みに直面する。彼らは、眠れない夜や冷や汗や私の友人Alfred Chuang(BEA Systemsの伝説の創設者でありCEO)が“拷問”と呼ぶものを相手にする。私が成功しているCEOに会う時はいつでも、私はどうやって彼らがそれをしたのかを尋ねる。二流のCEOは、自分たちの素晴らしい戦略的な動きや、自分たちの直感的なビジネスセンスや、他に様々な自画自賛的な説明を指摘する。優れたCEOは、回答が見事に一貫している傾向がある。彼はいつもこう言うのだ:“私は止めなかった。”


この記事は、ben’s blogに掲載された「What’s The Most Difficult CEO Skill? Managing Your Own Psychology」を翻訳した内容です。

相変わらず重みのある話ですね。。。その辺の経営者本1冊読む以上に参考になった記事でした。途中に出てきた「物事を個人的にとらえ過ぎる」こと、そして「物事を全く個人的にとらえない」ことの話は、私も零細企業の経営者ながらピンと来るものがありました。私の会社のような社員数100人未満の個人会社だから個人的に物事をとらえればよい、筆者がかつて経営していた従業員何千人の上場企業だから個人的にとらえなくてよい、という単純は話ではないんですよね。そのバランスの落とし込みは規模は違えど、CEOとしてのチャレンジなのでしょう。

とはいえ、どれだけ苦しくとも決して止めることはなかった、という最後の一言を読むと、CEOって普通と違う一種マゾに近い超アグレッシブなハンター的な質が求められるんだな、と感じてしまいますが多分筆者がいう優れたCEOは、巨大企業の経営者が中心なのでしょうし、私自身は筆者の記事に学べることは学びつつ、もう少しマイペースで進みたいと思います。 — SEO Japan [G+]

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